毎回様々なゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力/思い出/体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。2023年第一弾に登場するのは、ラジオ局J-WAVE(81.3FM)の番組「GRAND MARQUEE」ナビゲーターのタカノシンヤさん。

「GRAND MARQUEE」のコーナーのひとつとして「ROAD TO FUJI ROCK」がスタートしている。しかしタカノさんはまだフジロック未体験。<フジロック>好きの番組ディレクターの東海林靖さんとJ-WAVEイベント事業部の塩ノ谷佳奈さん、そしてFestival Life編集長の津田昌太朗さんが、タカノさんに<フジロック>の魅力を熱く語る。

Interview:タカノシンヤ×東海林靖×塩ノ谷佳奈×津田昌太朗

0406_shinyatakano_01 J-WAVEナビゲーター・タカノシンヤが聞いた「初めてのフジロックを楽しむ秘訣」 #fujirock

ROAD TO FUJI ROCKはすでにはじまっている

──まず、タカノさんがナビゲーターを務めている「GRAND MARQUEE」のことを紹介してください。

タカノ 「人生と東京は想像以上に面白い」というテーマをもとに、東京の面白い人だったり東京の気になるカルチャーを発信していく番組です。月曜から木曜の夕方4時から7時までの3時間。水曜のコーナーのひとつとして動き出したのが「ROAD TO FUJI ROCK」。

東海林 「ROAD TO FUJI ROCK」はオフィシャルコーナーとして立ち上げたんですけど、喋っている本人が<フジロック>に行ったことがないという。今年、初めて参加するタカノくんが、準備を含めて<フジロック>にどう向かっていくのか、実際に行って何を感じるのかっていうのを追いかけるコーナーです。

タカノ じつは「ROOKIE A GO-GO」にはFrascoで毎年応募しているんです。音楽活動をずっとやってきているので、出演したいっていう気持ちが先行しちゃって。落選のメールが送られてくるんですけど、その文面がすごく丁寧なんです。メールをもらうたびに、「ありがとうございます」っていう気持ちとともに、来年こそ出演したいっていう強い思いが浮かび上がってきて。今年は番組企画で初参加するんですけど、「ROOKIE A GO-GO」への応募ももちろんします。

東海林 じゃあ、ダブルで<フジロック>ということも有り得るんだ?

津田 今年出演することになると、ちょっと忖度も感じてしまいますけど(笑)。

タカノ そうなんですよね(笑)。でも出たい。「ROAD TO FUJI ROCK」をやることで、まずは<フジロック>を体験しなさいよって言われているんだと思っているんです。苗場では「ROOKIE A GO-GO」を見るのも楽しみなんです。

それぞれの初めての<フジロック>

──それぞれ、初めて<フジロック>に行ったきっかけを教えてもらえませんか。

東海林 僕は99年の苗場初年度が初の<フジロック>でした。まだRED MARQUEEがなくて。当時、東京スカパラダイスオーケストラのメンバーだった冷牟田(竜之)さんがTABOOというパーティーをオーガナイズしていて、そのTABOOをヴァージンテントの夜中にやるっていうので、パーティーのVJのお手伝いとして行ったんです。

タカノ そんなことをやってたんですね。

東海林 だから最初<フジロック>はパスをもらって。その後はなんとなく1年おきくらいにお客として行って、2010年頃から<フジロック>でもラジオの仕事に関わるようになって。

──99年の苗場で一番記憶に残っていることとは?

東海林 ジョー・ストラマーですね。楽屋に行ってTシャツにサインをしてもらったんですよ。20年以上、そのTシャツは一回も着ていないし洗っていませんから。

津田 僕は2006年、20歳の時に初めて<フジロック>に行きました。<フジロック>は憧れの存在で、10代の頃から<フジロック>行きたすぎる病、にかかってしまって。高校までは関西だったんですけど、関西の高校生にとっては新潟は遠かったんですね。そして卒業してやっと上京した。それでも行くためのお金がないんで、タワーレコードだったら<フジロック>のパスがもらえるだろうって勝手に思って、タワーレコードでバイトをはじめたんです。2005年に<フジロック>に初参加するって自分の中では決まっていたのに、先輩で行く人も多くて店舗のスタッフが少なくなるから行けないって言われて。ベックとか、<フジロック>に出演したアーティストたちが渋谷のタワーに買いに来たんですよね。泣く泣く接客したのが思い出です。

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──そして翌年には晴れて<フジロック>デビューした?

津田 バイトを調整してもらって。テントの張り方もまったく知らないキャンプ初心者で、量販店で安いテントを買って行ったんです。金曜に入ったんですけど、偶然ゲートから近いのに平らなところが空いてました。じつはそこ、バンカーだったんですけど、大丈夫だろうって思って、ライブを見に行ったんです。ライブから帰ってきたら、テントが見事に飛ばされていました。それが最初のフジロックの洗礼でした(笑)。

塩ノ谷 私は2016年でした。新卒でJ-WAVEに入社して、その年に仕事でいかせてもらったのが初めての<フジロック>でした。学生時代の自分にとって<フジロック>は遠くて、チケットの値段も高めだったので、ごみゼロナビゲーションのボランティアに参加して行こうかなと思いつつ踏み出す勇気がなくて。サマソニにはライブペインティングするアートコーナーのスタッフとして行ったことがありました。

──仕事で行った<フジロック>はどうでしたか?

塩ノ谷 とにかく過酷でした(笑)。<フジロック>のライブ音源を、できるだけ早く入手して、それを東京に向けてアップロードすることが仕事。ステージとラジオブースとホテルを何度も行ったり来たりして。2016年って晴れの日が多かったんですよ。けっこうしっかりめのワークブーツを履いて行ってしまったんですね。暑くて足も痛くて本当にヘトヘトで……。そんな状況で辿り着いた夜のグリーンステージで、シガーロスのライブを見ていたらもう涙が止まらなくて。満天の星が輝く下、大自然の中で至高の音楽と透き通る歌声に包み込まれた、何にも変えがたい経験でした。一生忘れないと思います。

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強烈な思い出になっているライブ

──数ある<フジロック>体験の中でのベストアクトは?

東海林 <フジロック>はアーティストのライブだけじゃなくて、別の思い出も入ってきちゃうんですよね。その意味で言うと、2007年のアニマルコレクティブ。自分と同じくらいワーワーキャーキャー言っている男が近くにいて。やっぱり意識しちゃうんですよね。それで目と目が合って「一緒に踊ろう」みたいにその時はなったんです。一緒に写真は撮ったけど、連絡先を聞かずに別れたんですね。次の週にビーチパーティーに行ったら、そいつがいたんですよ。再会を喜んで、何か縁があるんだなって連絡先を交換して、その後は一緒にフェスに行くような仲になって。そいつは今、<フジロック>で装飾の仕事をしているんですよ。自分もラジオの仕事で行っている。そんな出会いも<フジロック>にはある。

津田 ベストアクトって、めちゃくちゃ難しい質問なんです。ただいつも新しい記憶が最高を更新していく。去年の幾何学模様は最高でした。じつは10年前にサラリーマンを辞めて、海外のフェス周りをしているときに、イギリスのパブでたまたま出会ったのが幾何学模様のメンバーだったんです。そのときに「グラストンベリーと<フジロック>に出たいんだよね」なんて夢を語っていたんです。そして幾何学模様は10年で大きくなって、グラストンベリーと<フジロック>に出演して解散した。そういう物語が、毎年<フジロック>にはあるんですよ。

塩ノ谷 シガーロスも印象に残っているんですけど、ケンドリック・ラマーも強烈でした。土砂降りの雨だったのがライブの最中に止んで。この人、本当にここにいるのかなって思えたくらい。完璧すぎて、夢を見ているっていうか、幻を見ているような感じがして。

様々な準備も<フジロック>の楽しみのひとつ

──<フジロック>を楽しむために、こんなことをしている、あるいはこんなものを持っていくっていうがあれば教えてください。

津田 初めて行く人にありがちなんですけど、新しい靴を履いちゃうんですね。でもこれは絶対にやめて欲しくて、履き慣れた靴で行くこと。<フジロック>はとにかく歩きますから、足元はちゃんとしていないと。靴擦れしたなんて最悪で、ヘッドライナーのライブよりそのことが記憶に残っちゃいますから。

タカノ 足元は大切だって聞いています。防水の靴は早めに買って慣らしておきます。

塩ノ谷 初年度に足を痛めたっていう経験もして、今は<フジロック>には3足用意していきます。一足が行き帰りだけで現地では使わない靴。もう一足が長靴的な防水のもの。そしてもう一足が晴れの日用の歩きやすい軽いスニーカー。

津田 長靴をずっと履いている人も多いけど、晴れちゃった場合には蒸れちゃうんですよね。だから晴れ用と雨用の2足あるのがいい。

東海林 特に電車で行く場合、どの荷物をそぎ落とすのかっていう戦いもあるわけで。靴だけに限らず、レインウェア、帽子、Tシャツ、椅子、テント類…。野外だからアウトドアブランドの軽量のアイテムがいいんだけど、やっぱりいいものとなると値段もそこそこするし。そのバランス。でも何を持っていくのかを悩むのも楽しいのよ。

津田 準備するための買い物している時から<フジロック>は始まっていますから。

塩ノ谷 女性目線だと、足元はどうしても汚れるからボトムスは長いものよりもハーフ丈というか短めの方がいいかなと思います。日焼け止めは身体に塗るタイプで、顔用にはスプレータイプを使い分けます。あとメイクをちゃんと直したい人は、お手洗いの鏡だと砂にまみれてよく見えないので小さな鏡も持っていくのがいいかもしれません。

津田 普段の何倍も歩くことになるから、<フジロック>が近づいてくると、普段は電車を使っているところにも歩いていくとか、目的の2駅前で降りるとか。体力づくりというか、体調を整えていくこともしています。

タカノ 身体も気持ちも最高の状態にしていくっていうことなんですね。

津田 疲れたっていう理由で見逃すことがあったら、やっぱりもったいないじゃないですか。

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──ある程度のスケジュール、タイムテーブルは自分で決めていても、このアーティストを諦めようっていう決断も現場では必須です。

タカノ 見たいアーティストが被っていることも絶対あるわけですからね。

津田 「これは絶対に見た方がいい」とか「あれ見逃したの!?」とか言われるかもしれないけれど、それぞれの人が最終的に選んだライブたちが自分にとって最高のラインナップだと思えばいいし、そう思わせてくれるのも<フジロック>だと思います。

東海林 <フジロック>ではこれを見た自慢だけではなく、見てない自慢もあるから。俺は奥田民生さんしか見なかった年がある(笑)。
津田 初めてのタカノさんにオススメしたいのは、人が少ない初日の午前中に会場を一回りしてみること。このステージとこのステージの移動には15分かかるとか、みんなが遠いって言ってるけど自分的には早足ならこれくらいで行けるなとか。自分の中に<フジロック>会場をインストールする。

タカノ 確かにそれって有りですね。一回りすることで<フジロック>のスケール感が把握できるのかもしれないですね。

タカノシンヤが初<フジロック>でやりたいこと

──タカノさんが<フジロック>でやりたいことっていうのは?

タカノ <フジロック>で友達を作ること。繋がりがない人と話して仲良くなって、次の年も<フジロック>で会うっていう。みなさんが体験しているそれをやりたくて。

津田 ここにいる全員が、結局はそんな<フジロック>友達ですから。

タカノ <フジロック>同窓会的なものってあるじゃないですか。それが羨ましくて。

東海林 面白い人が多いのが<フジロック>だよね。そして<フジロック>が好き、音楽が好きっていう同じ気持ちを持っているから、すぐに打ち解けるし、自然とコミュニケーションも生まれる。

津田 苗場に行ってしまったら、みんな平等なんですよね。知り合いでなくても、みんな緩くつながった仲間のような。

東海林 好きなアーティストが似通ってくる人っていて、そういう人とはだいたい同じ場所で見てるんだよね。「あいつ、また同じライブを見てるな」って。

タカノ このアーティストが好きっていうのは、ある種の自分のアイデンティティみたいなものじゃないですか。それが一致しているのなら、すぐに仲良くなりそうですよね。

塩ノ谷 私も苗場食堂で並んでいるときに友達ができました。ルーキーに出ていたバンドのメンバーだったんですけど。

津田 <フジロック>でしか会わない人はいっぱいいるし、本名がわからない人もいっぱいいる。だけど毎年のように<フジロック>では必ず再会する。

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──<フジロック>では誰とでもハイタッチして、その場を共有できるような雰囲気があるんですよ。

タカノ 実際に「ROAD TO FUJI ROCK」のリスナーさんとも<フジロック>でハイタッチしたいです。自分が<フジロック>で楽しんでいるイメージばかりが、やたら膨らんで来ていますよ(笑)。気になっていることがもうひとつあって、<フジロック>のフェス飯はどうなんですか。

津田 まったく気にしなくていいです。全部が本当に美味いですから。

東海林 「美味しいご飯はどこですか?」って聞いたら、オススメのアーティストと同じようにみんなが教えてくれる。

タカノ 僕はカレーが大好きで。

津田 カレーもいっぱいあるので、3日じゃ食べきれないですよ。

塩ノ谷 <フジロック>に出たいっていうレストランも多いですよね。店主が音楽好きで<フジロック>に出店するのが夢だったみたいな話もよく聞きます。

──3時とか、ちょっと時間をずらして食べるのがいいと思います。ご飯時はかなり混みますから。

タカノ 有力情報をありがとうございます。

津田  100人いれば100通りの楽しみ方があるんです。

東海林 自分のスタイルを見つけるためにも、1年目はいろいろやってみて。

津田 初めて行くっていう人が、めっちゃ羨ましいですよ。タカノさんの<フジロック>物語が今年から始まるわけですから。

東海林 知らない人と仲良くなって、仲良くなった人たちと写真も必ず撮ってよ。

タカノ 撮りますよ。みなさんの話を聞いて、期待がさらに大きくなっています。

Text&Interview by 菊地崇(Festival Echo/フェスおじさん)
Photo by 須古恵

information

【番組情報】

番組名:GRAND MARQUEE

放送局:J-WAVE(81.3FM)

放送日時:月~木 16:00~18:50

ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann
番組SNS:TWITTER @GRANDMARQUEE813
     Instagram grandmarquee813


番組サイト

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