○事件その4 <ベルセバを断念、ドラゴン水浸し事件>

駆け寄ると、そこには大きく口をあけて泣いている全身水浸しの我が子がいた。あいた口の中には土と葉っぱが見え、よく見ると少し血が滲んでいるではないか! 「ヌレチャッタヨゥ〜、ウエエエエエン!」と泣きじゃくるドラゴンの話を根気強く聞いたところ、足下にあった大きな水たまりに全身からダイブしたようだった。夜になってより見難くなったタープやテントのロープに足をひっかけてしまったのだろう。

泥だらけで号泣する息子を抱えてなだめながら怪我チェックをすると、口内の切り傷以外の怪我はなく、ほっと胸をなで下ろして着替えさせて一丁上がり。ビッショリと泥水に濡れた子供服を手に、ああ、これが子連れキャンプというものかとしみじみ感じ入った。時計をみると、ベルセバの開始時刻はとうに過ぎていて、あと30分でライブ終了時間だった。シャトルバス乗り場まで10分、バスに乗って10分…きっと間に合わないし、ドラゴンは泣き疲れてヘロヘロだ。

ここで母の集中力は遂に途切れ、ベルセバを諦めた。多幸感に満ち溢れているであろうRAINBOWステージへの思いを断ち切り、冷えたドラゴンに暖を取らせるため、焚き火の準備に取りかかった。

燃え盛る火を掴もうと何度もトライして火は掴めないものと知ったり、薪が燃えて出る目にしみる煙やそれを運ぶ風を感じることは、生きていく上で大切なことだと思う。一度熱さを感じたドラゴンはそれ以降、絶対に火に近付かないようになった。

朝からこの時点に至るまで、予期せぬ展開続きで写真を撮る余裕もなかった。

○満点の星と月、そして黒富士が出現

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その後はわりとゆったりと過ごすことができた。雨もあがり、食事で元気を取り戻したドラゴンに連れられて散歩に出ると、暗闇に明かるく浮かび上がる一帯が遠くに見えた。その方角を指さして「アソコヘイク!」と言うと、光を目指してズンズンと歩きだした。

光の在処に辿り着くと、そこが朝霧Jamでのふもとっぱら名所であるピーターパンカフェだとすぐに分かった。
ミラーボールが闇に光を放ち、木々を照らす。子連れにはこんな夜遊びもありだよなあとのんびり眺めていると、ドラゴンがキャンドルアートに気がついて「アソコ!」とまた筆者の手を勢いよく引っ張った。

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無数のキャンドルが織りなすキラメキの世界をじーっと凝視するドラゴンに、「あんまり近付くと燃えちゃうからね」と声をかけるも「ワカッター!」と答えてさらに顔を炎に近づける彼は何も分かってはいなかったが、「キレイ! キレイ!」とはしゃぐ姿を前に、炎の明るさ、熱さ、そして美しさなどの感覚を体験するのは2歳の心に大きく響くことだろうと思った。

その後、場内を一周してからテントへ帰ろうとすると、ドラゴンが「ママ、フーシテ イイ?」と天使顔でニコっと言ってきた。意味がわからなかったが「いいよ」と言うと、ドラゴンは一目散にキャンドルの飾られた場所へ走って戻り、片っ端からキャンドルの火を「フー!」っと吹き消しはじめた。は? 全然よくない!

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青ざめる母とは裏腹に、「スゴイッショー!」と言ってケタケタ笑っている鼻高々の2歳児。追う母を尻目に全力で逃げながら3つ目のキャンドルを吹き消したドラゴンを取り押さえた。腕の中では「マダヤルノー! ハーナーシーテー!」と暴れ叫ぶドラゴンに為す術はなく、アートを守るためには息子をその場から立ち去らせることしかできなかった。これが事件5となった<キャンドルアート吹き消し事件>。

(Candle JUNEさん、他スタッフの皆さん、本当にごめんなさい)

なんとかテントに戻ると、月明かりに照らされた富士山が黒く浮かび上がり、昼間には見えなかったその美しい全景が映し出されていた。それを見た朝霧Jam歴の長いTさんは「黒富士だ〜」と言った。
赤富士やダイヤモンド富士は聞いたことがあったけど、これを人は黒富士と呼ぶのか! 格好いいじゃないか!

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この発言だけではなく、Tさんファミリーはじめ、お仲間に入れてくれたOファミリー、Iファミリーは大人も子どもも非常にスマートな、格付けするなら超一流のキャンパーだった。テントは全ファミリーがスノーピークだし、無駄なものも、無駄な動きも一切なくて、すべてが我らと違っていたからとても勉強になった。

そしてこの日、夜空には満点の星が表れた。星々が瞬き始めたのを指さして、「ミテ! ホラ! ハナビ ハジマッタ!」と皆に一所懸命に伝えるドラゴンはたまらなく愛おしかった。いつかクソババアと言われても、瞬く天の星を花火と言ったこの日のドラゴンを忘れないようにしよう。そうして夜は更けていった。

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■10月8日(日)2日目 天候/晴れ

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○ダイヤモンド富士と気球で始まる朝

「ゴオオオオオオオ」

朝5時過ぎ、ものすごい音がして飛び起きてみるとテントからすぐの場所に気球が浮いていた。続いてドラゴンも目覚め、テントから顔を出すやいなや気球を見て「アーーー!」と叫んで飛び出してきた。

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2日目は朝ご飯を作り、食べ、シャトルバスに乗ってラジオ体操からのケロポン定食と予定していたのだが、気球出現によって計画は完全に崩れた。

とにかく気球に近付きたい一心のドラゴンの手を離さぬようにして気球乗り場へ向かうと、すでに長蛇の列になっていた。これに並んでいたらケロポン定食に間に合わなくなるんじゃ…? と思ったが、「ノル!」と言って引かないドラゴン。

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結局、友人らに朝ご飯の支度を丸投げして並ぶこと1時間。気球受付犬とも触れ合ってどうにか待っていられた。まもなく乗れるという頃、急に空模様が変わった。これが噂のダイヤモンド富士の出現か?!

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「ワー! キレイ!」

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朝霧Jam名物のひとつ、ダイヤモンド富士のご来光をバッチリ浴びることができた! たった数分の間に景色の色味がガラリと変わるものだなと、空を眺めながら感心しきりだった。我に返って視線をドラゴンに移してみると、彼は大地のパワーを頭から受けるためだろうか地面に頭をこすりつけていた。さすが2歳児、大人には理解できないことをする。

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気球は“体験”なので、空を飛ぶというよりは少し浮く程度。それでも子どもにとっては充分スペシャルな体験だった。ただ、子連れの注意点としては乗車するバスケットの高さが1mほどあるため、身長99cmのドラゴンには外が見えない。だから当然、抱っこという流れになるが、普通に抱っこすると揺れたら落としかねない状況になってしまう。そのため乗車中ずっと中腰で16kgを抱えなければならず大汗をかいたけれど、地上では観られない景色を一瞬でも見られたし、「キキュー、ノッタネエ!」とドラゴンが満足してテントにさっさと戻ってくれたのでOK!

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○朝ご飯〜シャトルバス乗車、会場へ

狂った予定を取り戻すため、友人が用意してくれた朝ご飯をパパっと食べて、8時には皆でシャトルバス乗り場へ。噂では1時間以上待つと聞いていたけれど、待たずに乗れたおかげでラジオ体操に間に合った。

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○ラジオ体操〜DJみそしるとMCごはんのケロポン定食を鑑賞

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まずはRAINBOWステージ前方で実施されていたケロポンズのフェイス・スタンプに参加。その後、ラジオ体操が始まるまで同じような年齢のお友達と最前列をキープしていたものの、始まった途端に気後れしたのか母のいる後方へやってきた。

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ラジオ体操おじさんの話に耳を傾けているように見えたが、よく見るとその隣にいるケロちゃんとポンちゃん、そしておみそはんを観ていたようだった。ここで朝霧Jam名物のラジオ体操開始!

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ラジオ体操が終わるとすぐに、DJみそしるとMCごはんのケロポン定食のライブが始まった。

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この日のライブはフジロックでのセットリストから数曲引かれたものに、新たなコラボ曲「ライスッス r.t.m. ケロポンズ」(おみそはんの新作『コメニケーション』収録)が加わった、朝からとても楽しめる内容だったのだが、フジロックのアヴァロンとは違ってステージは高く、背の高い大人もたくさんいたのでドラゴンの身長ではほぼ見えない状態だった。

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そんなこともあろうかと、母が用意していた秘密兵器のピンクの椅子を差し出すもドラゴンの不満は解消されず、抱っこされていれば見えるけれど思うようには踊れないというストレスを感じていたように見えた。とはいえ、ライブ中はお茶を飲んだり、母を真似てか写真を撮ってみたりと自分のペースを崩さずにそれなりに楽しんでいた様子だった。後ろで観れば良かったかもしれないけれど、前に行きたがるのは子どもも大人も同じ…。こういうときの判断は簡単ではない。

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○RAINBOWステージエリアの遊び場

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ライブ後、ドラゴンの手を引いて母はビールへ直行。うーん、うまい! 

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今度は自分の番だと言わんばかりに母の手を引いてドラゴンが場内を散策開始。ほどなくして見つけたのは皿回しやジャグリングをする子どもたちの姿だった。
用意されていた道具で思い思いに遊ぶ子どもたちのもとへ駆け寄って「オニーチャン、スゴイネー!」とニコニコして見ていた。「やってみれば?」と促すと皿回しをチョイスしてきた。

自分でやってみて出来ないとわかると、オニーチャンたちへの羨望の眼差しはより強くなった。こうしたチャレンジや相手をリスペクトする実体験はきっとドラゴンを逞しく成長させてくれるはずだ。

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○昼寝、ケロポンズの超レアなショーをあっさり見逃す

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全力で遊んだドラゴンは眠たそうになってきた。時間は11:30、5時起きだったし無理もないと一端テントへ引き上げることにしてシャトルバス乗り場へ。ここでも並ばずにすんなり乗れた。バスの中では「ミテ、ニャー イル!」と言うドラゴンの向く方向に飼い主さんのバッグから顔をのぞかせた猫がいた。アレ? 犬OKなのは知ってるけど猫もだっけ?

その真相はどちらでもいいのだが、犬と一緒にライブを楽しめるフェスという点もまた朝霧Jamの魅力のひとつである。犬好きなドラゴンは場内でたくさんのワンコに会えて嬉しがっていたし、ご近所テントの白い犬に会うため何度も通い詰めていた。

ベルセバ目的で朝霧Jamに初参戦した犬連れの友人の話を聞いたところによると、ライブの音が大きいことで驚いてしまったこと、小さい犬なので人が多い場所では踏まれてしまいそうなのでずっと抱いていたこと以外は快適で、何より愛犬と一緒に過ごせることがとても良かったとのことで、子連れと犬連れには共通項があることがわかった。

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それから基地に戻り、ランチを作って食べて、ドラゴンはお昼寝タイムへ。汗ばむほどの陽気だったのでテントは閉め切らず、風が入るようにして寝かしつけた。

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このとき、場内のキッズランドではケロポンズの超レアなパネルシアター・ショーが行われていたことを後で知った。そのことは前日から張り紙で知らされていたらしいが、前日も当日もキッズランドへ立ち寄れていないままだったのでフツーに見逃した。知っていれば調整できていたであろうに…これは残念だった。

○ふもとっぱら探検 〜採石の巻〜

2時間の昼寝から目覚めたドラゴンは、お気に入りの台車を使って採石を開始した。水場近くで採石し、キャンプサイトへ運んではテントの周りに並べたり、積み上げてみたりとキャンプ場泣かせな遊びをして長いこと楽しんでいた。その後、またしても並ばずにシャトルバスに乗り会場へ。この“待たない状況”は子連れにとって重要!

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