毎回さまざまなゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力・思い出・体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回は、3月に自身初の日本武道館での単独公演『Welcome to the Queendom at 日本武道館』を開催し、名実ともに日本のHIPHOP界の“Queen”として<フジロック>初出演を決めたAwich(エイウィッチ)。

2018年の<フジロック>で、Chaki ZuluのDJ SETにYENTOWNで乗り込んだRED MARQUEEに、Awichが再び降臨。インタビューではこれまでの<フジロック>で体験したエピソードや印象に残っているアーティストの話に始まり、ここまでの道のりを振り返りながら、今年の<フジロック>への想いを聞いた。女王。苗場。降臨。まさかAwichがフジロックに来るとは──ジャンルの壁をぶち壊す力を、今のAwichは持っている。

Interview:Awich

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2018年のRED MARQUEEと、2019年の神秘的な出会い。

━━<フジロック>初出演、おめでとうございます。決定の知らせを聞いたのはいつでしたか? またそのときは率直にどう思いましたか?

たしか今年の頭、日本武道館(3月14日)をやる前ですね。最初にその知らせを聞いたときは、純粋にめちゃくちゃうれしかったです。<フジロック>にはこれまで何度か遊びに行ったし、私自身ああいう大掛かりなフェスに行くのは<フジロック>が初体験だったので、たくさん楽しい思い出があります。ただやっぱり私はプレーヤーだし、「自分もやりたい」「次こそは」と思っていたので、今年やっとだなって感じですね。

━━初めての<フジロック>は、2018年のChaki ZuluさんのDJ SETでYENTOWNのメンバーとステージに上がったときですか?

そうですね。そのときは2日目の深夜にRED MARQUEEでChakiさんがプレイして、YENTOWNのメンバー全員でステージに上がりました。あとで聞いたら、あれはRED MARQUEE史上一番ステージに人が乗ったSHOWだったらしいです。途中でSkrillex(スクリレックス)もステージに上がってきて、盛り上がりすぎてみんな飛び跳ねるし、ChakiさんがSkrillexの曲をかけたらさらにブチ上がり。ただRED MARQUEEのステージって元々そういう想定のステージではないらしくて、ChakiさんのDJブースも動いちゃうからYENTOWNのメンバーが手で押さえて。ステージの骨組みが崩れるぐらいの感じだったけど、スタッフさんもやっぱりロックンロールの人たちだから、「ここまで殻を破ったSHOWをしてくれてこっちもやりがいあるわ」みたいに言ってくれました。ただChakiさんは「これだからもう俺は一生DJしない」って言って、そのときに使っていたヘッドホンを客席に投げてTHE END。Chaki ZuluのDJ人生はそこでまた終わりにしたみたいです。直前の機材トラブルとかのバタバタがあったことも含めて思い出深いし、超楽しかった。

━━あのステージは凄まじい盛り上がりと人口密度で、異様な光景でしたね。2018年に関して、ステージ以外ではどのように過ごしましたか?

YENTOWNのメンバーといろんなとこに行って、記憶が飛ぶぐらい酔っ払って、朝まで寝ないで遊びまくりました。遊園地みたいなところ(アンフェアグランド)で遊んでたら朝日が登って、ちょっと雨が降って虹が出て……「これ夢?」みたいな感じで素敵でしたね。そういうのも含めて<フジロック>の魅力というか、<フジロック>パワーに魅了されたので、そのときのイメージはすごく鮮明に覚えてます。

━━その次の2019年も<フジロック>に行ったそうですね。

はい。私が最近出した“TSUBASA”(feat. Yomi Jah・5月15日に配信リリース)というシングルのプロデュースをしてくれたBIG YUKIが出ていて、YENTOWNのメンバーふたりと、そのときは娘(Yomi Jah)も一緒に行きました。

━━<フジロック>のライブで特に印象に残っているアーティストは?

SIA(2019年・DAY2のヘッドライナー)はカッコ良かったし、ケミカル・ブラザーズ(2019年・DAY1のヘッドライナー)も楽しかったです。振り返るとめちゃくちゃHIPHOPみたいなSHOWは、まだフジロックで見てないかもしれない。

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━━ほかにライブ以外で印象に残っているエピソードはありますか?

SIAを観た帰りに車いすの女性が水溜まりにハマっていたので、「どこまで行きますか?」って声を掛けて送ったことがありました。その人は<フジロック>に15年ぐらい毎年来ていて、「<フジロック>に行くためにがんばってます!」って話を聞きつつ、「石とかに顔が描いてあるのは何?」みたいな質問に答えてもらいながら娘と歩いて。途中で「私も音楽やってるんですよ」って言って、その人に自分の名前とかYouTubeで観られる曲とかを教えながら、最終的には出口ではなくその人が泊まっていた旅館まで一緒に行きました。そこから数年して、私がO-EASTでワンマンライブをするっていうときに突然DMが届いて。それが<フジロック>で会った車いすの女性の友達からで、彼女が数ヵ月前に亡くなったことを教えてくれました。その友達は「彼女はずっとAwichさんと娘さんの話を自分にしていて、だから今回のワンマンは自分が彼女の代わりに行きます」って言ってくれて。

━━鳥肌が立ちました。巡り合わせてくれたのかもしれないですね。

はい。あと<フジロック>へ行ったときに、そのときは冗談かもって思ったけど、娘が「宇宙人が見える」って言ってて。その宇宙人の名前が“タピトゥ”だったんですけど、そのDMが来たときに娘は「タピトゥが導いてくれたんだね」って泣きながら言ってました。タピトゥの語源は、<フジロック>で娘を寝かしつけているときに「I love you」「I love you too」って話してて、「I love you too」をおもしろおかしく“タピトゥタピトゥタピトゥ……”ってずっと言ってたんです。<フジロック>のような神秘的な空間にいると、どこか常識を外して「人生とは?」とか「何のために生きてるのか?」とかを考えさせられるし、そう考えると娘の言うことはもしかしたらすごいのかもしれないなってあとで思って。例えばタピトゥっていう地球の存在を超えた生命体がいて、その生命体が存在するベースが「I love you too」。 もう愛されているのはわかっている前提で、「私も愛してるよ」って愛を返す存在が全部のことを導いてくれている……みたいな。普段の生活の中で言ったら「は?」みたいなことでも、<フジロック>という非日常的な場所で体験すると考えさせられるし、そういうことが許される場所だなって。さらに会場にいる十数万人がそんな気持ちで空間と時間を共有しているっていうことがすごく不思議だし、純粋にすごいなって思います。

裸一貫&猛獣使いのAwichが乗り込む<フジロック>のステージ

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━━Awichさんの近年の道のりを振り返りたくて。YENTOWN加入から約5年、現在の状況を自分ではどう捉えていますか?

ひとつひとつがチャレンジだったし、例えば『8』を作ったときは、「『8』を超えられる作品はもう出せない」と思ってた。ただ毎回そう思いながらも、ここまで乗り越えてきたので。今は『Queendom』っていうアルバムを3月に出して、「最高傑作だ」ってめっちゃ言われる中で「次は何やんの!?」みたいな感じで思ってるけど、これまでもずっと同じ気持ちだったしなって。そもそもYENTOWNだって手の届かない存在だったけど、今はみんなから“姉さん”って言われるようになって、一緒にYENTOWNを動かしていけてるので。何だろう……その瞬間にすごく難しくて偉大に見えたものでも、次の瞬間には何でもないぐらい些細で簡単なことに思えるときがある。そういう自分の心の動きみたいなものを、作品や日記を通して私は振り返ることが出来ているからこそ、手が届かないように見えることも「きっとできるんだろうな」って思えるし、あえてそう思うようにしてます。

━━最高傑作と呼ばれる作品を毎度超え続けているAwichさんに、ファンは「姉さん!!!」ってなっているのかと。

毎回「次はねえだろ」って思います。だけどきっとある。宇宙は無限大だし、そういう広い視野でいられると、まだまだ全然小さいことしか成し遂げてないし、やることは山ほどあるでしょ?って思える。見え方をちょっと変えるだけでインスピレーションは生まれるし、それはやっぱり日記とか、自分の気持ちを記録してきた作品が教えてくれますね。

━━ここまでAwichさんは作品自体に高い評価を得てきたことに加えて、ドラマや映画の主題歌や、ライブでは日本武道館をはじめとするワンマンやフェスなど大きなステージも成し遂げてきました。その道のりは早い段階でイメージできていましたか?

やっぱり一番大きな夢は自分が“愛とエロスの伝道師”になることで、オノ・ヨーコさんのような世界一有名な日本人女性になりたい。その想いをチームで共有してるし、そうなるための目標を逆算的な考え方で設定してます。なのでイメージできていたかと言われればできてたけど、最初のころは具体的なやり方や進め方は見えてなかった。ただ今は私のその想いを信じてくれている人たちが増えてきているし、私も具体的にいろいろ見えてきた。そういうパワーアップの仕方を、ここまでやってきたんだと思います。

━━Awichさんの成し遂げてきたことは、あくまで最初から“女王の玉座”は用意されていて、あとは座るだけだった──そんな印象を受けます。

たしかに。用意されていたような気はします。ただこれまでは、「本当に座れるの? 座りたいの?」みたいな葛藤もありました。座ることで伴う責任もあるし、スポットライトが当てられるということでもあるから。それにただキレイだから、カワイイから、歌が上手いからQueenになれるわけでもない。人のことを考えるとか、シーン全体のことを考えるとかっていう任務も必ず伴うと思うので、「それを本当にお前はやれんの?」って自分に問いかけて、「いや自分はまだちょっとわかんないっす」ってときも正直あった。ただし『Queendom』を出すころには、「もうごまかさなくてもいいんじゃん? そろそろ時間です」って自分の中で思えるようになった。しっかり任務を背負ってやればいい、もう怖くない……そう思って(女王の玉座に)座りました。

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━━Awichさんはこれまで曲の中で強烈なパンチラインをいくつも残してきましたが、ここにきて『Shook Shook』の「まさか女が来るとは」のように、多くの人が「まさかAwichが<フジロック>に来るとは」と思っているはずですよ。

そう思っていてください。現状で決まってる内容だと、ステージはRED MARQUEE。演出はdutch_tokyo(ダッチ トーキョー)と一緒にステージを考えてます。光とかレーザーとかを使える環境だとめちゃくちゃ壮大にできるけど、そうじゃないときって自分が主体にならないといけない。それは私にとって初心に戻る感覚でもあります。最近の大きなステージは、コントロールされた演出の中で自分がバチッと合わせてキメるみたいなものをやってきた。ただ<フジロック>はそうじゃない想定をしてるので、自分の動きとか感情とか表情とかで、基本的には勝負しようと思ってます。それに私は元々そういうのが好きで、裸一貫でやっていたときのライブはもうできませんと言うつもりもまったくない。今でも沖縄で外国人だけのクラブでDJ止めて、「Hey!Hey!Hey! My name is Awich!」みたいな感じでブーイングされてもやるので。世界に行くためには日本っていう小さな場所で浸っている場合じゃないという気持ちもあるので、初見の人が多くても、いつもとは違う演出の中でパフォーマンスできる今回の<フジロック>はむしろありがたい。

━━2018年とはまた違う熱狂のステージが観られそうでワクワクします。

2018年のChakiさんのDJで初めて立たせてもらった<フジロック>のステージがRED MARQUEEですし、「ここに自分の力で来る」ってずっと思ってた。今度は私がみんなを率いてステージに上がることで、ストーリーが一周するので感慨深いですね。あと今回はバンドセットで考えていて、それは何度も一緒にやってるSOIL(& “PIMP” SESSIONS)のチーム。あの“怪獣たち”を召喚するので、私は猛獣使いです。なのでヒップホップとかラップのジャンルの人だけが楽しめるものじゃなくて、音楽っていうアートフォームで、誰が観ても「何これ!?」って楽しめるステージにしたいと思ってます。

━━セットリストはこれまでのAwichさんの集大成的な曲で考えていますか?

そうですね。ただ最近バンドセットはなかったので、今はあまりやってない曲とかも考えてはいます。あとはdutchくんとSOILが一緒のチームは今までなかったので、その化学反応もきっと面白い。それも含めて楽しみにしててください。

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━━あとAwichさんは日本武道館のときのTOMO KOIZUMIのように衣装も注目されていますが、その点も詰めているところですか?

まあでも私の衣装は大体決まってて、ボディコンです。いろいろな衣装を着てみた時期もあったけど、やっぱり衣装に気を取られたくないし、やりにくさを感じちゃうと気持ちが入らないので、そこは今回も大きく変えることはないと思います。もちろんいいチームについてもらってるし、最近では私が知らなかったブランドとか、デザイナーの人とかを紹介してもらって視野は広がりました。でもやっぱり裸一貫で勝負するのが好きだし、私が衣装を選ぶと、たぶん同じような服しか着ない。こんなこと言ったらスタイリストに怒られちゃうけど、服は着るものじゃなくて、脱ぐものだと思ってるので。あとチームが大きくなればなるほど、衣装や演出に負けないパフォーマンスをすることを心掛けてます。

━━流石です。今年は日本武道館から<フジロック>、ほかにも大きなステージが決まっていて、勢いはますます加速していきそうですね。

今年は大きなフェスの波に乗ろうかなと。その中で<フジロック>は、私を観に来てない人たちがたくさんいるってことじゃないですか? そういうのは好きなので、私。例えば全員が自分のことを好きな何千人・何万人を集めて、そういうシチュエーションの中でやるのは本当に幸せだし、ありがたいと思うけど、そこだけに留まりたくはない。その意味で広げていくことがフェスの醍醐味だし、むしろ今回は初めて観る人が多くいてほしい。

━━本当に楽しみでしかないです。Awichさんに今後の目標を最後に聞こうかと思いましたが、置かれた状況下で常にベストを超えてきた方にそれを聞くのはきっと野暮ですね。今回の<フジロック>はもちろん娘さんも一緒に行きますか?

はい、一緒に行きたい。まだ言ってないですけど、「<フジロック>に出るよ」って言ったら、「絶対に行く!」って言うと思います。それに「友達も連れて行きたい!」って言いそう。友達といった方が絶対面白いし、何人かと一緒に行って彼女たちにとっての思い出ができたら、<フジロック>の次世代のオーディエンスがまた生まれますね。

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text&interview by ラスカル(NaNo.works)
Photo by 横山マサト

フジロックにおける新型コロナウイルス感染防止対策

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<FUJI ROCK FESTIVAL’22>を開催するにあたり、フジロックに携わる全ての方々の安全を確保するため以下のガイドラインを定め、徹底した対策を講じてまいります。チケットご購入前に、必ず以下に記載の内容をご確認いただき、ご理解の上、ご来場いただけますようお願い致します。FRF’22事務局より

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