━━2008年、トラヴィスは<フジロック>に2回目の出演を果たします。誰か、他のステージは観に行きましたか?
フラン メンバー全員で観たのは、スプーンとカサビアン。この時のカサビアンは乗りに乗っていたね。正直に言って僕たちも圧倒されたよ。オーディエンスもすごく盛り上がっていた。
ダギー 他のバンドを観る時はけっこう辛めの評価になってしまうだけどね。僕たちに限らず、他のバンドから「すごい」と言われることは至難の業さ。オーディエンスと同じくらい、同じステージに出演する他のバンドのことを意識するのは普通のことだと思う。
ニール 要はみんなに「あのバンド観た!?」って言われたいんだよ。ステージ脇で、前や次に出るバンドの悔しそうな顔を見ると爽快な気分になる(笑)。
フラン ただ、1999年の<グラストンベリー>のステージみたいに、肝心の演奏が酷かったのにも関わらず、テレビとかで話題になると微妙な気持ちになる。しかも、僕たちの演奏中にいきなり冷たい雨が降りだして、みんな半袖でブルブル震えながら、「早く終わってくれないかな」という感じだった。見るからに悲惨な光景だったよ(笑)。
━━その後、トラヴィス史上もっともポップに振りきれた『The Man With No Name』と、一転してサウンドがラフになった『Ode To J.Smith』を相次いでリリースしましたが、バンドは新しいサウンドを模索していた時期だったんですか?
フラン 自分たちが探しているのは新しいメロディであって、新しいサウンドではない。メロディを絞りだす作業って時にすごく退屈だし、忍耐が必要なんだ。でも、メロディに対して妥協することは怠慢でしかないと思う。本当に才能のある人は、今っぽいサウンドに頼る必要なんてないんだ。
━━なるほど。トラヴィスの場合、アルバムごとにコンセプトを設けることもしませんよね?
フラン あくまで曲のことしか考えない。新作を作り出す時に、「こんなアルバムを作ろう」なんて話はしないから。
━━とはいえ、<フジロック>出演3回目となる2014年の前年にリリースされた『Where You Stand』には、前作から5年も空いたこともあり、“バンドの再生”がテーマにあったような気がします。
フラン 2008年にトラヴィスというバンドは燃料切れになったから、1人ずつ“車”から降りて、それぞれの活動に専念することにした。あるいはゆっくり休みを取ったり。それから3年が経ってみんなが車に戻ってきて、また走りだした。その後に完成したのがこのアルバムだったから、テーマと言えなくもないね。
ニール けっこう良い車じゃないか、って改めて気付いたということ(笑)。
フラン ガレージでエンジンもオイルもリフィルして、内装もすべて変えたような、すごく爽快な気分だったよ。結成から20年が経った今、バンドとしては1番充実している気がする。
━━ちなみに2014年はマニック・ストリート・プリーチャーズが別のステージに出演していますが、2001年にもこの2組は同じステージに出ていましたよね。何というか、歴史を感じます。
フラン ずっと生き残っていることは彼らが本物である証拠だと思う。サウンドの面で自分たちの姿勢を貫いているところも素晴らしい。そういえば、『The Man Who』をレコーディングしていた時に彼らとスタジオが同じだったんだけど、フロアに置いてあったピンボールでジェームスが最高点を出していたことを今思い出したよ(笑)。
━━そして、2016年、4回目のフジロック出演が決定しました。
フラン 今のトラヴィスなら、思いっきりダンスして、歌ってほしいな。ちなみに、ライブ当日は僕の誕生日でもあるから、ビッグなパーティーになるはずだよ。というか、ぜひそうしてくれ(笑)。僕たちの音楽は、頭で聴く批評家には理解できなくても、ハートで聴くリスナーにはきちんと届くと思っている。
━━最後の質問です。30年後、トラヴィスのことを知らない子供に、トラヴィスとはどういうバンドだったのか、を説明するとしたら?
ダギー 透明。
ニール もしかしたらその頃には音楽自体がなくなって、「昔は音楽というものがあってね」という説明から始める必要があるかもしれないね(笑)。
━━今日はありがとう。夏のステージを楽しみにしています。
interview&text by 長畑宏明
photo by 横山マサト
INFORMATION
『SMASH go round 20th Anniversary』 FUJI ROCK FESTIVAL’16