中村佳穂が明かす、フジロックで迎えた音楽家としての転機#fujirock

毎回様々なゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力/思い出/体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回は、自身二度目の出演となる中村佳穂さんの登場です。昨年リリースの最新作『AINOU』でブレイクを果たし、米津玄師さんや後藤正文さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)など同業者からも絶賛の嵐。「今、観ておくべきミュージシャン」として注目を集める彼女が転機を迎えたのは、2016年に初出演した<フジロック>でした。それから3年越しとなる今回のステージで、京都が生んだ逸材はどんな景色を見せてくれるのでしょうか。本人の近況と<フジロック>への想いをたっぷり語ってもらいました。

Interview:中村佳穂

「(初出演のフジロックで)次なる展開に気づけたのは大きかったです。」

frf_nakamurakaho02 中村佳穂が明かす、フジロックで迎えた音楽家としての転機#fujirock

――(「富士祭電子瓦版」をPCで見ながら)田島貴男さんのインタヴューも載ってますよ。

本当だ! 田島さんは以前、番組(「Love music」)で褒めてくださったんです。

――僕も今の状況にはビックリです。『AINOU』は間違いなく話題になるだろうと思っていたけど、ここまでというのは……。

ねー! 私もそんな感じです。

――リリースから半年が経ちますが、今の状況はどんなふうに受け止めていますか?

うーん、どうでしょう。私はただ、(音楽を通じて)仲良くなりたい人と仲良くなりたいってだけなので。まだ不思議な感じがしますね。驕るつもりもないし、逆に落ち込むこともないけど、「イエーイ!」って思ってる感じです(笑)。

――なるほど(笑)。そんな中村さんは、2016年に<フジロック>初出演を果たしているんですよね。苗場に行ったのもこのときが初めてだったとか。

そうですね。アクティブな人間ではないから、キャンプもしたことないし道具も何一つ持ってなくて。せめて動きやすい服装にしようと、スニーカーを買ってジーパンを履いて、しかも半袖姿で行ったものだから、現地でめっちゃ寒い思いをしました。

――苗場の洗礼をモロに浴びてしまった(笑)。

ラインナップもすごく魅力的だし、<フジロック>にはぜひ行ってみたかったんです。でも、いざ出演が決まると、物凄くビビってしまって。<フジロック>に行く人は、しっかり用意を揃えて、準備万端でフェスに臨んでいる印象があったんですけど、そういう店にも行ったことがないから、何を買っていいのかわからなかったんです。それで当日、場違いな服装でステージに立って、「あいつらナメてるやん!」みたいに思われたらどうしよう……みたいな。

――2016年に出演オファーをもらったときは、どんなふうに思いました?

あまりにも突然のお話だったので、「えーっ!?」って感じでしたね。

――ちょうど同じ7月に、中村さんは最初のアルバム『リピー塔がたつ』をリリースしたんですよね。そう考えると、タイミング的にはROOKIE A GO-GOに出るのかなって感じなのに……。

そう! 私も出るならROOKIEだと思い込んでたんですけど、まさかの(ジプシー・)アヴァロンからオファーをいただいて。奇跡のような話だし、もう二つ返事で「仰せのままに……」って。

――当日のステージはどうでした?

もちろん、すごく楽しかったです。いつも仲良くしてる人たちがチケットを買って、スタッフしに来てくれたりしてて。ちょうどアルバムが出たタイミングだったし、「たくさんCD売って、いっぱい食べて、グッズとかも買おう!」ということで、お客さんにもどんどん呼びかけて。アヴァロンは物販ができるので、すっごく並んでもらった覚えがあります。

――おおー。

あと、フィールド・オブ・ヘヴンで奇妙礼太郎さんが出演されていたので、そこから流れてくるお客さんにも観てほしくて。本当はデュオ編成で7割くらいやる予定だったんですけど、「音が大きくて華やかなほうが立ち止まってもらえる」と直前で考えを改め、他のメンバーにも最初から出てもらうことにしました。

frf_nakamurakaho_01 中村佳穂が明かす、フジロックで迎えた音楽家としての転機#fujirock

――そのときの模様はYouTubeにもアップされてますが、動画の説明文にも「完全無名にも関わらず、演奏が人を呼び、人が人を呼び、気づけば45分ステージで驚異の100枚CDを売り上げた」とあるように凄まじい内容だったみたいで。

こっちも楽しかったです! 急遽セットリストもバキバキな内容に変えて、スクラッチやビートボックスもやってもらったりしてたら、あっという間に終わってしまいました。

――普段のライブとは達成感も違ったのでは?

このあと、「あのとき見てました」「サインもらいました」ってライブや物販でお客さんに<フジロック>の話をされる率が尋常じゃなかった。今でもありますね。当時はまだ動画もアップしていなかったので、ファースト・インプレッションで気に留めてくれた人が多かったみたいです。

――さらに一方で、この年はオーディエンスとしても収穫があったそうで。

私、ジ・インターネット(THE INTERNET)がめっちゃ好きで。アヴァロンに誘われたときも「よっしゃ、THE INTERNETが観れる!」と最初に思ったくらい。それまで海外アーティストの公演はほとんど観たことがなかったので、どんな感じなんだろうってワクワクしていました。あとは、バンドメンバーと一緒にライブを観るのも楽しかったですね。そのなかで、とりわけ衝撃的だったのがジェイムス・ブレイク(James Blake)でした。

――彼のライブが、『AINOU』の大きなインスピレーション源になったんですよね?

そうです。グリーン・ステージのかなり後ろのほう、ステージから離れた小高い山のほうで観てたのに、低音がメチャクチャ綺麗に聴こえるんですよ。しかも、音数が少ないのにカッコよくて退屈しない。あまりにも不思議だったものだったから、一緒に観ていたメンバーに質問したら、「これは音のバランスなんだよ」と言われて。そのときは何を言ってるのか理解できなかったけど、そこに次の作品のヒントがあることはハッキリわかったんです。

――そこから『AINOU』の制作がスタートすると。2016年の<フジロック>は中村さんにとっても転機になったんですね。

ちょうど作品を出したタイミングに、次なる展開に気づけたのは大きかったです。

――そんな<フジロック>に3年ぶり2度目の出演となるわけですが、決まったときの心境はどうでしたか?

「ついに!」という感じです。3年前のアヴァロンは、当時の私が経験してきたなかで一番大きいステージだったので、足りないものが本当にたくさん見つかったんです。

――というと?

あのときはセッションっぽい演奏をしていたけど、それって私が見えないところにいるお客さんには、ガチャガチャしてるように見えるだけかもしれないとか。そのあと大きな会場でやるためには、バランシーさが大切だとジェイムス・ブレイクをきっかけに気づいて、この準備に2年かかると思いながら作ったのが『AINOU』なんですよね。でも、実際に2年経ったときに、(録音物とは別に)バンドの演奏としてはそこまで至らなかった。で、3年越しの2019年、ついにギリギリ間に合いそうって感じです!

――より大きな舞台に立つ準備が整いそう?

そうですね。今は「いけるんとちゃうか……!」くらいの感じ。そのための準備をずっとしてきたつもりで、(上手くいくと)想像し続けているし、それを超える景色になりそうな気もしていて、ちょっとまだ予測がつかないんですけど。