フェス好きに大好評のフリーペーパー「Festival Echo ’15(フェス・エコ)」と富士祭電子瓦版のコラボ企画vol.2。フェスエコに掲載された星野源さんのインタビューを瓦版でも公開! 復帰後初となる<フジロック>への想いを語ってくれた。

今を楽しもう。
震災で変化した心のベクトル

ソロシンガーとしての初<フジロック>が2006年。着実にソロシンガーとしての歩みを進め、人気を獲得してきた。2012年のフィールドオブヘブンから3年。長い休養から復帰して初となる<フジロック>。星野源は新たな地平を歩みはじめているのかもしれない。

Interview:星野源

苗場食堂からの道程

星野さんにとっての初<フジロック>は?

星野源(以下、星野) ソロとしては雨の苗場食堂だったんですよ。確か2006年。SAKEROCKではルーキーからスタートして、苗場食堂、ホワイトステージと繋がっていきました。ソロとSAKEROCKと、記憶がゴチャゴチャになっていますが、振り返ると感慨深いですね。

初出演したルーキー・ア・ゴーゴーに出演した際の思い出を教えてください。

星野 ライブ直前に、すごくお腹が痛くなって。トイレに行きたかったんですけど、トイレがすごく混んでいる。裏の林に分け入って、野グソをしたんですよ。真っ暗闇の林のなかでウンコをして。結果的には気持ちよく、ライブをすることができました(笑)。

<フジロック>で演奏するというのは、どういう感覚なのですか。

星野 とにかく気持ちいいですよ。ステージにいて、お客さんが音楽そのものを楽しむために来ているっていう感覚を受け取ることができるんです。いわゆる普通のライブだったりすると、見定めるみたいな……どんなもんだろうというような、ある種の眺めるような感じもなくはないんですけど、楽しむためにひとつになるというイメージがあるんですね。<フジロック>では楽しかった記憶しかないんです。雨でも楽しいですし(笑)。

出演しているミュージシャンの方に、「雨でも楽しい」と言ってもらえると非常にありがたいですね。

星野 お客さんとしては、もちろん大変でしょうけどね。それを超える楽しさ、魅力があるんですよ。

楽しむことをメッセージに

ソロで歌いはじめたきっかけを教えてください。

星野 SAKEROCKの前から、ひとりで歌っていたんです、実は。恥ずかしいっていう思いがずっとあって、バンドも自分で歌うのではなくインストを選択しました。作品も作っていて、カセットとかMDに作った曲を入れて、興味を持ってくれた人にあげたりしていたんです。

恥ずかしいというのは、自信がなかったということですか。

星野 素で人前に出るということが恥ずかしくて。歌って、自分の気持ちやメッセージを込めているので。歌が好きだっていうこともあるし、好きだからこそ人に何かを言われるのが怖かったし。2005年に自主制作盤を作って、それの評判がすごくよくて、ちょっとずつ自信が付いていったんです。

ソロとして歌うこと、そしてソロを続けることによっての変化を、どう感じていらっしゃいますか。

星野 SAKEROCKでやっている手法や自分でやってきたやり方みたいなものを、全部封印しようと思ったんですね。SAKEROCKに頼らないで、ひとりでやれることを試したかった。自分にできる素直な音作りを目指して最初はやっていました。ミニマムというか、アコースティックな音で詞を工夫するとか。もともと根が暗めな部分もあるので、それを素直に作ったのがファーストアルバム『ばかのうた』。震災のショックで、どうしても暗くならざるを得なかったセカンドアルバム『エピソード』。震災から時間が経過して、もっと明るいものを作りたいという気持ちが強くなって、僕がもともと大好きだったポップスに近づけるような意識で作ったサードアルバム『stranger』。自分の趣味というか、自分がやれることというより、自分が好きなものを実現する方向に、今は変わってきていますね。

そんな変化が、5月リリースのシングル“SUN”にも現れていますか?

星野 とにかく明るくてちょっと踊れる。去年リリースした“桜の森”は、ダンスクラシックを自分なりにやってみるというのがテーマだったんですけど、それをよりポップに近づける、ポップスとして鳴らすというような目標を持って作ったのが“SUN”なんです。

曲を制作するというのは、新しいチャレンジをしているという感覚なのですか。

星野 チャレンジをすることが楽しいですよね。ひとつのことを終えると、次のアイデアがポンと浮かぶ。それって、やっていないことが含まれていることが多いんです。初期衝動は、その都度生まれるほうがいいですから。

星野さんにとって、ライブとはどういう存在なのでしょうか。

星野 瞬発力を試す場ですね。レコーディングは積み重ねの作業。ライブは一回しかないその瞬間を楽しむ作業。楽しむためにはアドリブ力も試される。実はレコーディングのほうが好きで、ライブは……苦手な部分もちょっとあるんです。

ライブが苦手とは、まったく感じられませんでした。

星野 音楽を構築していく作業が好きなんです。でも年齢を重ねるにつれて、ライブと夏が好きになってきているんですよ。外に出る気持ちが大きくなっています。病気の長期休暇の影響もあるんですが、外で遊びたいという気持ちが強くなっています。

病気になって、意識の持ちようは変わったのですか。

星野 “SUN”の歌詞にも入っているんですけど、いつ死ぬかわからないのだから、今を楽しもうというのが実感として根付いたというか、心から思えるようになりました。近くで亡くなっていく人を見たり、自分が死にそうになったという経験を経たことによって、もっと楽しまなきゃ、と。どちらかというと、破滅型だったんですよ(笑)。何かに集中することで自分を袋小路に追い込んでいく。「死にたい」なんてまったく思わなくなったし、「死にたい」と口にすることがダサイことなんだと思うようになりましたね。つまらないことを考えて落ち込むより、楽しんだほうがいい。そういう性格に変わっていきました。

その気持ちが、楽曲にも込められているし、ライブにも表れると思います。最後に今年の<フジロック>では、どんなことをしたいですか。

星野 星野 ライブを楽しくやれたらいいなって思っています。あとは開放的になっている女の子と仲良くなりたいですね。ナンパとか絶対にできないんだけど、してみたいですよ(笑)。

星野さんにナンパは似合わないですよ。

星野 僕のハンデとして、お酒が飲めないことがあるんですよね。「アゲぽよ」みたいになれない(笑)。とにかく、<フジロック>を楽しみたいと思っています。

Text by Sakana Sorano
festival-eco 星野源、復帰後初のフジロック【FESTIVAL ECHO ’15 × 瓦版特集 VOL.2】

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Profile:星野源

2000年にインストバンドSAKEROCKを結成。<フジロック>には2004年にルーキー・ア・ゴーゴーに出演。ソロとしては2006年に苗場食堂で初登場を果たした。2010年にファーストアルバム『ばかのうた』を発表。今年5月にリリースされる最新シングル“SUN”はテレビドラマ『心がポキッとね』の主題歌。6月にはSAKEROCKの解散ライブ、8月には武道館での弾き語りワンマンライブと重要なライブが続く。
詳しくはこちらhttp://www.hoshinogen.com/

hoshino-sun 星野源、復帰後初のフジロック【FESTIVAL ECHO ’15 × 瓦版特集 VOL.2】

『SUN』

「自分の音楽原体験であるブラックミュージック、それをポップスと組み合わせるという遊びの追求」(星野)をして生まれたのが表題曲の“SUN”。他、新曲ばかりを収録した4曲入りのシングル盤。野外フェスにもマッチする、明るく楽しい歌が響いてくる。