小原「全てを回収するようなステージを見せたい。」
──今回、Tempalayはリリースされたばかりのサード・アルバム『21世紀から愛をこめて』を引っさげての出演となります。アルバム・タイトルといい、後半に収録された“The End”や“おつかれ、平成”といい、どことなく終末感が漂うというか、テーマとして一つの時代を総括しているようにも感じました。
小原 “おつかれ、平成”は、自分自身が感じた「平成」の空気感について歌っています。まだ解決していないこと、ずっと目を背けてきたことが平成という時代には沢山あって。元号が変わり、そういったものに対して行き場がなくなってしまった感情を、オーケストラで壮大に浄化したかったんです。「そうしてでも進んでいくしかない」ということを、表現したかったんですよね。
何か、声高なメッセージを発したいわけじゃないけど、でも今自分が置かれている状況ということは理解してなきゃならないし、それを次の世代に残さなきゃいけないとは思っていて。それを、自分のできる表現で探っていきたかったんです。なので、未来へのメッセージという意味で『21世紀より愛をこめて』というタイトルをつけました。何か答えを提示したいわけではなくて、今の空気、この時代に何があったかをパッケージすることで、いつか誰かがそれを開いたときに、どう感じるのかな? ということを考えながら作ったアルバムです。
──サウンドも、これまでに比べてさらに振り幅が大きくなっています。何かインスパイアされた音楽などありましたか?
藤本 今回、アルバム制作に向けて合宿をしたんですけど、その前にプレイリストはもらっていました。「今回、こういうのを聴いてたよ」みたいな。何が入ってたっけ。
AAAMYYY 久石譲とか。
──へえ!
小原 ルイス・ヒューレイと久石譲を足したら、絶妙に気持ち悪くて美しいものが出来るんじゃないかな?とか(笑)、そういうリファレンスでしたね。今までは、例えば1枚の絵を見せてイメージを膨らませてもらうなどしていたんですけど、今回は割と分かりやすく提示したほうがいいのかなと思って、デモ音源も以前よりきっちり作り込んでから持って行きました。
──リード曲“のめりこめ、震えろ。”はどのようにして出来た曲ですか?
小原 今回3枚目のアルバムということもあって、破壊力というか、攻撃力のある曲を作りたいと思ったんです。こう、メラメラとした曲を……と考えていたときに岡本太郎さんのことが頭に浮かんで。太郎さんが訴えかけていたものを、自分なりに解釈して作った曲ですね。
──PVも非常にインパクトがありました。
小原 「音楽業界に宣戦布告をするテロル集団」みたいな設定です(笑)。ただ、どれだけ賛同者を増やし団結して戦ったとしても、絶対的に勝てない「強大な何か」があるっていう。つまり、どんなにアーティスト側が頑張って表現を追求したところで、それを叩き潰す強大な何かには勝てないっていう結末なんですよね。
──サウンド面で、今回チャレンジしたのはどんなことでしょうか。
藤本 例えばドラムは、これまで60年代〜70年代を意識した割とデッドなサウンドだったんですけど、今回は結構ライブ寄りにしたかなと思います。今までのTempalayではあまり使わなかったような音色もあって、全体的な音像も、開けた感じになったのかなと。
──“脱衣麻雀”はネオソウルっぽいリズムだったりしますよね。
藤本 あの曲は一応、大まかなフレーズは決まっていたけど、レコーディング中に「もっとやって」って言われて(笑)。今まではそういう、現場の雰囲気から生まれるフレーズを取り入れるみたいなことってあまりなかったんですけど、今回は叩きまくった場所もあるし(笑)、ライブさながらなダイナミクスを出した作品になりましたね。
──この曲はAAAMYYYさんとのツイン・ボーカルが印象的です。ここまでAAAMYYYさんの声をフィーチャーした曲はなかったと思うのですが。
小原 これはAAAMYYYに、いやらしいことを歌わせたいなと思って作りました(笑)。まあ、脱衣麻雀というのは一つの例えなんですけど、いろんなことにどんどん規制がかかっていくじゃないですか。それはゲームだけじゃなく、色んなことに言えると思うんです。「風営法」にしたってそうですが、どんどん規制がかかっていくものって、何かしらの理由があったとしても納得できない部分もあるし、憤りも感じるわけで。そういう思いに対して、面白おかしく表現出来たらいいなという思いで作った曲ですね。
──“そなちね”は、藤本さんに第一子が生まれたことが大きなインスピレーションになったとか。
小原 北野武監督の映画『ソナチネ』を、お正月に久しぶりに観たんです。あの映画って、親に恵まれなかった男の末路を描いていると思っていて。ほんの一瞬、自分が幸せになってもいいと思った瞬間があっても、最終的には帰る場所がない、あってもそれは「死」だけだったという。その映画を見たタイミングで、夏樹だけじゃなく周りで子供が生まれることが重なったんです。子供って、無垢で真っ白な存在じゃないですか。つまり、これからどうにでもなるというか、幸せにも不幸にもなりうるその「表裏一体」な感じを描きたかったんですよね。
──“Queen”でスーパーマリオのことを歌ったのは?
小原 これは、ピーチ姫を救いに行くマリオのイケメン具合を歌にしようと(笑)。実は、デモ自体も結構古くて。前作の時にはあったから、2年くらい前に作ったのかな。その時は、スーパーオーガニズム(Superorganism)がYouTubeで一瞬バズった時で。ああいう曲を作りたくなったんです。それが時を経て「もっとフェスっぽい曲にしたいな」と。フェスといえば、山、山といえばマリオだなと。
藤本 あははは。
──この曲、<フジロック>で聴くのがより楽しみになりました。というわけで、今年の<フジロック>出演にあたっての意気込みを最後にお聞かせください。
AAAMYYY <フジロック>に出ることを一番のモチベーションにしてTempalayをやってきたし、個人的にもいちばん好きなフェスなので、嬉しさしかないですね。でも、長いことこの場所に出られるようなライブがしたいです。
藤本 メチャクチャいいライブして、終わったらお酒飲みながら練り歩いて、気づかれて写真とか撮られて。「Tempalayの方ですよね?」って言われたい(笑)。<フジロック>で話しかけられたら気持ちいいですよね(笑)。
小原 まずROOKIE A GO-GOに出て、苗場食堂を経て今回はいよいよ本ステージなので、しっかりストーリーは作れたかなと。苗場食堂では忘れ物をたっぷりしてきたので(笑)、それを全部回収するようなステージを見せたいですね。もちろん、もっとでかいステージにも出たいので、その「布石」という意味でもぶちまかしたいなと思います。
──めっちゃ楽しみにしています。
小原 ちょっとやっちゃいますよ、今回は。
AAAMYYY ケガだけはしないように(笑)。

text&interview by 黒田隆憲
photo by Tsuneo Koga
RELEASE INFORMATION
3rd Album「21世紀より愛をこめて」
PECF-3234 / 2,600yen(+tax)
1 21世紀より愛をこめて
2 のめりこめ、震えろ。
3 そなちね
4 人造インゲン
5 どうしよう
6 脱衣麻雀
7 Queen
8 THE END(Full ver.)
9 SONIC WAVE
10 未知との遭遇
11 美しい
12 おつかれ、平成
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