【TOSHI-LOW】BRAHMANのフロントマンとして、また、もうひとつのバンド、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのヴォーカル/ギターとして音楽活動をしている、フジロックではお馴染みの日本のミュージシャンだ。今年2月には「八面玲瓏」と題し、BRAHMANの歴史とその八角形の形状を見事に融合させ、独特な表現で魅せた日本武道館公演が記憶に新しい。

その強面で骨太なイメージに隠れがちだが、彼は被災地支援に力を注ぎ、仲間を尊び、自らも音楽フェス「New Acoustic Camp」を手がける二児の父親でもある。そこで今回は、フジロックをよく知るTOSHI-LOWに、フジロックに子連れで参加することについて話を訊いた。

Interview:TOSHI-LOW(BRAHMAN)

01-2 【こどもフジロック】フジロックは父親になるいいチャンス - TOSHI-LOW(BRAHMAN)

子どもをフジロックに連れて行くこと、どう思う?

いいチャンスですよね。音楽通じて、自然も見れて、その中でみんなで「場」を作っていくっていうのは、生きていく中でとても大事なことだと思っている。だから、自分たちもニューアコを通じてキャンプに特化した部分でやってるわけで。自分もフジロックへ子どもを連れて行ったことがある。だから、その大変さはむちゃむちゃわかる。超ちっちゃいときからです。まだ歩き始めた頃から。それでも俺なんかは、ちょっとアーティスト扱いされるからまだ楽じゃないですか。お客さんとして来るのは大変だと思う。今考えれば、もしかしたら自分が不便だったことを通して、ニューアコやるときにすごく勉強にもなったんじゃないかなあって。真ん中に子どもが遊べるエリアがあるじゃないですか。いいすよね、ああいう感じは。もっと大きかったらどうだろうかとか、これいいなあってそんとき見てただろうし。
フジロックは大人中心だけど、もうちょっと子どもの目線で、プレイパークだけがあるようなフェスがあったらどうかなっていうのが発想にはあったんですよね、俺たちには。でもフジロックだって、子どもの様子をちゃんと見ながら全部まわることは可能だと思ってるし、親と一緒に夜中まで歩っていてもいいと思うし。毎日じゃねえんだから。たかが3日だよって。

子どもをフジロックに連れて行った理由は?

自分が出るし、預ける人もいなかったし。

子どもたちがフジロックのカルチャーに触れること、どう思う?

なんか悪いことあるんすか? 大人次第だなあって思うけど。子どもがいるのを冷たくみる大人が多いところに行ったら、子どもだってつまんないだろうし。でもそういう人ばっかじゃないと思うんですよね、フジロックなんか特に。知らない人でも遊んでくれたりしてさ。「知らない人と遊んじゃダメよ」じゃない、知らなくても、言葉が通じなくても遊んでくれたり、あやしてくれたりすることが起きやすい場所だから。
俺は子どもの頃、大人の集まりが好きだったんですよ。大人同士で大人たちがわっちゃわっちゃやってる横で、たまに聞き耳立てて「喧嘩始まった!」とか、そういうのが大好きでね(笑)。それで自分も大人になっていくっすよ。で、大人になってみて、「あのときこんな感じだったんだろうな」ってわかってくるし。そうやって大人の文化に触れていった方が、子どもながらにいろいろ感じるし。子どもが逆に大人の世界を知るためにもいいんじゃない?

普段、子どもに「音育」してますか?

「音育」なんて聞いたことないけど、ライブも連れて行ってるし、音楽が溢れるところで育っているわけだから、それは音育なんだと思う。下の子は年長さんで「満月の夕」をフルで歌える。ということは万が一震災が起きたとき、彼は何をすべきかをわかるだろうし、俺はそれを教えていることになるのか。あとね、「満月の夕」は子どもがよく歌うって聞くんですよ。民謡とか童謡とかに近いと子どもの心にすっと入るのかもね。やなせたかし作詞の「手のひらを太陽に」とかもそうだけど、彼等の未来に対してとてもいい唄だと思う。ミミズとかオケラだって生きてるんだよって唄なんだから、肌の色が違うからとか、隣の国だからって差別しようとは思わないんじゃないかな。軍歌を練り込まれるよりいいよ(笑)。

でもね、子どもがミュージシャンになりたいって言ったら、苦労も知ってるし、ミュージシャンなんか一番やだぜって思うんだよね。最高だと思ったものをぼろっかすに言われて、ボロボロになって死んでいくんだぜって。どんな最高なミュージシャンだってぼろかすに言われてる。自分はそもそも最高でも何でもないただ音楽が好きってだけの鈍才のミュージシャンだからどんな批判でも奮発材に変えて耐えられるけど、やっぱり自分の子どもがボロかすに言われるのは耐えられないと思うんすよね。考えただけで心が苦しくなる。でも、それを敢えて影から見つめるのも親の役目だってわかっているけどさ……。

02-2 【こどもフジロック】フジロックは父親になるいいチャンス - TOSHI-LOW(BRAHMAN)

父親視点でフジロックを見ると、どう思う?

父親視点? 何これ、たまごとかひよこクラブの取材?(笑)難しいなあ。でも……テント張ってくれたことを大人になって覚えているとか、自分の知らない音楽を見ろって言われて、そんときはすごく嫌だったけど帰ってきてもまだ頭の中にそのメロディが残っててCD買ったりとか、高学年ぐらいなら会場で別々のライブを聴きに、お互い見たいのを見てから合流するっていうのもいいかもしれない。3日間も子どもと触れ合えるなんて、俺だってなかなかできないもんね。

我が子との関係は?

とにかく「他人」だと思わなくちゃって思ってるんですよ。自分のものだと思ってると、やっぱり腹立つっすよね。「こう教えてるのになんでこうなるの?」って。でも俺が子どもなら、「おまえの所有物じゃねえよ」って、「俺には俺の考え方があるんだよ」っていうのがある。だから、子どもに自分の考えと反対のことを言われても、それは尊重しなくちゃいけない。冷たい意味ではなくて、他の人として尊重するっていうことを律しないとぶれるんですよ、俺も。とはいえ、最後の指示は大人が責任を持って出すべきだと思うけど、それに至る過程では自分はどう思うかってことに関して、考え自体は潰さないようにしないと。でも、うちの場合は俺より子どもの方が分別がある。「いいじゃん、やっちゃえ」って俺が言うと「僕はそういうのじゃないので」ってよく言われる(笑)。親がめちゃくちゃだと、子どもはしっかりするみたい。

ただ、親父が親父らしく生きているかっていうことはすごく大事だと思う。ただ単に会社のため、家庭のためっていうのはあんまりこう、ぐっとくるもんは俺は少ない気がする。ステージにいるのも俺。普段家にいるときはダメ親父でもこんなもんじゃねえのって思えばいいし(笑)。裏も表も見せる。それを見て考えればいい。子どもって勝手に育つもんだしね。まあ俺も40過ぎてからこう答えられるようになっただけで、10年前だったら、こういう取材がきても「あ、はい」「え、なんも」「子ども? 関係ねえっす」みたいに答えてたと思うし、ちょっと前までは逆なこと言ってたかもしれない。だって、父親って、父親にならないとなれないものだからさ。母親って生んだ瞬間に母親になれるじゃないですか。でも父親って、子どもができても嫁に全部任せて毎日パチンコ行って呑み歩いていたら、それはただ種を落としただけで、本当の意味での父親ではないと思う。

だから、いいも悪いも、好かれるか嫌われるかも別として、子どもと一緒にいる時間を増やして、親父と過ごした思い出がしっかり子どもの中に残るくらい一緒に過ごせれば、フジロックは父親になるチャンスですよ。だって3日間一緒にいるんですもん。もちろんフジロックでも、正しい人ばっかりがいるわけじゃないし、最低限の気遣いはしなきゃいけないけど、一般の中でそんなことするよりは安心感がある。親が目を離すなとか言われればそれまでだけど、自分がこどもの時に親とはぐれた経験のない人なんていないでしょう? 知らない人としゃべっちゃダメって危機管理の仕方も分かるけどさ。ちょいと見失って困ってる子どもがいたら、腹減ったならもち豚食えよって買って、よし、一緒にパパ探すかってやってもらえる気がするんだよ、フジロックなら。

03-2 【こどもフジロック】フジロックは父親になるいいチャンス - TOSHI-LOW(BRAHMAN)

04-1 【こどもフジロック】フジロックは父親になるいいチャンス - TOSHI-LOW(BRAHMAN)

05-1 【こどもフジロック】フジロックは父親になるいいチャンス - TOSHI-LOW(BRAHMAN)

06-1 【こどもフジロック】フジロックは父親になるいいチャンス - TOSHI-LOW(BRAHMAN)

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interview by菊地崇
photo by 横山マサト
text by 早乙女‘dorami’ゆうこ