臼田あさ美が語るフジロック – “現地は海外旅行ぐらいの異次元な空間”

<フジロック>はオフではなくてオンな場所。

<フジロック>の過ごし方も服装も、臼田さんは自分の流儀を貫くというか。周りに迎合しない感じがありますけど、聴く音楽に関してもそうなんですか?

臼田 私、よく好きな音楽の話になると、「誰の影響? 両親? 兄妹?」とか聞かれるんですけど、本当に人の影響を受けなさすぎて。ひょんなときに耳にしたものが好きになるというだけで、あまり掘り下げないんですよね。

なるほど。では、普段ライブハウスで観ているアーティストだけど、<フジロック>で観てまったく違った感じ方をしたアーティストはいますか?

臼田 七尾旅人さんですね。3日目のお昼前からホワイトステージで観たんですよ。今までに何度もライブを観ているのに、「あれは何だったんだろう……」というくらいに感動しました。“サーカスナイト”を聴き入ったり“Rollin’ Rollin’ “を大合唱したり。ひたすら感動的なシーンが多くて、あまりにも素晴らしくて(他の人たちにも)共有したくなるようなライブでした。旅人さんはMCで「みんなで音楽を共有しよう」ということを話していて、「そういうことだよな」って納得させられましたし、時間も光も環境もすごくマッチしていましたね。

<フジロック>の音楽漬けの3日間から実生活に戻って、改めて思うことはありましたか?

臼田 <フジロック>は3日くらいの滞在がベストだと思いますね。やり尽くせないから恋しくなるというか。あと、あんなに日本人が沢山いるのに人種を超えている感じがあるし、音楽は国籍を超えていて、ある意味で海外旅行ぐらいの異次元な空間だと思います。偏見があるかもしれないけど、<フジロック>はお客さんのノリが違って、音楽を観る姿勢が自由ですよね。地面に座っていても失礼な感じはしないし。

それはライブハウスとの違いでもありますよね。臼田さんはライブハウスのどんな部分が好きなんですか?

臼田 刺身が美味しい感覚とすごく近くて、生モノ感が好きなんです。仕事も生放送と録画放送の感覚は違うし、ライブは幻というか。ライブは向き合うというよりも一緒に体感している感じがするのかな。ある意味、音楽と向き合うならば、部屋でヘッドフォンをして聴くのが一番だと思うんですよ。私、中学生の時に家にいるのにずっとヘッドフォンでしか音楽を聴かなかったんです。思春期だったからか聴いている音楽を家族に知られたくなかったし、お母さんの「ご飯できたよ」っていう声さえも入ってきてほしくなかった。

ちなみに、中学の時にヘッドフォンで聴いていた音楽って何ですか?

臼田 X JAPANです(笑)。全然違うビジュアル系が流行っていたのに、一人孤独にX JAPANを聴いていて。私には姉がいるんですけど、「お前はヤバいからこれを聴け!」ってDragon Ashの『Viva La Revolution』を部屋に投げ込まれたんですよ。それでも、当時の私は断固拒否してX JAPANを聴き続けていました(苦笑)。

あはは! 臼田さんが『スペチャ』(SPACE SHOWER TV)のパーソナリティを辞めたタイミングが2012年1月ですよね。その時期と<フジロック>に行くタイミングが重なっているのは、仕事ではなく純粋に音楽を楽しみたいという気持ちが強かったのかなと思ったんです。

臼田 たしかに『スペチャ』を担当させていただいていた頃は、プライベートでライブハウスにはほとんど行けていなかったんですよね。毎週の生放送が意外と大変で、放送に合わせてPVを50本観たり、アルバム10枚くらいの新譜を聴き続けたり。あの頃は勉強する感覚もありつつ、ライブハウスに新しいアーティストを観に行っていましたね。当時の生活からは信じられないけど、今では新宿LOFTに 2日間連続でライブを観に行くこともできています。

改めて違う形で音楽と接するようになって、音楽に対して新たな発見はありましたか?

臼田 音楽はズルいですよね。映画を観ていても、エンドロールの音楽が良ければ全て良くなってしまうから。芸術家がミュージシャンに憧れるって言うじゃないですか。私はまだその答えは分からないけど、音楽にはそういったズルさがあるからかもしれないなって思う部分もあります。今の私にとって、お芝居は他の仕事とは比べものにならないほど自分の中で大事な要素ですけど、それでも日々楽しく生きていきたいという気持ちの方が勝っているんですよね。お芝居のために特別に何かを味わおうとか全然考えていないですし、自分のコンディションを整えることも大事だけど、毎日そればかりを考えているわけでもなくて。それよりも音楽を聴いている時間の方が楽しいんです。お仕事のスイッチとは違うけど、<フジロック>は自分に余裕がないと行けない場所なのに、わりとオンな場所でもありますよね。オフの時間として気を抜いて楽しんでいるようで、音楽としっかり向き合う部分もある。だから、いろいろな意味でタフな心が必要なフェスなんだと思います。