——フジロッカーは本当に優しいですよね。でも、どうしてそこまでして3日間参加したかったのですか?

去年、一昨年と、参加できたのが1日だけで。1日だけでもいいのかもしれないけれど、本当の<フジロック>を知るにはやっぱり3日間行きたいなっていう気持ちでいたんです。周りの人とかを見ても3日間参加することが本当の意味で<フジロック>を噛みしめられる、味わえる気がしたんです。ただ、不安もすごいあった。台風も来るかもっていう年だったじゃないですか。だから「無理はしないようにしよう」と家族で話し合っていました。

——最も不安だったのは?

天候です。ニューアコでテント泊したときにも台風が来て、雨がすごくて。本当に大変だったその経験もあったので天候が一番不安でした。でも、「フジロック=雨」とか、台風が来ちゃったりするイメージがあったので、その心構えもしながら、準備もしながら、でも無理しないでいこうって。夫が無理をしない派なんだと思うんですよ。私はどっちかっていうと「行きたい」っていう気持ちがグッ、グッと前に出ちゃって、たまに歯止めがきかなくなるときがあるんですけど(笑)、そこを夫が冷静に「無理しないで帰ろうか」と言ってくれる人なのでバランスが取れてたのかも。

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——本番中はどんな風に過ごされたんですか?

金曜はモンパチ(MONGOL800)が始まる前には苗場に着いていたかったんですけど間に合わなくて。とにかく私、ハナレグミが観たかったんですよ。あと、名も知らず観ていたサカナクションの前の外タレがすっごい良くて。

——YEARS & YEARS?

それです! 後でCDを買っていっぱい聴きました。あとは、サカナクションとかも観ながら一人でビール飲みながらゆっくり過ごして。おひとり様で寂しいなっていう気持ちもありましたが、一人で盛り上がり、ゆっくり過ごしました。いいライブのときって知らない人同士でも盛り上がって触れ合うじゃないですけど、目が合ってにこって笑うとかの流れなら話しやすかったりもしますが、一人で楽しむのも全然悪くないし、後でSNSなどで会話できるのも楽しめますし。子どもと一緒に観るのも好きなんですけど、一人で少し楽しみながら観るというのも必要かなと思っちゃうほうなので。

——同感です。一人の時間は誰にでも必要で、特に育児中の母親には必要だと思うんですよね。基本的に自分が二の次の毎日の生活から、たった1日でも<フジロック>のような自分を解放できる好きな空間へ行き、一人で思いっきり楽しむ時間を持つのは大切かと。

ああ、それはすごい感じますね。一人はとにかく楽だし自由に楽しめる。私の場合は子どもを誰かがみてくれたら出来たことで。そこが大丈夫な上で大人が楽しむのはいいかなって思っているので。

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——2日目、土曜はどのように過ごしました?

金曜は私が楽しませてもらったので、土曜は夫を一人で楽しませてあげたかったこともあり、1バンドくらいはみんなで観ましたが「一人で観てきていいよ」と言って夫とは別行動しました。お昼頃には子どもたちが眠くなったりして、私は子どもたちと何度かテントに戻ったりして。でも、もしライブを自由に観られた金曜がなかったら、ライブをもっと無理してでも観たいという欲が出たかもしれないけど、もうすでに満足感があったので。

——一人金曜を過ごしたことで、それほどまでにリフレッシュできた?

もう、忘れられないですね。夫は子どもと過ごす<フジロック>の方がいい、子ども中心でいいという考えが強いので口ではそう言っていますが、実際は自分の観たいアーティストもなかなか観られずに「はあ」となっている姿を何度も見ているんです。そうならば、金曜は私が楽しませてもらうから土曜は楽しんでっていう風にしたかった。でも夫は「自分一人だけ楽しんでいるのは子どもに申し訳ない」って思っちゃうみたいで。

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——こう在りたいという思いと実際の気持ちって違いますよね。特に<フジロック>のような「好き」という感情が絡むものでの自制はとても難しい。でもその違いを受け入れて「みんながハッピーになるためにはどうしよう?」と行動を起こしたYukkaさんも、それを受け入れた旦那さんもすてきですね。そして土曜は<フジロック>史上最大の影響をもたらした台風がやってきました。

雨が降りそうだなっていう段階で、私と子どもたちはテントに戻りました。夫もその頃にはもう戻ってきて。

——結構早い段階ですよね? 16時頃でしょうか。

そうだったと思います。土曜の夕方くらいから雨が大変で、夜中、明け方も風がすごくて。日曜の朝になった段階でも天気がどうなるかが読めなくて、夫と相談して「危ないかもしれないから風が止んだときにテントをしまって帰ろう」と。だから日曜はライブ観れてないんです。

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——潔い決断でしたね。無事に一晩は過ごせましたか?

雨はまだ平気だったんですけど、風はテントの大敵だと本当に感じて。夫がよかれと思って背の高いテントを買ったせいで風にもっていかれるという(笑)。ワンポールテントとかだと高さがあっても紐で押さえられるので大丈夫らしいんですけど、うちのテントは紐が切れちゃったり、ペグがどこかへいっちゃったりして。

——ペグは強度のあるものに変えていきましたか?

そこも反省点なんですけど、もともと付属されていたものを使ったので。あと、予備があったら良かったなとか、テント選びも間違ってしまったなと反省。もうちょっと風の抵抗がない背の低いものにしたいなと。でも、怪我もなく、無事生きて帰ってはこられました(笑)。

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——ご無事で何よりでした。周りの様子はどうでした?

つぶれてたりはなかったですけど、周りのテントで「ここにあったのにない」というのは結構あったので、皆さん夜中に退散したり車に移ったりしていたのかなぁ。私たちも避難したいくらいでしたが、避難場所があったというのも後々知ったんですよ。

——テントがなくなってしまって困って本部へ行った人が案内されたそうです。現地にいてもテント内にいたら外の状況はなかなか分からないですよね。

全然分からなかったです。でも、私は眠れなかったんですが子どもたちは爆睡していたのと、もしテントをしまえずに離れてしまった場合、私たちのテントが吹っ飛んで他の人に迷惑がかかっちゃうんじゃないかと感じて朝までテントの中にいたほうがいいかなと。明け方、<フジロック>の見回りのスタッフの方がうちのテントに引っかかってファスナーが開いちゃって、それを伝えにきてくれたんですけど「大丈夫ですか?」とかは特になくて(笑)。「フジロックは自分である程度やらなきゃな、自己責任だな」とよくよく感じました。

——(笑)。お子さんは怖がったりはしませんでしたか?

子どもたちはあんな嵐の中でもよく寝ていたし、片付けるときもカッパ着て、雨とか風とかすごいのに子どもたちってタフなのか、めっちゃ笑ってるんですよ(笑)。たぶん怖さを知らないからだとは思うんですけど、私と夫が必死で片付けてるとき、「わー、飛ばされちゃう〜!」って言いながら笑ってて。荷物もたくさんあったのでそれをみんなで持って車に戻るときも、子どもたちは本当に元気で歌い出したりして。そこでもう「またフジロック行きたいね」って言ってて、「おぉ、この雨と風の中でそう言ってくれるのか! ありがとう」って思いました。

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——日頃の子育ての賜でしょうけど、そうした子どもの無垢な部分に触れられて癒やされるのは、子連れフジロックを頑張ったから見える景色のような気がしますが……、キャンプはもう懲り懲りでしょうか?

いえ。今、キャンプ力が高まっていてキャンプしたいんです! <フジロック>の時は大変でしたけど、もっといろいろ工夫できたかなと思うし、日が経つとやっぱり泊まりで行きたいなって。もう、子どもたちも「テント=フジロック」なんですよ。<フジロック>の思い出がよく残ってるんだなって感じますし、子どもが嫌がってないっていうのがいいですね。

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——去年の台風を経験して、これだけは気をつけようって思っていることは?

テントとペグ選びをしっかりすること。特にテントは高さのないもの。高さのあるテントはもう<フジロック>で使いたくないです(笑)。子どもと大人の雨対策。レインウェアや長靴など、ちゃんと信頼できるメーカーのものを準備することだと思います。

——<フジロック>に子連れで参加する上で心がけていること、大切だと思うことはありますか?

子どもを第一に。これは最初から、これからもずっと思いながらその中で大人も工夫して楽しむようにしていきたいです。あと、準備は大事ですね。長男と二人で行ったとき、キッズランドであるお母さんが「オムツここで売ってますか? 近くで売ってるところ知りませんか?」みたいなことをスタッフの方に言っていて。予備で持ってこなかったのか分からないんですけど、たまたまその会話を聞いていたんで予備のオムツをあげたんです。スタッフの方も嫌な顔ひとつせず対応していて、私にはお礼を言ってくださって、すごいなぁって思いましたけど、もっと個人個人が準備したほうがいいんじゃないのかなって。こどもフジロックのような準備の参考例があると「自分のうちならこうかな」と考えられますし、怪我や虫刺されがすごい心配だったのでポイズンリムーバーなどを入れた応急セットを毎回しっかりリュックに入れてます。

——今年も3日間参加ですか?

夫の休みが合わなそうなので、私と子ども二人連れて行って日帰りでみようかなと。金曜に参戦する予定です。

——観たいアーティストはいますか?

金曜のエルレ(ELLEGARDEN)観たいなぁって。でも、目当てを作っちゃうと観られなかったときショックが大きいので、子どもと一緒ならその場の雰囲気を楽しんでお目当てを考えないようにしたいなと思ってます。

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——<フジロック>の場合は、ふとした音楽との出会いもありますしね。

そうですね。「お目当を作らず、ふらーっと見たらめちゃめちゃよかった!」っていうこともありますし、そういった偶然の出会いも楽しみたいですね。ただ、子どもたちの場合はキッズランドがすごすぎて「音楽を聴く」というよりも「キッズランドで遊ぶ」という感じなので(笑)。私が観たいライブに一緒に来て、のってくれたりもしましたけど段々ですかね。段々にキッズランドを卒業して、他でも楽しめるようになれるのかなと(笑)。

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——最後にお訊きします<フジロック>は神宮家にとってどんな存在ですか?

子どもも親も成長できる場所ですかね。いろいろ大変なこともあるけど楽しいこともあるし、毎年行けばお互いの、特に子どもの成長が見える気がします。今年はどんな成長が見られるかワクワクしています。

photo by 神宮家
text & interview by 早乙女‘dorami’ゆうこ

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