家族の数だけそれぞれのスタイルがあるように、子連れフジロック・スタイルも様々でしょう。
この「子連れフジロッカーズ・インタビュー」では、子どもを連れてフェスに参加する人がその時の自分には何が必要かを最終確認していただけるような参考例を集め、フェス参加ファミリーのケース・スタディとしてアーカイブしていきたいと考えています。
第6回は、ほぼ毎年フジロックに参加している夏目家にお話をお訊きしました。前回の日本の南・鹿児島から参加した生重家とは逆の、日本の北・北海道から参加しているファミリーです。
今回は、第1回目のフジロックから出産期2回を除いて参加し続けている元Fujirockers.orgライターの母と、会社員の父、そして10歳にして今年で10回目の参加となる小学5年生の長女、小学1年生の長男、3歳の次女の5人家族。フジロックをよく知る軽快で潔い母の言葉が満載です。
■夏目家プロフィール(北海道札幌市在住・移動手段/飛行機、バス)
父(フジロック参加歴:12回目/42歳/会社員)
母(20回目(2007,2015を除く全回)/42歳/パート保育士)
長女(11回目/10歳・小学5年生)
長男(6回目/6歳・小学1年生)
次女(2回目/3歳)
■夏目家の場合〜北海道から苗場へ〜
フジロックへの参加歴は?
97年の1回目から参加していて、子どもが生まれてからは家族で参加してます。行かなかったのは、長女がお腹にいた臨月の時と次女が生まれてすぐの2回だけです。長男を妊娠していたときは8ヶ月で行って、次女のときは生後3ヶ月ではとさすがに諦めて。
1回目へ行った動機は?
大学の軽音部にいたんですけど、そこで「こんなすごいのあるらしいよ」ってみんなが騒いでいたので混ぜてもらって行ったんです。初日は大変なことになって、翌朝起きたら二日目中止で。でも、そのとき一緒に行った人が四国出身で台風慣れしていた人だったので「台風来るから長靴買え、合羽買え」って言われて必要な装備をし、トイレットペーパーもなくなるからビニールに入れて持って行けとか。普段すごくお洒落な格好しているのに「それでもここでは身を守るべきだ」って言われて、超ダッサい紺色の長靴持って行って。それでも寒くて大変だったんですけど。それが97年の思い出です。行った人ならわかるすごい光景、あれは一生忘れないですよね(笑)?
ほんとに(笑)。しかし驚きですね。初回からそこまでの準備をして行っていた人に初めて会ったかもしれません。私はヒールに半袖で、何も持っていませんでした。
そういう人たちを横目でみながら、ちょっとだけ優越感みたいな(笑)。そのときのことはオルグにインタビューされたことがあります。もう記事は残ってないと思いますけど、当時その記事を読んだ大将が興味を持ってくれたみたいで「最初からこんなやついたんか?!」みたいな(笑)。
オルグ(fujirockers.org/FUJI ROCK FESTIVAL 公式ファンサイト)で活動されていたのはいつ頃ですか?
2002年から2005年くらいの3〜4年です。オルグに入って何年目かで結婚して、子どもができたあたりで抜けて。オルグは完全にやりたいですっていう有志でやっているので本業が別にある人も多く、私はwebまわりで何かを手伝いたいと思っていて。もともとweb系の仕事をやっていたんですけど、主人の転勤で札幌に引っ越してきたんです。
今は札幌に?
はい、5年目になります。進学と共に埼玉に行き、その後は東京、埼玉に居たのでフジには関東から行っていました。だから札幌からは3回です。
独身時代やオルグ時代のお話もお訊きしたいところですが、今回は北海道からのファミリー参加部分を中心に。まず、ご主人は夏目さんと出逢う前からフジロックに参加していたんですか?
結婚する前までは、ライブは行っていたけどフジロックまでは行こうとしないような感じで、結婚してからも旦那とは行かずに友達と行くことがほとんどで。だから夫婦フジロックは1回あったかなあ? くらい。でも1回行ってフェスが面白いっていうのがわかったみたいで、それからは、頂とか朝霧とか、こっちに来てからはライジングも行っていて。もともと音楽好きだし、お酒も美味しいものも好きだし、フェスが好きになったんでしょうね。多分、その代表格であるフジロックには行きたいんじゃないですかね。それに子どもと行くフジロックが面白いみたいで。
夫婦にその考えがないと、毎年北海道から来ようとは思えないですよね。
大変さしかないので、基本的には。海外旅行並にお金もかかりますし。でも、大学時代の友人が子どもを早い段階で産んで、子どもが3歳のときからフジロックに連れて来てたんですよ。その子は今、高校2年か、3年になるんですけど、まだプライオリティテントとかもない時代にそういう強者がいたので、それを見ていて子どもと来れたら楽しそうって、音楽や美味しいものを子どもと楽しめたら良いなって。子どもできたら連れて行くぞって。
近くにいい見本があったんですね。
「あ、行けるんだ」ってわかったっていうか。あと、苗プリならばと。私、これだけ行っているのに苗プリしか泊まったことのない超へたれなんで。テントしかないよって言われたら多分フジロック行かないってくらい(笑)。
でも真面目な話、お金で解決できることはする、安全と安心を買うってことですよね?
ほんと、そうです。やっぱり安心感がある。小っちゃい子どもがいたら特に。
札幌を出発して現地につくまでの移動経路は?
家の近くから空港まで直通のバスがあるんですよ。6時のバスに乗り、千歳空港8時発の飛行機で羽田へ。羽田発着のオフィシャルツアーバスが出ているので、11時のバスに乗って苗プリ直行。オフィシャルサイトだと17時着になっているんですけど遅くとも16時には着くので、朝6時に出て16時着だから10時間か。結構かかってますね(笑)。でも意外と楽なんですよ。東京にいたときはレンタカーとかで行ってましたが、そういうの全然要らないから。札幌から事前に荷物を4箱分くらい送っちゃうので、移動中は大きめのリュックとバギーくらい。ツアーバスにもサクッと乗せられるし。
快適ですか?
快適ですねー。もともと乗り物に長く乗るのが苦じゃないからですかね。ツアーバスもサービスエリアでの休憩が2回くらいあるので、そこで何かを買ったり、子どもも他のフジロッカーたちと“うえ〜い”とかやったりしてるんでウキウキした感じですね。あとは疲れて寝ちゃったりもありますけど、それほど大変じゃない。わかんない、大変だったのかな? 覚えてない(笑)。
でも当然お金はかかりますよね?
かかりますよー。怖くてカウントしたことない(笑)。例えば、荷物を頑張って運ぼうと思えば運べるわけですが、そうするとすごいストレスたまるし、子どもへの注意力が低くなる。だから、無事に、子どもと一緒に自分も道中を楽しむためには全部お金で解決です。その代わり、コツコツとにかくマイルを貯めて航空チケットをすべてマイルで行けるようにするかとか、荷物の送料もいかに安く送れるかを探すとか、そういうところは頑張っています。「よく行くね」って言われるけど、大体マイルで行けてるので、交通費はバス付きツアーで東京から行っている人と変わらないわけで。とはいえ、そのお金があったら海外旅行もできるんでしょうけど、それよりもなんでか行っちゃうんですよね。
そうまでして、なぜフジロックに行くのでしょうか?
私にとっては完全に正月なので。あそこに行ったら1年始まるとか、1年終わるとか、オルグの人でもこう言う人が多いんですけど、行くと親戚みたいな知っている人たちがいっぱいいて会える、盆正月に実家帰るみたいな感覚。だから毎年行くことが当たり前になっていて。子どもたちも今はまだ小学生なので、親戚の家に連れて行かれるみたいな感覚じゃないでしょうか。この先、中学、高校になるとみんなで行けなくなるのかなあ? と思ったりもするので、行ける限りはみんなで行きたいよねっていうのが暗黙の了解である気がします。