豊間根 それは嬉しい再会ですね。電気グルーヴとしての出演で他にも印象に残っていることってありますか?
石野 レッドマーキーに出演させてもらった時のこともよく覚えている。あの時もすごく良かった。
瀧 君はそれよく言うよね。人がパンパンだった時。
豊間根 誰も測ってないので正確なことは言えないですが、みんなレッドマーキーでの過去最高の動員はあれだったって言いますね。
石野 雨降ってなかった?
豊間根 たしか降っていました。
石野 雨が降っていたからっていうのもあるんじゃない(笑)。
豊間根 いやいや。本当に人がパンパンで、レッドマーキーの脇を通るスタッフ導線もまったく動けなくなっているくらいでしたからね。
石野 お客さんが撮影したから音とかバリバリなんだけど、Youtubeに“富士山”のいい映像があるんだよね。オレはいままでの<フジロック>の映像であれがいちばん好き。
豊間根 映画(『DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-』)観ました。いきなり<フジロック>の場面ではじまり、日高さんが出てくるので、<フジロック>関係者は全員ケツの穴がキュッとしまるっていう(笑)。
あの映画で日高さんが電気グルーヴのライヴを絶賛しているシーンがありますよね。あのライヴはやはり特別なものがありましたか?
石野 2006年、2012年、2014年ははっきり覚えているね。2006年は久しぶりだったし、2014年はいろんなフェスがあってのファイナルみたいな感じだったし。
瀧 そういう意味では2014年はもう出来上がっているものを披露するという感じだったかもしれない。
石野 勝算があったというか。お前が「フランツ・フェルディナンドのギターの弦を切ってやる」って言ったら、それがネットで流れたよね。とんでもないヤツがいるって(笑)。
瀧 切るわけないじゃん(笑)。
豊間根 瀧さんは<フジロック>でのライヴってどうですか?
瀧 好きですよ。グリーン・ステージはでけえなっていうのと、やっぱあそこにいる人たちって独特じゃないですか。あの雰囲気だったり、ステージから見える風景というのは独特なものがあるからね。レッドマーキーもいいけれど、グリーン・ステージは特別な感じがしますね。あと他のステージに比べると、グリーン・ステージはたくさん動かなくちゃいけない。広いので(笑)。
豊間根 だはははは。電気グルーヴとして世界中のいろいろなステージに立ってきたと思いますけれど、グリーン・ステージがいちばん大きいですか?
瀧 そうかも。
石野 そうだね。俺たちの活動の中でも<フジロック>っていちばんでかいフェスだから、そこに呼ばれている俺たちってちょっとかっこいい(笑)。
瀧 我ながら(笑)?
石野 いやいや、自分たちがかっこいいってことじゃなくて、いや、自分たちもかっこいいけど(笑)、<フジロック>って自分たちの中でもでかい存在だからさ、そこがホームみたいに感じられるのってすごい嬉しいことじゃない。
瀧 ああ、なるほど。
豊間根 瀧さんは遊ぶとなると、いろいろとライヴとか観たりするんですか?
瀧 観ますよ。たくさん観るわけじゃないけれど。予定を立てたところで、全然その通りにならないし。せっかく観ようと思っても、途中で誰かに会っちゃうと、それで終わってしまったりするじゃないですか(笑)。だから観られるものは観るって感じですかね。でもパブリック・エネミーは観に行った。いったいどんななんだろうって(笑)。
豊間根 ふたりで観にいくこともあるんですか?
瀧 ハッピー・マンデーズは観ましたね。
豊間根 去年はGAN-BAN SQUAREで卓球さんがやっている時に瀧さんも来ていましたよね?
瀧 行きましたね。こいつがDJやっている時に、「よお!」って感じで行くことはありますけど、その後はウダウダしていましたね。
石野 なんかこいつはDJがいっぱいいると弱腰になるんだよ。
瀧 DJ苦手(笑)。スキルと知識を持っているから。
豊間根 だはははは(笑)。
石野 こいつさ、昔からバンドのやつには上からいくんだけど、DJに対してはすごい弱いんだよ。
瀧 苦手。やつら曲いっぱい知っているしさ。
石野 お前の中でなんかあるんだよな。バンドに関してはなめているんだけど、DJに対しては変なリスペクトがあるっていう(笑)。
瀧 バンドなめてないって(笑)。でもさ、バックステージで音楽の話をされても困るしね。
石野 お前の知り合いのDJでバックステージで音楽の話をしているDJなんていないだろうが。
瀧 まあね。
豊間根 さっき2006年、2012年、2014年が印象深かったという話がありましたが、最初に出演した1997年の天神山のことはどうですか?
石野 逆にあれを忘れるわけがない。
瀧 話しすぎているから、もう触らなくもいいのかなって思っていた(笑)。
石野 過酷だったのは覚えていたんだけど、映画を観て、うちらのライヴがかなりハードだったんだなって思った。
瀧 どういうこと?
石野 やっている内容が。
瀧 ああ。
石野 だからちょうどよかったのかもしれない。
豊間根 はじめてのフジロックはどんな感じだったのでしょうか?
瀧 着いたらえらいことになっているって前情報はあって、どんなだろうって思って行ってみたら、もうほとんど全部が田んぼじゃないですか。で、その田んぼの中をどこかのお店の袋かな、ビニール袋を足に履いた人たちが歩き回っているっていう見たこともない光景が広がっていて(笑)。ロッジからその光景を見ながら、あのビールサーバーは全然売れてないけど大丈夫かなとか心配をしたり。
豊間根 さすがにあの天気で、ビールは売れなかったでしょうね(笑)。
瀧 いろんな人たちが担ぎ込まれたり、みんな唇が紫になってガタガタ震えたりしている中で、Gパンで全身ビシャビチャに濡れている男の子がいて、その子の腰にたまごっちが付いていたんだけど、ずっと「餌をくれ、餌をくれ」ってアラートを出していて、餌をやらなくていいのかなって、でもそれどころじゃないよなって(笑)。その子の白いたまごっちをなぜかすごく覚えています。
石野 でもあれが1回目でよかったよね。あれで大丈夫なら、次は何が来ても大丈夫というか(笑)。最初の試練をクリアした感じがあった。
瀧 当時、フェスにどういうことが起こるのかとか、何を装備していったらいいのかとか全然知らなかったもんね。
豊間根 映画にも映っていましたが、1997年はとにかくすごいテンションというか、何かこうパンキッシュというか、電気グルーヴを知らないお客さんにも食らわせてやろうみたいな気迫を感じました。どういう感じでライヴに臨んだんですか?
石野 この状況下でなんとかしなくちゃいけないっていうある種の義務というかミッションのようなものはあった。うちらがやれるのはそれしかないから。
瀧 この前の<WORLD HAPPINESS>の時も台風が直撃という状況だったけど、逆に火が付いた感じはあったな。
石野 うん。意外と俺たち天災向きかも(笑)。
豊間根 天神山の時は、日本で初の本格的な野外フェスに出るんだというような意識はありましたか?
石野 全然なかった。最初はそこまで格式のあるものだとイメージしていなかったかもしれない。
瀧 <フジロック>っていうネーミングを見て、ベタだなーって思ってた(笑)。当時はほんとそのぐらいな感じだったと思う。
豊間根 なるほど(笑)。そんな<フジロック>ですが、今年はなんと“Spacial Guest”としての出演が決定しました。3日目のグリーン・ステージの最後の最後。後ろがいないというところでのパフォーマンスになります。
石野 そのさらに後にGAN-BAN SQUAREでDJやるけどね(笑)。
豊間根 そうですね、たしかに(笑)。
石野 寂しいんだよね。終わった後、どうすんのって感じ。ホテルに戻ってもしょうがねえしさ。
豊間根 意気込み的に、“Spacial Guest”としての出演というのはどうですか?
石野 めちゃくちゃやりがいあるよね。あの映画もあったし、さすがに今年は呼ばれないわけがないって内心思っていたけど、でもどこにはめ込まれるんだろうって思っていた。で、クロージング・アクト(=“Spacial Guest”)ということで、「その手があったか!」って。
瀧 今までやったどこかというのも、なかなか難しいなって思っていたし。
石野 そう。実はレッドマーキーがいいなとか言っていたけど、俺も内実はこれまでのどこかなら相当難しいなって思っていた。
豊間根 まさに<フジロック>の20周年の最後を飾るに相応しい役目ですよね。
石野 豊間根さんはそうやって恩着せがましく言ってくるんだよ(笑)。ほんと、すげえ言うんだよ。
豊間根 いやいや(笑)。だって卓球さんはクロージングアクトってレッド・マーキーの最後だと思ってたでしょ? 朝方の。
石野 そうそう。でもそれもありだなって。
豊間根 夜中に電話で話してるんだけど、話が全然噛み合わなくって(笑)で、卓球さんがGAN-BAN SQUAREどうする?って話になって。こっちは電気のパフォーマンスの後に、ってお願いしてるんだけど、クロージングで朝方までやったら、GAN-BAN SQUAREの最後を締められないじゃないか!って(笑)。
石野 撤収しながらやるのかと思った(笑)。
瀧 本当の意味でのクロージングを(笑)。
石野 と思っていたら、グリーンでレッチリの後ろだって言うからさ。おおー! って。
豊間根 最初からそう言っていたつもりなんですけどね(笑)。さ、ここでサプライズなんですが、なんと日高さんからおふたりにメッセージを頂いてきました。
石野 マジで! 怖い(笑)。
瀧 先生に怒られるみたいな感じだな(笑)。
豊間根 「20回目の<フジロック>の最後をかっこよく締めてね。期待しています。」だそうです。
石野&瀧 ……。
石野 当然じゃないですか。
瀧 承りました。
石野 今までの<フジロック>との関わり方でなかったパターンだし、3日間遊びまくったお客さんたちの気持ちを締めていく役割でしょ。いや、本当にやりがいがある。
豊間根 レッドマーキーの最後のDJの時はばっちり躍らせて終わる感じだと思いますが、日高さんとしては、あれをグリーン・ステージで電気グルーヴにやって欲しいということだと思うんです。
石野 なるほど。レッドマーキーはB面だもんね。夜の部っていうか、遅番の人たちのためのものだから(笑)。
豊間根 日高さんが今年のブッキングのコンセプトがまさに1997年だって言ってるんです。あの年に出ていたアーティストにまた出てもらうっていう。
瀧 なるほどね。
豊間根 ちなみに今年みたいと思っているのは?
石野 まずトッド・テリーは見たい。あとD.A.N.だっけ。彼らはむちゃくちゃかっこいいね。俺CD買っちゃったよ。
瀧 そういえば、2006年の時はレッチリの前だったから、ついに順番が逆になった。こういう形でとは思わなかったけど(笑)。
豊間根 本当ですね(笑)。
それでは最後に今年のパフォーマンスに向けての意気込みをお願いします。フジロック20周年の年の“Spacial Guest”ですからね、どんなパフォーマンスを見せてくれるのかやっぱり期待しちゃいます。
瀧 盛り上げたいですね。<フジロック>は自分たちにとっては何か新しいことを実験する場とかじゃなくて、<フジロック>のお客さんに求められているステージを披露するって感じだから、今回は特に20周年でもありますから、お客さんの要望に応えられるように頑張ります。
豊間根 いつにも増して、スペシャルなセットということでいいでしょうか?
石野 それはもう、そのつもりです。
豊間根 期待しています!
Photo by 横山マサト
Interviewd by Satoshi Toyomane
text by 加藤直宏
INFORMATION
『SMASH go round 20th Anniversary』 FUJI ROCK FESTIVAL’16
新潟県 湯沢町 苗場スキー場