「ロックってカッコつけることなんだなって。そういう姿勢を貫いているからこそ、「ディランは何をやるんだろう?」って思うわけじゃないですか。それってすごいことですよ。」

——今年はDJとして<フジロック>に出演が決まったわけですが、なんでもSUGIURUMNさんからお誘いがあったそうですね。どんな経緯があったんですか?

経緯なんて何もないですよ(笑)。2ヶ月くらい前かな、急に電話がきて(※取材日は6月末)。「出てよー」って。いつもそういう感じなんです。

——お二人は旧知の間柄ですもんね。

そうそう。「え、DJで!?」とは思ったけど、それも新鮮だからいいかなって。DJで出るということは練習もしなくていいし、機材とかを持っていく必要もないし、今まで以上に出演者とお客さんの間のグレーゾーンというか(笑)。

——ははは(笑)。

<フジロック>は自分たちにとっても晴れの舞台だし、これまでは一生懸命練習して、本番前に打ち合わせて……と色んな準備をしてきたけど、今回はそういうのもないし。ほとんど遊びに行くような感じですよね。

——改めての質問ですけど、SUGIURUMNさんとの交流はいつ頃から始まったんですか?

出会ったのは90年代の始めくらい。杉浦くんがElectric Glass Balloonでデビューした頃で、歳はひとつしか変わらないんだけど、当時からずっと先輩って感じですね。その後はレーベルも一緒になったので、プロデュースやリミックスをしてもらったり、音楽的にも関わってもらっています。

——さらに、この日のGAN-BAN SQUARE-GANBAN NIGHT-には真鍋⼤度さんもDJで出演されるんですよね。

真鍋くんとは共通の友人がいて、その二人に自分の曲のバックトラックを作ってもらったことがあるんですよ。10年くらい前かな。彼は当時から訳がわからない人で、自分でシンセのプログラミングをやったり、ライブで顔に電極をつけて、その音を演奏に組み込んだりしていて。それで「真鍋くんの肩書きって何なんですか?」と訊いてみたら、「ヒップホップのDJです」と言われたんですよね。そうなんだーって。

——真鍋さんは富士電子瓦版で最近行なったインタビューでも、「映像にはあまり思い⼊れがなくて、⾳楽の⽅がこだわりがある⼈間なんだと思います」と仰ってました。

そうそう、面白いですよね。

——そんな二人と一緒に出演するわけですが、当日は曽我部さんが歌うプランもあると聞きました。

杉浦くんがDJしているときに僕がボーカルをやった曲をかけて、そこで僕が歌うことになりそう。そういうコラボの話はありますね。

——ご自身のDJはどんなものになりそうでしょうか?

まだ何も考えてないです。でもDJって、みんなでワイワイ楽しめる曲をかけるしかないから。

——サニーデイがここ1、2年で発表した『Popcorn Ballads』や『the CITY』は、現行のヒップホップも意識したモードになっていましたよね。DJとしての選曲となると、そことはまた違ったものになりそう?

そうですね。アメリカのヒップホップはすごく好きだけど、DJとしてはリンクしないんじゃないかな。今回はそれよりも、30〜40代の人たちが青春時代に聴いてきた音楽をかけるのがいいのかなって。40代にもなるとクラブとか行かなくなるから、そういう人たちが若い頃に踊っていた曲をかけるのがいいんだと思う。自分も好きだし、みんなも好きでしょって曲をね。

——ご自分の曲をかける予定は?

どうだろう。可能性はあるけどまだわからないですね。

——“FUCK YOU音頭”なんて、真夜中の苗場でかかったら相当盛り上がりそうですけど。

あー、いいかもしれない(笑)。

03-5 ソロでバンドで何度も出演してきた曽我部恵一が、改めてフジロックの魅力と(今年はなんと!)DJ出演の知られざる経緯と意気込みを語る#fujirock

——DJといえば、最近どんなレコードを買いました?

アナログだと、灰野敬二さんのファースト(1981年作『わたしだけ?』)ですね。中古だと1〜2万円くらいするから、買おうかずっと迷ってたんですけど、最近になって灰野さんが望む形で再発されたんですよ。これは買うしかないなって。

——今もレコードはよく買うんですか?

毎日買いますね(笑)。最近買ったのだと23スキドゥーもよかった。もともとポップ・グループやスロッビング・グリッスルみたいな辺りは好きなんですけど、23スキドゥーはガムランっぽい音が入っていたりして、そこがいいんですよ。

——カッコイイですよね、エスノ・ファンクって感じで。

カニエ・ウェスト(Kanye West)やナズ(Nas)の新作も、公式サイトからアナログを注文するんですけど、それが届く頃にはストリーミングで散々聴いているので「とりあえず持っている」という感じになっちゃう。でも好きなのは全部フィジカルで買ってます。

——話が逸れましたが、今年の<フジロック>のラインナップでは誰が気になります?

ケンドリック・ラマーはライブがすごいですよね。カニエやナズに比べたらそこまで好きってわけじゃないけど、野球でいったらイチローみたいな人じゃないですか。

——たしかに(笑)。

ほかには……(ラインナップを見ながら)スクリレックスやGLIM SPANKYも出るんだ。ダーティー・プロジェクターズ(Dirty Projectors)も観てみたいし、あとはやっぱりボブ・ディランがどんなライブをするのかは気になります。

——ディランのライブをご覧になったことは?

あります。2014年にもZepp DiverCity TOKYOで観ましたが、素晴らしかったです。

——どのあたりが素晴らしかったのでしょう?

とりあえず会場に着いて、(開演まで)ディランが出てくるのを待つじゃないですか。そのあいだ、ずっと無音なんですよ。その前に来日したときは(2010年)自分で選曲したアメリカーナっぽい凝った音楽が流れていたのに、このときはBGMなし。そこでまず一発食らいますよね。

——ヤバイですね!

そこから客電が落ちて、真っ暗になったあと照明がつくと、バンドメンバーがずらっと並んでいるんですよ。向こうのカントリー・シンガーが着るような、刺繍が入ったスーツをみんな着ていて。で、バンっていきなり演奏が始まるんですよ。それでまた喰らうという。

——たまらないですね。

そのあとも一切喋らないし、知ってる曲もやらないし。しかも、(演奏を始めるときの)カウントがないんですよね。どの曲も、ドラムのフィルとか楽器きっかけで入るんです。そのうえ、「お前ら何しにきたの?」みたいな顔でずっと演奏しているんですよ。カッコつけてるなーって、ことごとく(笑)。

——微塵も媚びてないってことですよね。

そう。さっきのマイブラじゃないけど、ロックってカッコつけることなんだなって。そういう姿勢を貫いているからこそ、「ディランは何をやるんだろう?」って思わせてくれるわけじゃないですか。それってすごいことですよ。

——俄然見たくなりました! 最後に、<フジロック>出演の意気込みを聞かせてください。

まあ、さっきも話したように今回は気持ちが楽ですね。もちろん、楽しませなきゃという思いは絶対あるけど、自分自身も楽しもうかなと。みんなで楽しく遊びましょう。

04-4 ソロでバンドで何度も出演してきた曽我部恵一が、改めてフジロックの魅力と(今年はなんと!)DJ出演の知られざる経緯と意気込みを語る#fujirock

text&interview by Toshiya Oguma
photo by 大石隼土

GAN-BAN SQUARE

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