毎回さまざまなゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力・思い出・体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回は最新作『石の糸』をサプライズ・リリースしたばかりのバンド、kanekoayanoカネコアヤノ(ボーカル/ギター)林宏敏(ギター)、takuyaiizuka(ベース)の3人が登場。

<フジロック>には2018年からコンスタントに出演してきたカネコアヤノだが、正式なバンドとなったkanekoayano名義では今回が初出演。どのようなステージを披露するのかを語ってもらった。

Interview:kanekoayano

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バンド名義で初めて挑む<フジロック>

──これまで何度も出演していますが、今回はバンド名義で初出演になりますね。

カネコアヤノ:いつも通り嬉しかったです。

林宏敏:「やった、楽しみがまた増えた!」という感じで。バンドとして<フジロック>に出れるのも嬉しいです。

──たくさんのフェスが国内でも開催される中、皆さんにとって<フジロック>はどのようなフェスでしょうか?

カネコアヤノ:日本を代表するフェスですよね。個人的にはお誘いを受けたらできる限り出たいなと思っているくらい、出れたら嬉しいフェスです。

林宏敏:フェスと言われたら真っ先に思い浮かびますよね。

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──これまで出演者としても一人のお客さんとしても<フジロック>を楽しんできたと思うのですが、特に印象に残っていることはありますか?

カネコアヤノ:やっぱり初出演のときですね。マネージャーさんと2人で、細々と全部DIYでやっていた時期で。ステージは「木道亭」だったんですけど、出演が決まったときは嬉しかったですね。思い出深いですし、今もこうしてお声がけいただけることにすごく感謝しています。ありがたいです。

林宏敏:2016年かな、自分が前にいたバンド(踊ってばかりの国)で出演していて。そのときのヘッドライナーがベック(Beck)だったんです。ベックもすごく楽しみだったし、その前がウィルコ(Wilco)で、その流れはまるで音楽の歴史を観ているようで。そういった感覚は単独公演だと味わえないからすごく印象的でした。<フジロック>は海外のアーティストを一気に観るチャンスでもありますよね。

takuyaiizuka:僕は<フジロック>に、生涯忘れられない記憶があって。2015年ですかね。2日目か3日目に行って、テントサイトに泊まったんですけど、ちょうどいい平らな場所が無かったんですよね。しかたなく、けっこう傾斜のあるところにテントを張って、無理矢理寝たんですよ。でも、周りはずっと音が鳴っていて、その中で寝転がっていると、夢心地というか、寝てるか起きてるかの境目を漂っているような感覚で。過酷というより、不思議な体験としてすごく印象に残っていますね。

カネコアヤノ:私はフェスだと自分が出演する日はあまり他のライブを観れないんですけど、前回は私たちの前に演っていたブラック・ミディ(black midi)のライブは観れました。あと、お客さんとしては1回しか<フジロック>に行ったことがないんですけど、そのときはビョーク(Björk)を観ましたね。とても好きなのではじめて観ることができてとても感動しました。すごくかっこよくて、衝撃をうけました。

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──ご自身たちのライブについても教えてください。<フジロック>は海外からのお客さんも多い印象です。カネコさんたちはUKなど海外でもライブを行なっていますが、海外のお客さんが多いと感覚は違いますか?

カネコアヤノ:<フジロック>は他のフェスよりは多いと感じます。一昨年くらいから海外でもライブしていますが、どういった環境でも基本的に持ってるマインドは変えずに演奏できたらと思います。

──目指すところはどんな環境でも同じなんですね。

カネコアヤノ:私たちがそのときそのとき楽しいものを探すことができれば、どんな環境でも同じマインドでできると思います。そういう意味では、<フジロック>も同じだし、楽しみにしています。

──その楽しさは毎回違うんですね。

カネコアヤノ:違いますね。みんながガッと上がっていく部分が楽しい日もあれば、みんながめっちゃ支えてくれているから歌いやすいっていう日もあって、単純に箱の鳴りが良くて楽しい日もある。「デカい音! 楽しい!」みたいな。でも、みんなで上がっていく瞬間を「共有できているかも?」と思える瞬間が一番楽しいかな。

──回数を重ねるとその共有する瞬間の精度も上がっていきますよね。

カネコアヤノ:そうですね、時間を共に過ごしていると、だんだんとわかってくる感覚がありますね。「この人はここでこうくるから、じゃあ自分はこうしよう」っていう部分は、やっぱり回数を重ねないとわからない。でも、一緒に時間を共有していく中で、身体が勝手にそう動いていくようになるんです。そういった“うねり”や“雑味”がグルーヴな気がしています。別に綺麗にしたいわけではなく、ところどころに見えるその日起きてしまったことをどう楽しめるか。もちろん人間だから、うまくいかない日もあるけど。でもそれも含めて、一緒にいればいるほどわかっていく気がします。

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──バンドを続ける魅力の一つですね。ステージでは演奏にグッと集中している印象が強いのですが、ライブの前にやることは決まっていたりするんですか?

カネコアヤノ:メンバーとチームのみんなで拳を「ウィー!」ってやるくらいです。

林宏敏:揃わないけど(笑)。

カネコアヤノ:一生揃わない。

林宏敏:ステージの直前に集まってね。

カネコアヤノ:それまでは各々で準備していることもあるし、直前まで本当にどうしようもない話をしていることもあって。意外と張り詰めてはないですね。

takuyaiizuka:まったくピリピリしてないね。むしろまったりしてる(笑)。

カネコアヤノ:みんなソロ行動で、ぬるぬる喋っている人は喋っているし。私は身体を伸ばしたりしてるかな。林くんは白湯を飲むよね。

林宏敏:身体をあっためたくて。冷えてると集中できなくなっちゃうから、なるべくあったかくして1曲目からマックスのボルテージでやれるように。

カネコアヤノ:たしかに寒いと集中できないよね。

takuyaiizuka:僕は水で顔を洗いますね。で、その辺に置いてある硬い紙でバッて拭くんです。それで目が覚めるんですよね。シャキッとしたくて。

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今が最高の状態

──朝っぽいですね(笑)。タイのLANDKMAI(ランドクマイ)とタイと東京で共演されたり、野音でのワンマンがあったり、3度目のUKツアーや初AUSツアーなど予定されているわけですが、今のバンドの状態はいかがですか?

林宏敏:めっちゃ最高です。

カネコアヤノ:実は、もうアルバム作り終えているんです。今のメンバーで作ったアルバムなので、その密度や空気感の捉え方みたいなものが出た作品になっているかなと。だから現状、すごく仕上がっているというか……林くんが言ってくれたように今は最高の状態かなと思ってます。

──全く知らなかったので驚きました(笑)。そろそろかとは思っていましたが。

カネコアヤノ:アルバムが完成していて、レコードも作っていて、マスタリングなど諸々も全部完了している状態です。すでにリリース日も決まっているんですけど、発売日に突然出そうかなと思っていて。ちょっとしたサプライズ的に届けられたらいいなと考えています。
※4/25に『石の糸』をリリース。

──じゃあレコーディングからライブ、ツアーの流れの最中なわけですね。<フジロック>のタイミングでは新曲もライブで仕上がった状態で聴けそうですね。

林宏敏:ちょうど新作のツアーの間だね。

カネコアヤノ:なので新曲が中心のセットリストになると思います。

──楽しみにしています! ちなみにいつ頃から制作していたんですか?

カネコアヤノ:去年もツアーを回ったりしていたので、ゆっくりプリプロ等しつつ本当に1年間くらいずっと作っていて。録音は去年の12月から1月にかけて、2週間くらいで録りました。そんなに凝縮して録ったのはすごく久しぶりだったので、ギュッとした空気感が久々に詰まった作品になっているような気がします。バンドの空気をそのまま、みんなの音、時間を詰め込んで、やれることをやったという感じです。

──どんな作品になったか、少しだけ教えていただけますか?

カネコアヤノ:ですよね、まだ聴いてもらっていない状態ですもんね。どんな感じだろう?

takuyaiizuka:自分は今回、初めてアルバムの制作に関わっているんです。今までの作品ももちろん聴いてきたんですけど、やっぱりメンバーの出している“生の音”をそのまま乗っけているので、今までと全然違うイメージの曲があったり、これまで通りのテイストのものが作り込まれていたり、複合的な印象の作品になっているかなって。だから新しさはあると思います。

──関わる人が変わる影響はやはり大きいですか?

カネコアヤノ:特に今回はそれが大きいかな。

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──聴くのがとても楽しみです。では、そんな新作を携えて出演する今回の<フジロック>について、まず発表されているラインナップの中で気になるアクトはありますか?

カネコアヤノ:山下達郎さん観たいです。あとはイングリッシュ・ティーチャー(English Teacher)も観てみたいです。

林宏敏:たくさんいるんですけど、エムドゥ・モクター(Mdou Moctar)、パーラー・グリーンズ(Parlor Greens)、フェイ・ウェブスター(Faye Webster)、グレース・バウワーズ(Grace Bowers)あたりは観たい。

──3日間行かないとですね。

林宏敏:エムドゥ・モクターはめちゃくちゃ観たいんで、初日から行くしかないですね。

カネコアヤノ:観たいなといつも思っているんですけど、自分のライブの日はあまり他のライブを観れなくて。でも今年はいろいろ観れたらいいな。

takuyaiizuka:僕はこの前も来日していましたけどティコ(Tycho)、あとdownyがめっちゃ好きなので観たいですね。

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──<フジロック>には新進気鋭のアクトまで幅広くラインナップされますが、普段からアンテナを立てている方ですか?

カネコアヤノ:林くんはすごいよね。

林宏敏:基本は自分の好みのものを追いかけている感じですけど、なるべく新譜は聴こうと思ってますね。サブスクでいろいろ漁ってみたり、ディスクユニオンやタワーレコードに行って、置いてあるものを聴いてみて「いいな」と思ったらちゃんと聴いてみたりしてますね。お店に行くと自分の範囲外のものがいきなり目に入ってきたりして面白いですよね。

──<フジロック>にもそういうところがありますよね。偶然の出会いというか。経験はありますか?

カネコアヤノ:私は引きこもり過ぎて。

──ライブには行っていますよね?

カネコアヤノ:本当に行きたいやつは行きますね。この前のジャック・ホワイト(Jack White)は観に行きました。

林宏敏:3人とも行ったよね。

カネコアヤノ:ウィルコ(WILCO)も行きましたね。苦手ではもちろんなくて、むしろライブハウスは高校生くらいの頃からめちゃくちゃ通っていたし好きなんですけど、最近あんまり行っていないですね。あと友達のライブがあれば行きます。この間もNOT WONKのライブを観に行きましたし。新作、良かったですよね。行くには行くんですけどね、フェスの自分が出る日になるとなんか「うう!」ってパニクっちゃうんですよね。終わった後か前日に楽しもうと思います!

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──では、今年もたくさんのフェスに出演すると思いますが、特に<フジロック>ではどのようなステージを披露する予定ですか?

カネコアヤノ:今やりたいことが本当に好きにやれたらいいなと思います。私たちみんなが上がる、今やりたいことをやれたら。ツアーとも近しいセットリストでありつつ、フェスだし久しぶりにやる曲もあるかもしれないですね。

──現時点でこれはやりそうという曲があったら教えてください。

カネコアヤノ:あるかな? 新曲中心のセットリストに入れたい曲ってなんだろうね? 最近アレンジを直した曲とか? えー……もしあれば、募集します! やるかどうかはわかりませんが。

林宏敏:募ります! やらないかもしれないけど(笑)。

カネコアヤノ:やらなかったらすみません。

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Photo by 寺内暁
text&interview by 高久大輝