〜こどもフジロックのススメ。①〜

「フェスエコ(Festival Echo)」をご存じですか? 毎年<フジロック>開催前のこの時期にレコード店頭などで配布されるフェスとアウトドアの情報満載のフリーペーパーです。その2014年発行されたものの中から、心ときめく記事を発見しました。

子連れで初めて<フジロック>参加を考えるとき、誰しもが心配する「子どもを<フジロック>に連れて行くのは、子どもにとってどうなの?」という疑問に、保育歴45年の大ベテランが真っ向から太鼓判を押してくれている’フジロック育児書’ともいえるような、勇気をもらえる内容でした。

前回登場してくださったジョージ・ウイリアムズさんは、インタビュー中に「自分が好きなものを子どもにシェアしたい」と何度も仰っていたのが印象的でしたが、今回、私は皆さんに、とりわけ幼児の子育て真っ最中のお母さんとお父さんにこの記事をシェアしたいと思います。その前に、少しご紹介を。

「りんごの木子どもクラブ」代表 柴田愛子さん。
1948年、東京生まれ、保育歴45年。「子どもにかかわるトータルな活動」をめざし、1982年に「りんごの木子どもクラブ」を創設。横浜に保育園を構え、徹底的に子どもの力を信じ、心に寄り添う保育を実践されている保育界のエキスパートである柴田さんは「愛子先生」の愛称で慕われ、彼女の育児メソッドはNHK「Eテレ」などで特集されるほどに注目をされています。

<フジロック>会場内にある子ども向けエリア・キッズランドの運営にも協力している柴田さんのストレートな言葉をお楽しみください。

親子で行くフジロックのすすめ(Festival Echo’14 より一部抜粋)

<フジロック>はケチなことは言わない。子どもは、みーんなタダだ。どこかのテーマパークなんかとは大違いだ。そして自由だ。自分の責任で何をしてもいい。それは大人も子どももいっしょだ。

フジロックの森の入り口にあるキッズランド前には、たくさんのベビーカーが並び、森の中からは、子どもたちの元気な声が聞こえてくる。

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柴田先生は雨具を着て、長靴を履いて、ぐちゃのぐちゃの山道をあっちに行ったり、こっちに行ったりと<フジロック>を楽しそうに歩いている。それもそのはず、柴田先生は山が大好きなのだ。

「あー、日本でもこういうことができるんだ。ここには自由な空気が流れている。フジロックに行ったとき、それがとてもうれしかったんです。そんな大人がいて子どもがいる。大人が楽しむから、子どもは楽しいんですよ。大人が幸せになれば、子どもも幸せになるんですよ。

園があるニュータウンの公園はどこもりっぱで、遊歩道が整備されたり、木々が保護されているかもしれないけど、肝心な住んでる子どもが保護されていない。

整備された木の階段の歩幅は、大人の歩幅で作られているから子どもはその脇の斜面をズルズルと歩くしかない。すると、ちゃんと階段を歩きなさいって、怒られちゃうんですよ。

公園に咲いたツツジのお花の蜜を子どもがチュウチュウやっていると、公共の花をとるとは何ごとだってクレームが入る。子どもは自然の中に生まれた自由人なんです。

でも、大人がケチな生き方をしている。了見の狭さ、生きづらさなんかを抱えてガードをつくりながら暮らしている大人が多い。そんな大人が、地域を不自由にして、子どもを不自由にさせている」

子育ての環境もめまぐるしく変化してきた。子どものためといいながら、教科書に書かれた通りのより正しい子育てや教育を求め、大人の理屈や親の都合が優先されてしまう。

しかし、子どもには、そもそも自分で考え、育つ力があると愛子先生は言う。大人が「どういう子に育てたいか」ではなく、子ども一人ひとりが「どう育とうとしているのか」をしっかりと見て、援助していくのが、愛子先生が長年実践してきた「子どもの心に寄り添う」保育だ。

「心に添うといっても、最初は子どもをもっとわかりたいための手だてだったんですよね。子どもが泣いているとき、「泣かないで、泣かないで」といってあやすのはこっちの都合です。そして、泣くと大人はすぐに「どうしたの?」って聞くでしょう。

でも子どもはそれが言葉で言えないから泣いているんです。でも近寄ってみれば、悲しくて泣いているのか、怒って泣いているのかわかりますよね。「なんで」と知りたいのはとりあえず置いておいて、悲しいんだよね、怒っているんだよね、と言って気持ちに寄り添ってあげることで、子どもは落ち着き、自分を取り戻せるんです。

そうやって、一言、一言、子どもの表情を見ながら、モノを言ってたら、けっこう見えるようになってきたの。すると子どもは言葉では表現していないってことに気づいた。表情とか行動全部で内面を表現しているんです。

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私、お母さんには「3歳までサルだと思え」って言ってるの。子どもといると面白いのは、やっぱり感性の素晴らしさ、本能の強さっていうのかな、いずれにしても子どもに対して、こういう風に育って欲しいとか、こうしようと思えば思うほど、思うようにはいかないわよ。で、そんな子どもだから面白いって、子ども側に視点を変えてしまうと、これほど、楽しい世界はない。

自分でやりたいことがあれば、どんなに大変でもやろうとするのよ。でも自分のやる気がないのに大人が目標を掲げて、やらされることほど、嫌なことはない。大人だってそうじゃないですか。

でもお母さんたちも、不安なんですよね。子どもの自主性や個性を尊重するということは頭ではわかっていても、情報に流されてしまう。情報が多ければ多いほど、子育てが苦しくなっている。それは都会でも地方でも同じ。

情報が均一化されて、同じような価値観の人たちが、とても狭いなかで競い合って、子どもを見ずに、隣と見比べて子育てをしている。昔は我が子を食べさせるだけで精一杯。食べさせることができれば、なんとかなる、って思えたじゃないですか。でも今は、お金をかけることが親の責任だと思っている人がすごく多い。子育てにお金をかけて、無傷で効率よく、育てたいと思っている。でも、なかなか画期的な変化が見えなくて、また不安になる……。

子どもは”放牧”しておくのがいちばんいい、これは教育学者の汐見稔幸さんの言葉なのですが、大人の大きな見守りのなかで、子どもの群れとして”放牧”されるように育っていくのが一番いい。

子どもは核家族の重いマンションの扉のなかでは育たないんですよ。ガードが固くなればなるほど、自分を守ろうとすればするほど孤独になっていくんですよね。だからときどき、「助けてくれなーい」って言えるような場所をつくる、第二の実家のようなことをめざしてきました。どうやら、私のやりたいことは保育なんですけど、子どもにとって何が一番大事かってなると、やはり親子関係なんです。

親と子は取り替えができません。いい親子関係があって初めて、大きくなったとき、生まれてきてよかった、うちの子でよかったと思ってもらえる、それが一番の子育ての成功なんだと思います。

そして子どもにとって、何よりも大事なのは、親に「あんたんちの子、いいねー」、「あんたんちの子、こんなステキなとこあるよー」、「いい子生んで良かったねー」って言っていくことで、親が子どもに「あんたもがんばっているのねー」って伝え、互いに親子関係を繋いでいく、その援助をするというのが私の一番の仕事だなって思っています」

文=滝沢守生

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柴田愛子(しばた・あいこ)

横浜都筑区にある保育クラブ「りんごの木子どもクラブ」代表。保育のかたわら、絵本や書籍の執筆、子育て雑誌や保育専門誌への寄稿、さらには全国での講演会や研修会などを精力的に行なう。主な著書に「子育てを楽しむ本」(りんごの木子どもクラブ出版部)、「それは叱ることではありません」(PHP研究)、絵本に「けんかの気持ち」(日本大賞受賞。ポプラ社)

いかがでしたか。大人たちに見守られながら、大自然と音楽の中で子どもたちが体も心も思いっきり動かすことができる空間という、<フジロック>の持つ【こどもフジロック】的な一面をご紹介できたのではないかと思います。

独身時代のガツガツした音楽モードから、子どもが幼い間の数年間は‘親モード’にスイッチを切り替えて、のんびり<フジロック>を楽しむのもその時期しかできない楽しみ方かもしれません。

また、家にいると、なんだかんだで子どものことだけをじっと見つめていられる時間は少ないと思います。愛子先生の言葉にあるように、<フジロック>という限られた時間を活かして、子どもに寄り添い、子どもをじっと見つめることを山の中でしてみるのも贅沢なことのように思います。

そしてもちろん、子どものためだけではなく、毎日を育児に仕事に頑張っている自分へのご褒美として、<フジロック>を子どもと一緒に楽しみましょう!

文=早乙女‘dorami’ゆうこ

<こどもフジロックFacebook>では、役立ち情報のシェアを呼びかけています。子連れ未経験の方には不安に感じていることなどを、子連れ参加経験のある方には体験談をシェアしていただくことで、子連れ参加がしやすくなるようにするための【こどもフジロック】企画。多くの方の参加をお待ちしております! 

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