毎回さまざまなゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力・思い出・体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回はファン待望の<フジロック>初出演を決めたSANABAGUN.から、岩間俊樹(MC)、澤村一平(Dr.)、髙橋紘一(Tp.)にこのフェスへの思いのたけをぶつけてもらった。これまで<フジロック>へ抱いていた感情に始まり、意外にもこのフェスに染まりつつある今の準備とホワイト・ステージでの本番への意気込み、そしてファンへのメッセージまで。今年に入り、再び8人編成となり動き出した“新生” SANABAGUN.の勢いを、彼らの言葉一つ一つから感じてほしい。
Interview:SANABAGUN.(岩間俊樹、澤村一平、髙橋紘一)
「フジロックはいつも悔しい気持ちで見ている存在でした」
━━まずは<フジロック>初出演決定、おめでとうございます。
(一同) ありがとうございます!
澤村一平(以下、澤村) ようやく…!ですよ。出るならやっぱりホワイトステージにっていう気持ちが強かったので、ほんとに嬉しいですね。
━━今年の意気込みを聞く前にまず、岩間さんと澤村さんの2人は去年行ったんですよね?去年の<フジロック>はどのアーティスト目当てでしたか?
岩間俊樹(以下、岩間) はい。俺と一平と行きました。目立てのアーティストはやっぱりケンドリック(・ラマー)ですね。
澤村一平(以下、澤村) 俺も。去年のケンドリックのライブは人生で見た中で一番楽しかったですね。なんかもう……俊樹と最初一緒にいたんですけど、人が多すぎて途中ではぐれちゃって。でもはぐれちゃったならできるだけ前の方で観ようと思って、一人でグイグイ行ったら全然知らない外人の集団の中で動けなくなっちゃったんですよ。そいつらは超暴れまくってて、でもそれに合わせて俺もよくわからないけど踊りまくりました。ケンドリックはもちろん好きですけど、演奏してたバンド陣もすごい好きだったんです。いつもはYouTubeでしか見られなかった人たちが生で演奏してて、曲も好きだし、ラップも好きだし、演奏も好きだしみたいな感じで、演出も超カッコ良かった。もう、俺の人生の中で、かけがえのない時間でした。
━━ “かけがえのない時間”、名セリフっぽくて良いですね!岩間さんはどのあたりにいたんですか?
岩間 俺は端の方で見てたんですけど、もうベロベロすぎちゃって。あと、観てる途中からなぜかケンドリックがムカついてきちゃったんですよ。「絶対超えてやるこいつ」とか思って「身長俺より低いし」みたいな。
澤村 身長だけもう超えてる!
岩間 「悔しいな〜」って勝手に思い始めちゃって。俺はあんまり人のライブは観ないし、常にライブに関して勝つってイメージを持つようにしてるんです。それもあって謎にライバル視してましたね。
━━素晴らしい姿勢だと思います。雨もすごかったですが、そのあたりは大丈夫でしたか?
澤村 俺はもうケータイが水没してたので、外国人にもみくちゃにされても、失うものはもう何もないぐらいの気持ちでした。
岩間 俺も。マネージャーから椅子を借りてたんですけど、酔っ払って無くしちゃったぐらい。
澤村 もう俊樹がめちゃめちゃで、世話するのがほんとに大変でしたよ。それぐらい楽しかったってことですが、今年はその(俊樹との)思い出を払拭できる<フジロック>にできたらいいかなと。
(一同) ハハハ!
髙橋紘一(以下、髙橋) 払拭しよう! 今年はハッピーにね。
━━髙橋さんはそのとき東京にいたんですか?
髙橋 はい。何も見ないようにしてました。それまでも行ったことが無かったし、<フジロック>はいつも悔しい気持ちで見ている存在でした。
澤村 ほんとそう!毎年、出演者の知り合いとか遊びに行ってる友だちとかみんながSNSに<フジロック>のことあげるから絶対見ないようにしてましたね。正直去年までは「あ〜あ、またフジロックの季節が来たよ…」と思ってたのに、いざ出られると決まったら、今年なんて、みんなで「ポンチョどれ買う〜?」とか言ってるもんね。
(一同) ハハハハハー!
澤村 「あれ買ったー?」とか言い合ったりして、もうコレ(手のひら返しの仕草)がすごい。亮三(Ba.)は家も近くて一緒にクルマで移動することが多いんですけど、車に乗った瞬間に「一平! ノースフェイスの長靴買ったんだけど!」って。最近はそういう話題で持ち切りです。
「待たせたな、とうとうフジロック童貞卒業」
━━もう開催が迫っているので、もちろんライブの準備は万全ですよね?
澤村 はい、もちろんです。
髙橋 堅く、堅くいこうと。
岩間 余計なことはしない。
澤村 やっぱワンマンだと2時間かけてじっくり自分たちを見せられるけど、今回は40分という限られた時間しかない。その中で自分たちの全部をぶつけたいので。
髙橋 堅くっていうのも、SANABAGUN.のことが初見の人に対しても一番魅せられる、最強のセットリストを40分で見せられるようにしたいってことですね。
澤村 最初からケツまでずっとクラわせ続けられるセットリストを組んでいます。……別にポンチョとかフェスグッズだけを準備しているだけではないです!
髙橋 フフフ……まあAmazonも見つつね。
━━<フジロック>は各エリアでライブをみてるお客さんのSNSの反応が結構大事で、「あっちのステージがヤバイらしいよ!」って人が“寄る”傾向ががあるので。あとは各ステージの間を通るお客さんが知らないアーティストでも良かったら足を止めたりしやすい。なので、SANABAGUN.が40分ブチかまし続ければホワイト・ステージに客が寄ってくるはず。
澤村 苗場にいる人間を総取りしたいですね。
岩間 苗場全体(笑)?
髙橋 もう新潟を巻き込んでね。おじいちゃんおばあちゃんも。
━━それに「SANABAGUN.が出るから初めてフジロックに行く」って人もいるかもしれません。それぐらい長らくファンにとっても念願だっただろうし、その分、期待値も上がっていると思います。
髙橋 やっぱ俺らは“路上上がり”を自負しているので、人の足を止めさせることに関しては秀でている。人が寄るっていう話で言えば、リアルタイムでのお客さんの反応だったり、通りすがりの人たちを立ち止まらせるとか、<フジロック>ならではの環境を俺らは追い風にしていければ。
━いよいよ開催が間近に迫ってきましたが、初めましての<フジロック>ファンに向けて、そしてSANABAGUN.ファンに3人からメッセージをお願いします。
澤村 いきなり真面目のコメントなので頭が……すいません……今日ホントおかしいのしか思いつかない。でも言います!ゴホン…、「待たせたな、とうとう<フジロック>童貞卒業」。
(一同) ハハハハハハ!!!
髙橋 俺はこの流れに乗らず、真面目なやつ言います。<フジロック>に出るって決まってから、同業の人も含めて、本当にいろんな人からメッセージが来て。こんなに来るんだって思うぐらい「おめでとう!」や「頑張れ!」って言っていただいて、メッセージの文面からもみんなが喜んでくれてるのがすごく伝わってきました。ギリギリに出ることが決まったので、サナバのファンで来られない人もたくさんいると思うんですけど、そういう人たちには「かましてくるから!」って気持ちが強いですし、あとは初見の人をどれだけつかめるか。路上で培ってきた力を発揮する絶好の機会がやっと来たので、それを<フジロック>で見せたいと思います。
岩間 ……普通に言っていいですか。全力で楽しむので観ている人にもそれが伝わってほしいし、それが伝わるようなステージを頑張ります。
━……(締めのコメントとして)全然問題ないっすよ。
(一同) ハハハハ!!
髙橋 いや、ひねったコメントを求められてないのに、勝手に俺らがやってるだけ。
岩間 「全然問題ないっす」って……俺が自信ないやつみたいじゃないですか!
澤村 じゃあ俺のを俊樹が言ったことにしてもいいよ。岩間で書いてあった方がパンチあるんじゃない?
岩間 オッケー!じゃあ言いなおすよ。…ゴホン。「待ってろ<フジロック>、あ、待たせたな<フジロック>。童貞卒ぎょ……」
澤村 違う違う違う!! それだと単に<フジロック>で、“俊樹が童貞卒業”ってことになっちゃうから。
髙橋 このゴリゴリのバンドで童貞ってヤダね。
澤村 しかもラッパーが(笑)。
岩間 恥ずい……(笑)。でも真面目に言うと!やっぱりプレッシャーはありますよね。やるからにはちゃんとやんねーといけないっていう気持ちです。純粋にやっている間は楽しむんですけど、そこに向けて今は思いっ切りボディブロー食らってるみたいな感じなので。チャレンジする場所としては<フジロック>は嬉しいけど、気合いを入れなきゃいけないから、今は単純に喜んでピョンピョン飛べない。大きい舞台であればあるほど、怖さというと変ですけどそういう気持ちはあって。でもその上で、今のSANABAGUN.をしっかり見せたいです。
text&interview by ラスカル(NaNo.works)https://www.instagram.com/rascaaaaal/
photo by 横山マサト