石野卓球、SUGIURUMN、ELLI ARAKAWA、DYGLという3DJ+1バンドが出演!<フジロック>のオフィシャルショップ「GAN-BAN/岩盤」によるオールナイトのアフターパーティー<GAN-BAN NIGHT SPECIAL -FRF’17 AFTER PARTY->supported by MOVE LOUNGE_が、9月29日(金)に渋谷クラブクアトロで開催されます。

今回は出演者インタビューの第2弾としてELLI ARAKAWAが登場。エリーローズとしてファッション・モデルでも活躍する傍ら、DJとしてもクラブ・シーンで確固たる地位を築いてきた彼女は、筋金入りのフジロッカーとのこと。今年の<フジロック>では、ブライアン・バートン=ルイスの主導でリニューアルされた深夜ステージ<“INAI INAI BAR” produced by ALL NIGHT FUJI>でオープニングDJを務めました。「モデル兼DJ」と聞いてライトなイメージを浮かべる読者もいるかもしれませんが、いざ話を訊いてみたら、ディープな音楽愛に満ちたエピソードが盛りだくさん。これを読めば、きっと彼女のDJが聴いてみたくなることでしょう。音楽との出会いと<フジロック>の思い出、アフターパーティーへの意気込みを語ってもらいました。

INTERVIEW:ELLI ARAKAWA

「ストレートでピュアに音楽と向き合っていると思います。」

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――<フジロック>出演、お疲れ様でした。まずは当日の感想から聞かせてください。

ブライアンから「出てもらえない?」って気さくにお声掛けいただいて。どういうセットにするかは(出番の)ギリギリに決めたんですけど、<フジロック>に来るお客さんはオープンマインドだと思うので、ストイックなテクノよりも、もう少しボーダーレスなセットにしようとイメージしていました。それに、自分がDJする/しないに関係なく、<フジロック>には毎年行ってるんです。だから、出演が決まったからにはビシッといこうって。

――気合いが入ってたんですね。

私の出番は21時から2時間、しかも(出演した)スペースのオープニング・セットだったので、テクノの次にディグっているディスコをかけようと思って。サイケデリックなサウンドで、BPMが早めの曲をかけたら反応も良かった。そこからだんだん盛り上げて、最後の30分はテクノに落とし込むと。いい形で(次のDJに)引き継げたと思うし、自分も楽しめました。

――今のお話にあったように、ELLIさんは<”INAI INAI BAR”>のオープニングを飾られたわけですけど……。

ネーミングもすごいカッコイイですよね(笑)。思い切りすぎじゃない?

――たしかに(笑)。新たなパーティーでしかもオールナイト、そのトップバッターを務めるのって責任重大じゃないですか。当日の夜がどう盛り上がるかはもちろん、<”INAI INAI BAR”>の歴史も左右するかもしれない。そういうシチュエーションは意識しましたか?

しましたねー。<”INAI INAI BAR”>は初めてのリニューアルだし、ブライアンも「また新しく作りたい」と言ってたのもあって、自分も行くまではどういうステージかわからなくて(笑)。まあ、行ってからのお楽しみだと思ったら、あの空間がまたブライアンらしい、「不思議の国のアリス」や「エデンの園」を思わせるミステリアスな雰囲気で。

――ハハハ(笑)。

でもブライアンは、私を信頼しているから「ELLIの好きなものをかけていいよ」と言ってくれて。だから重く考えずに、今自分が一番かけたい音楽を、このタイミングだなと思った時にかけようと。それに<フジロック>は、さっきも話したようにみんなオープンマインドだから、例えばテクノをかけている途中でロックに切り替えても、それが良いプレイなら盛り上がってくれると思うんですよ。奏でる側としてはハートウォーミングな場所ですよね。

今年の<フジロック>では、ビョークのライヴをご覧になったそうですね。 

いや、もう泣きました。曲のひとつひとつに、声や歌唱力とか。本当に圧巻というか鳥肌ですよね。クラシカル・ミュージックをバックに、アルカのビートも入れてきて。若いアーティストをフックアップしながら、いつも新しいことに挑戦しようとしている。衣装も毎回アヴァンギャルドで突飛なものを着ているじゃないですか。「今年はピンクかー!」みたいな(笑)。アーティストとしてのレベルが違うというか、世界遺産みたいな人だと思います。

――間違いないですね。

あとはスチャダラパーで超盛り上がったし、YUKIさんやCoccoさんも可愛かったです。

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<フジロック>には毎年参加しているとのことでしたが、初めて行ったのはいつでしたか?

2009年ですね。ヴェガス・イン・ミルクという、パレス・オブ・ワンダーにあるバーを友達が経営しているんですけど、お店が出来たのがその年ぐらいで。あそこでDJしたり、友達と呑んで、音楽を聴いて、ストリップ・ショーも見て(笑)。「<フジロック>は何でもアリだな」って思いましたね。

これまで観てきたなかで、特に印象深いステージは? 

自分がティーンの頃から聴いている、ザ・クークスというイギリスのバンドが出たときや、オアシスを初めて観たときはヤバかったですね。MGMTや、2年前のFKAツイッグスもすごく良かった。あとは日本や海外を問わず、友達が薦めてくれたアーティストを<フジロック>で初めて観ることが多いですね。最近だとD.A.N.やyahyelとか。あとは誰かな……もうたくさん観すぎて(笑)。

――<フジロック>のお客さんがオープンマインドだって話がありましたけど、こうやってお話を伺っていると、ELLIさんもかなりオープンマインドですよね。

なんでも聴きますね。ジャズやブラジル音楽、日本のシティー・ポップも好きだし。DJとして知っておくべきというのもあるけど、単純にいい音楽はいいし、聴きたいから聴く。ストレートでピュアに音楽と向き合っていると思います。

――ELLIさんは熱心にディグっているのが、DJしているときの音からも伝わってくるんですよ。高田みどりさんやゴブリンのレコード・ジャケをInstagramにアップしている辺りも、ディープな趣味の顕れというか。

ゴブリンね(笑)、嬉しい。

――そもそもDJを志したきっかけは?

18歳から昼間に開催をされているクラブ・イヴェントに通うようになるんですけど、高校生の頃はレディオヘッド大好きオタクで(笑)。もともと親がピンク・フロイドやボブ・ディラン、ジャニス・ジョプリンとかが好きで、そういう環境で育ったのもあって、「ロックだけど電子音」みたいなところからダンス・ミュージックに入りました。そのあと、ジャスティスやビジー・Pといったフレンチ・エレクトロが到来して、クラブ・カルチャーに没頭していくんですけど。

――同世代なので頷けるエピソードです(笑)。

それで20歳のときに、当時からモデルをやっていたのもあって、クラブのDJブースに入れてもらったりして。「ミックスできるようになったらカッコイイ!」と思い、DJを勉強したくなったんです。で、友達に借金してターンテーブルとミキサー、スピーカーを買ったんですよ。全部で50万円くらいしたのかな。本気じゃなかったら、20歳でそんな買い物しないですよね(笑)。それくらい興味があったし、もっと知らない音楽を知りたかった。

――最高にいい話じゃないですか!

そこからはレコードショップに通い詰めるようになって、仕事から帰るとひたすらミックスの練習ですね。友達にも聴かせたりして。そのうち私がDJしているのが噂になって、ファッション・パーティーにDJとして誘われるようになるんです。その5年後くらいに、25歳で初めてWOMBのクラブ・イヴェントに出させてもらって。ファッション系のときはポップスっぽい曲をかけてたので、一番大好きなジャーマン・ミニマル・テクノをやっとかけることができました(笑)。

――そうやって活動のフィールドが広がって、今では<フジロック>にも出るようになり、アフターパーティーにも出演が決まったわけですよね。オファーがきたときは、率直にどう思いました?

「出ます!」って(笑)。音楽好きなお客さんが集まるイベントは、みんなしっかり聴いてくれるし、キャッチボールができる。そういうイベントにこそ出たいんですよね。

――今回のアフターパーティーは、2007年の<フジロック>から毎年開催されている深夜のDJパーティー<GAN-BAN NIGHT>の延長戦となりますが、<GAN-BAN SQUARE>に足を運んだことは?

「あそこに行くなら朝までいる」って感じでした(笑)。とにかく踊り倒すし、元気な人しか残っていない。あとは卓球さんの印象が強いですね。私たちの青春は卓球さんで作られてきたというか、それこそ20歳くらいのときに「あんなDJできたらいいな」と思った憧れの存在なので。

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――やっぱり影響は大きいんですね。

あとは、<GAN-BAN SQUARE>にいると自分自身にフラットになれる。不安や仕事の悩みも関係なくて、今その瞬間を楽しもう。そんなふうに思える時間を作ってくれる空間だと思います。他のステージは転換があるから、音が途切れちゃうじゃないですか。あそこはそうじゃないから、ずっと居続けちゃう。そういう空間って大切ですよね。

――卓球さん以外の共演者についてはどうでしょう?

SUGIURUMNさんは渋谷のイヴェントでご一緒したことがあって、そのときにブースで初めて挨拶しました。ちょっと日本人離れした感じで、ジェントルマンだと思いましたね。私みたいな後輩の緊張もほぐしてくれて。DYGLさんは存じ上げなかったんですけど……。

――ザ・クークスが好きならお薦めですよ。日本人の若いロックンロール・バンドで、最新作はストロークスのアルバート・ハモンドJr.が手掛けていて。

そうなんですね!そういう人たちと(イベントを通じて)出会えるのも嬉しいです。

――アフターパーティーの会場は渋谷クラブクアトロとなりますが、ライヴハウスでDJするのは、クラブで回すのとはまた違うものですか?

クラブのほうが一体感は生まれやすいかもしれないけど、ライヴハウスは音楽が好きな人が出入りする空間だから、奏でる側もそうだし、聴く側にもエネルギーがあると思うんですよ。だから、DJもスムーズに入りやすい気がしますね。広さもちょうどいいし。

――<フジロック>のアフターパーティーということを踏まえて、どんなDJを披露しようと考えていますか?

古いものと今っぽいものをミックスして、あとは斜め前に走らせるセットが好きなので、ちょっと速めのテンポにしたり。とはいえ、みんなを興奮させる夜にしたいので、グルーヴはその場を見ながら作ろうかなと。遊びに来てよかったと思えるセットにしたいです。

――最後に、オールナイトを遊び通すための秘訣を教えてください。

まずは食生活と睡眠を意識して、あとは気合いとオープンマインド。

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text&interview by Toshiya Oguma
photo by Hayato Ooishi