手塚るみ子、インタビュー後編“用意されたフジロックではなくて、自由に楽しんでもらいたい”

各界のキーパーソンたちに<フジロック>の魅力を語り尽くしてもらうこの企画。今回は第6回目に登場してくれた、手塚るみ子さんのインタビュー後編をお届けします。

手塚るみこさんの父親は、日本漫画の父とリスペクトされる手塚治虫氏。インタビューの前編では、自身がフジロッカーであることを明かしながら、<フジロック>と手塚作品の親和性について語ってくれている。

これからお届けする後編の話題は、前編の最後に触れられた岩盤と取り組む<フジロック>とのコラボレーションについて。果たして、手塚プロは<フジロック>とどんな形でタッグを組むのか。今、その真相が明かされる。

Interview:手塚るみ子、豊間根聡(岩盤代表)

tezuka_001_2 手塚るみ子、インタビュー後編“用意されたフジロックではなくて、自由に楽しんでもらいたい”

これだけフジロックに参加している私としてはウェルカム

手塚さんから岩盤とのコラボレーションのお話が挙がったので、ここからは岩盤代表の豊間根さんにも参加いただいて、手塚プロとのコラボレーションについて聞いていきたいのですが。

豊間根 コラボレーションの内容はずばりTシャツです。背景を説明すると、ウチの物販責任者の小川は、過去<フジロック>の様々なコラボレーションTシャツを手がけてきていて、僕と彼は中学1年からの仲なんですが、中学1年の頃ってどんなミュージシャンやアーティストも呼び捨てじゃないですか。どんなに憧れていて、尊敬していたとしても。でも、彼は中学1年のときから手塚治虫さんのことを“手塚先生”って呼ぶんですよ。それが違和感としてあった(笑)のをよく憶えていますね。

昨年、岩盤はタツノコプロとコラボレーションして、『ガッチャマン』と『マッハGoGoGo』をモチーフにしたフジロックTシャツを作りましたよね。

豊間根 その時から小川が言っていたのは、手塚作品とコラボレーションするのが次の目標だと。でも、それはとてもハードルの高い話であろうと彼は思っていたんですね、先生ですから(笑)。ある種、タツノコプロさんとのコラボを手掛かりに、手塚プロさんにお話を持って行ったのが経緯としてあって、実際に手塚プロさんを伺ってみて話をしたら、「なぜもっと早く来てくれなかったの?!」って言われてしまったという(苦笑)。
手塚 これだけ<フジロック>に参加している私としてはウェルカムですよ。「キター!」という感じでした。以前、<フジロック>とミッキーマウスのコラボTシャツを知ったときに、「フェスもキャラクターとコラボするんだ」と意外だったんですね。それから、いつかウチのアトムも<フジロック>とコラボしたいと長年憧れていたんです。なので、<フジロック>がいろいろなキャラクターとのコラボを続けてきた中で、去年タツノコプロさんとタッグを組んだときに、「先にやられたー!」と思って、どうやって売り込もうかと考えていました。そしたら逆に岩盤さんからお話をいただいたという。ずっとコラボしたかったけど、どこに話をしていいのかが分からなかったんですよね。〈MUSIC ROBITA〉(手塚るみ子の音楽レーベル)としてはミュージシャンと直接話せるものの、「フジロックの事務局はどこに話せばいいんだろう?」と悩んでいたところもありましたけど、ようやくお互いが相思相愛みたいになれました。
豊間根 とにかくハードルが低かったことにびっくりしました(苦笑)。
手塚 むしろ待ってましたから!(笑)本当にタツノコプロさんとのコラボTシャツが発表されたときは悔しかったですもの。これはタツノコさんをライバル視しているわけではなくて、「どうやって話したんだろう?」という疑問があったので。

<フジロック>が日本の野外音楽フェスのシンボル的な立ち位置にある一方で、アトムも日本の漫画を象徴するキャラクターのひとつですよね。アトムといえば空を飛んでいるポージングをイメージする人が多いと思いますが、なぜ今回のビジュアルが採用されたのか、すごく興味深くて。

手塚 やっぱり興味深いですよね。おそらく皆さんがそういう反応をするんじゃないかと思います。
小川
(岩盤)
普通にアトムを使いましたというTシャツにはしたくなかったんです。僕の中に必然としてあったのは、音楽フェスティバル文化の象徴として根付いている<フジロック>、日本の漫画文化の象徴は手塚治虫先生であるという考え方です。二つの象徴を融合させるにあたって、いわゆるありモノのビジュアルを使って<フジロック>のロゴをプリントしただけのTシャツは作りたくなかった。ディズニーの象徴といえばミッキーマウスであるように、手塚治虫先生でいえば、その存在はアトム。日本漫画のレジェンドであるアトムを起用するということで、今回のTシャツにはレジェンドシリーズという裏テーマがあるんですね。なので、今回のTシャツはある伝説的なアーティストをオマージュした作品にしたんです。

なるほど。たしかに言われてみれば、洋楽ファンはあのアーティストを思い浮かべますね。

小川 モヘアのボーダーニットがトレードマークの左利きのギタリスト。それをモチーフにして、手塚プロさんにオリジナルのビジュアルを描き下ろしていただきました。
手塚 我々サイドとしては結構仰天でした。過去にいろいろなコラボレーションをやってきた中で、場合によっては「どこが手塚キャラなの?」というくらいに原型をとどめていないものもありますので、「何でもかかってこい」的な状態ではあるんですけど、まさかアーティストと重ね合わせるという発想はありませんでした。しかも単純なパロディではなくて、小川さんが実際に絵を描いて、こだわりの部分をより具現化していただいたので、そのイメージに沿う感じに作らせていただきました。このパターンは過去にありませんし、うちの社内にはレジェンドとレジェンドをかけていることをわかる人もあまりいないので、岩盤さんにラフ画を何回もチェックしてもらいましたね。
小川 これまでのコラボTシャツに共通している考え方としては、<フジロック>期間しか着られないTシャツは作りたくないんです。もちろん、フジロックで着たらかっこいいんだけど、普段着のワードローブの中にあってほしいというのがコンセプトなんですよ。ファッションとしてきちんと見せられるようなTシャツというコンセプトがあって、今回のデザインに辿り着いたんですね。
手塚 今回はレジェンド対レジェンドという裏テーマですけど、私としては、アトムを<フジロック>の上空に飛ばしたいという希望もあるんです。富士山の上をアトムが飛ぶというビジュアルの商品があるんですが、富士山が世界遺産になったこともあり、海外の観光客にとても評判がいいんです。私にはアトムには日本の代表的な景色の上を飛んでいてほしいという希望があって、だからこそ<フジロック>の景色の上を飛んでいるアトムを見てみたいんですね。

tezuka_002_2 手塚るみ子、インタビュー後編“用意されたフジロックではなくて、自由に楽しんでもらいたい”

インタビューの前編でもコラボレーションのお話がありましたが、今回のコラボTシャツは、手塚プロにとっては『鉄腕アトム』を<フジロック>のお客さんを中心に知ってもらうきっかけになりますし、その逆のことが<フジロック>にもあてはまると思います。

手塚 <フジロック>そうですね。このビジュアルの意味をそこまで深く分からなかったとしても、新しいアトムのスタイルとしてかっこいいと思ってくれたり、<フジロック>を知るきっかけになってくれたら嬉しいです。アトムは世界中で知られているキャラクターなので、世界に向けて<フジロック>を知ってもらうきっかけとしてアトムが存在する。親善大使じゃないけれども、アトムがそんな役割を担ってくれたら本望ですね。お役に立てるのでしたら、是非これからもコラボをご一緒したいと思っています。
豊間根 <フジロック>にとってはある意味、これ以上の親善大使はないと思います。

実際に、<フジロック>におけるコラボTシャツの人気はどうなのでしょうか?

豊間根 コラボTシャツの中でも昨年のタツノコプロさんとのものは、海外のお客さんにとても人気がありましたね。
手塚 先ほども言いましたけど、タツノコプロさんの『マッハGoGoGo』のドピンクのTシャツを海外のお客さんが喜んで買っていた光景を見て、本当に悔しかったんですよ。今回のようなスタイルのコラボは前例としてもなかなかないと思うので、周りの反応も新しいものがあるかもしれませんね。
豊間根 そうですね。まだ<フジロック>本番は先ですけど、今年の岩盤のフジロック・コラボTシャツ第1弾がアトムTシャツですので、まずはそこでどういう反響があるのか、僕もすごく楽しみです。

手塚さんは今回のコラボTシャツをどんな風に楽しんでもらえたらと考えていますか?

手塚 日常着としてはもちろんですけど、カスタマイズして着てほしい気持ちもあります。最近、ありモノをそのまま着ている方が多いと思っていて。能動的にカスタマイズしてほしいですね。たとえば、グランジっぽく自分でダメージを入れたり、スパンコールを付けたり。特にフェスはお祭りでもありますし、そういったカスタマイズを施して、自分だけのアトムを楽しんでもらいたいな。白いボディはペイントし放題じゃないですか。自分なりにアトムを塗っちゃうみたいに、自由に遊んでもらいたい。せっかくアトムが<フジロック>に参加させていただくのだから、<フジロック>に参戦する人たちにアトムを思い思いに楽しんでもらいたいですね。

DIYは<フジロック>の一つのキーワードだと思うので、そういった部分ともすごくマッチすると思いますね。Tシャツもフェスも自分色に楽しむというか。

豊間根 手塚さんからアトムを楽しんでもらいたいというコメントがありましたが、<フジロック>を楽しんでもらうことは、岩盤とこの富士祭電子瓦版の役割でもあります。現状の<フジロック>が約10万人の固定のお客さんたちに楽しんでもらっているとしたら、<フジロック>未経験の人たちに対して「苗場に遊びにおいでよ」と声をかけて、新たなお客さんにももっと<フジロック>を楽しんでもらうことがミッション。その意味では、アトムを遊んでほしい、<フジロック>で遊んでほしいという二つの想いが、このTシャツで一体化したと思っています。僕らとしても、このアトムTシャツで思いきり<フジロック>を楽しんでほしいですね。
手塚 フェスはかくあるべきというマニュアル的なものがあるのかもしれないけど、自分なりにカスタマイズして楽しんでいくと、新しい何かを思いつくかもしれません。新しく<フジロック>を体験する人には、こういうものだと用意された<フジロック>ではなくて、自由に楽しんでもらいたい。今回のアトムTシャツが、そのきっかけづくりになればいいなとも思います。

tezuka_003_2 手塚るみ子、インタビュー後編“用意されたフジロックではなくて、自由に楽しんでもらいたい”

text&interview by Shota Kato[CONTRAST]
photo by Chika Takami

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フジロック’15×岩盤 鉄腕アトムTシャツ

フジロック’15×岩盤 鉄腕アトムTシャツ
カラー:WHITE、BLACK、HEATHER GRAY
サイズ:XS、S、M、L、XL
値段:¥3,780(税込)
発売日:2015.03.06(金)


INFORMATION

FUJI ROCK FESTIVAL OFFICIAL SHOP【岩盤/GAN-BAN】

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営業時間:11:00 – 21:00
定休日:不定休(PARCO休館日に準ずる)
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岩盤オフィシャル