川上「自分たちが今出したい音をたっぷりやったという感じです。」
——<フジロック>の直前にセカンドアルバムがリリースされるんですね。
櫻木 そうなんです。聞いたことがないような作品になっています。
市川 刺激的で、でも以前から僕らのなかにあるものは変わっていない。
川上 なんだこれ感はあるかもしれないけど、聞いていけば納得してもらえると思います。自分たちが今出したい音をたっぷりやったという感じです。
——D.A.N.の音楽は内面を刺激される。それが未知の刺激を感じられるのかって思うと楽しみが増していきます。日本レベルではなく世界基準で聞けるものだなって思っています。
櫻木 単純にクオリティが上がっていると思います。個々のプレイ、制作の仕方。そういうひとつひとつのクオリティが、経験を積めば積むほど高くなっていく。僕らもそれを誰かに教わるっていうわけでもなく、ミキサーとかいろんな人と経験していくなかでノウハウとして蓄積していって。こういう場合はこうした方がいいっていうことをどんどん吸収できたのがファーストアルバムを出した以降だったんです。そういうひとつひとつが結集しているというか。
——レコーディングはいつころからスタートさせたのですか。
櫻木 大半は今年に入ってからですね。
川上 録りながら進めて、仕上げていったのが3月と4月。
——レコーディングの期間としては長い方なのですか。
櫻木 決して長くはないと思います。時間をかけようと思えばいくらでもかけられるし、かけないようにするのであればそれも可能だと思うし。
——D.A.N.の音楽って一発録りみたいなようなものじゃないですよね。緻密に構築していくというか。
櫻木 緻密にやる部分と直感的に進める部分と、そういうところのいいとこ取りみたいな感じでやれたかなと思います。
——制作過程は絵に近いような感じを持っています。どこで止めるのかっていうのはそれぞれの感性に委ねられる。
櫻木 作ってみて個人的に思ったのは、今の時代はシングルがいっぱい出ていて、アルバムよりもシングルが優先されているのかもしれません。iTunesだったりSpotifyだったり、一曲単位でプレイリストとして加えられていくじゃないですか。それが時代としては強くなっていると思っていて。友達にもアルバムを作る意味があるのとか聞かれた時に、確かに今の時代にアルバムってどういう存在なのだろうって思ったんだけど、やっぱりアルバムを作る意味とか、アルバムでしかできないことってあるなって思って。そういうことを聞いてもらったらわかってもらえると思います。
——20代の同世代の人たちって、アルバムで音楽を聞くことは少ないのですか。
櫻木 少なくなっているとは思います。よりピュアになっているのかもしれないですけどね。単純に好きな曲だけを集めて聞く。それはそれで楽しいだろうし。逆から考えるとアーティストが何を考えているんだろうなとか、そういうことは問題視されていない。まあ昔だったらレコード一枚のなかで、この曲は何のために入っているんだろうとか考える要素もあって。レコードに込められた物語性などによってその人を知るっていうことがあったと思うんです。一貫した何かっていうものを僕らとしては聞いてもらいたいと思っています。
——アルバムを制作するにあたってのコンセプトは決めるの?
櫻木 具体的なコンセプトというのは立てていないですね。それは最初にEPを作った時からずっと。作りたいものを作る、好きなものを作るっていうことを根本にしていて。そのなかで、今まで3人がそれぞれ経験してきた音楽だったり気持ちの部分だったりを合体させた感じなんですね。
——3年間のいろんな経験が詰まっているんでしょうね。タイトルは?
櫻木 『Sonatine』です。
川上 北野武さんの映画のタイトルが候補に上がって、『Sonatine』はどう?ってアイデアが出たんですけど、考えていた以上に僕らの作品にその言葉がマッチして。
櫻木 改めて映画を見たんですけど、妙にリンクしたところがあるんです。「なるほど」って僕はなってしまって。
——「ソナチネ」ってどういう意味なんですか。耳にする単語ではあるんだけど。
市川 クラシックの言葉で曲という意味です。演奏されるものとか。
川上 今、その言葉を使うのが面白いんじゃないかってことになって。実はタイトルにはあまり意味がないというか重視していない。
櫻木 重視していないんですけど、『Sonatine』っていうタイトルで、このアルバムの中身を聞いた時に、こういうことなのかなっていろいろ思うところはあると思います。
市川 なんか繋がっているんですね。
川上 レコーディングが終わって落ち着いていた時に、家に帰って武さんの映画をたまたま見ていて、次の日にまた集まる予定があったから、『Sonatine』はどうって聞いたらなんとなく決まっていって。武さんの映画を見たのがある意味で運命だったと思う。
櫻木 アルバムを聞いてもらって、気に入ってもらった上で映画を見てもらったら、新しい発見があると思いますよ。セリフだったり、いろんな部分でリンクしていると思います。
市川 最後の最後にならないと本当の部分が出てこないというところなどは共通したものがあるのかもしれません。
——一作の映画、一作のアルバムとしてすべてを聞かないと見えてこないところもあるということですか。
櫻木 そうやって聞いて欲しいと思って作ったアルバムですから。じゃないとアルバムを出す意味がないと思います。
—— 一時間、同じアーティストの作品を聞かせ続けることって難しくなっているんだと思います。
櫻木 僕らも普段はプレイリストとか、いろんなアーティストをミックスして聞いているから、そういう感覚も少なからずありますね。自分たちも楽曲を作ったなかでいろんなテイストが入っているし。
——櫻木さんはDJもやっている。DJで音をつないでいくことと自分の作品を作る感覚は違うもの?
櫻木 違いますけど、DJをやっていて得たノウハウというか音をつなげていく感覚とか、少なからず自分の作品の何かしらにはつながっていると思います。DJをやっていてよかったなと思うのは、インプットの量ですかね。僕はいっぱい聞いた方がいろんなアイデアが生まれ来ると思っているから。
——<フジロック>ではどんなステージにしたいですか?
櫻木 僕らのライブを見ることでしか浮かびあがってこない気持ちとか体験を感じてもらえるように、精一杯、一生懸命やるっていうことに尽きると思います。
川上 悔いのないようにやりたいですね。
櫻木 今までに僕らのライブに来てくれていた人にすれば、アレンジも変わっているだろうし、新しい曲もふんだんに取り入れてやろうと思っています。
市川 アルバムの発売直後でもありますし。新しいアルバムを聴いてきてほしいですね。
——やっぱり演奏するのは夜の方がいい?
櫻木 なんか青空の下でライブをするというバンドではないので。やっぱり夜とかちょっと涼しくなってきた時間だとか。
川上 暗くなってきてからの方が、音に集中できるじゃないですか。
櫻木 よく夜っぽい曲だって言われるんですけど、そういう意識で作っているわけじゃなくて、そうなっちゃうんですね。夜を感じる方が多いようで、暗くなってからライブをする方がマッチするんでしょうね。
——<フジロック>でいつかこのステージに立ってみたいという目標はありますか。
櫻木 いつかホワイトの夜は体験してみたいと思っています。
text&interview 菊地崇
photo by 横山マサト
RELEASE INFORMATION
2nd album『Sonatine』
D.A.N.
D.A.N
01. Start
02. Chance
03. Sundance
04. Cyberphunk
05. Debris
06. Pendulum
07. Replica
08. Borderland
09. Orange
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