「前作との違いで言えば、『匂い』ってことは意識したかな」
――小沢さんが、コーネリアスの出演が発表になる前から先回りして「フリッパーズの再結成はありません」とアナウンスしてましたけど。
えっそうなの(笑)? あははは! じゃあ(再結成は)ないんですよ、きっと(笑)。
――彼とは話したりしてるんですか。
全然。20年ぐらい会ってない。最近テレビとかではちょっと見たけど。たぶんその日に会えるよね。
――歴史的な一日になりそうですね(笑)。
(笑)あははは。
――というわけで、11年ぶりの新作を引っさげての15年ぶりの<フジロック>出演になります。アルバムもずいぶん時間がかかりましたね。
そうだね。言われてみると(笑)。
――あなたに会うたびに「新作はまだか」って言い続けて……。
言われ続けてましたね(笑)。でも言ってくれる人がいないと出ないからね(笑)。
――今回のアルバムの構想はいつごろ、どのような形で?
いやあ……構想とか全然なんもないですよね。一番古い曲(“Mellow Yellow Feel”)で7~8年前で、それぐらいからずーっと作ってたから。それをまとめに入ったのが去年の年末ぐらいかな。それまではちょっと曲を作って、違うことやって……みたいな繰り返しで、曲はどんどん増えていって。(アルバムに収録した以外の)ほかにもたくさん曲はあって。たとえば『攻殻機動隊』のサントラやったり、METAFIVEをやったりした時に、自分が作ってる曲の中から合いそうな曲がほかのプロジェクトに行ったりして、そうしてるうちに残ってる曲に共通するムードみたいなものが見えてくるわけ。それでまとまったって感じかな。
――けっこう早い段階から歌ものにするって言ってましたよね。
そうだね。最初はそうでもなかったんだけど……いろんなことやってたじゃないですか。プロデュースやって客演やって曲書いて……とかやってると、ほかでやらないことっていうと「歌うこと」ぐらいで。最近そういうのやってなかったし。なので消去法というか(笑)。ここに入らなかった曲でも、歌を入れる曲として考えてた曲もあるんだけど、テンポの速いものとかテンションの高い曲とかがどんどんなくなっていって。
――ああ、なるほど。そんな感じですね。
もちろんそういう曲はほかのプロジェクトの方が合うっていうのもあるんだけど、自分のテンションとか年齢的に、なんかあんまりそういう気分じゃないな、みたいな。
――METAFIVEの“Don’t Move”は小山田さんが作った曲だけど、あれが『Mellow Waves』に入ってたら……。
小山田:うん、全然違うアルバムになってたよね。METAFIVEでやった方が面白いっていうのもあるんだけど、今回のアルバムには(気分的に)入らないなっていうのもあって。
――歌ものであって、かつ、アルバム・タイトル通りソフト&メロウな。
うんうん。
――メロディアスでメロウな歌ものという意味では、原点に戻った感覚もあるんですか。
原点っていうよりも……加齢(笑)?
――あはははは。感じます?
うん、感じる(笑)。
――そういえばいつも入ってるヘヴィ・メタルみたいな曲も入ってないですね。
そうだね。それも加齢だと思いますね(笑)。へへへへ。
――なるほど。このアルバムでキーポイントとなる曲というと。
“あなたがいるなら”かな。これは2~3年前にできたのかな。
――この曲と“未来の人へ”が坂本慎太郎さんの作詞です。これは曲ができてから依頼したんですか?
依頼してから曲を作って、曲を聴いてもらってから、書いてもらった。その前に『攻殻機動隊』のサントラの、坂本真綾さんが歌ってる曲(“あなたを保つもの”“まだ動く”)も坂本君に頼んでたのね。その歌入れをやった日の帰りに(今回の2曲の作詞を)頼んだの。
――ずいぶん速い段階から。
その時に「どういうのをやったら面白いか」という話をして、ラヴ・ソングをやったら面白いんじゃないかと。それがなんとなく頭にあって、曲を作って、その歌詞をお願いしたんです。もともとsalyu x salyu(『s(o)un(d)beams』)でお願いしたのが最初だったんですけど、salyuも攻殻もすごく気に入ってたので、自分のも頼んでみようかなと。坂本君の歌詞はすごく歌っていて気持ちがいい。気持ち良く歌えるように出来てるっていうかさ。そういう技術があるんだよね。
――なるほど。歌っていても、聴いていても気持ちがいい。その「気持ち良さ」はアルバム・タイトルにもあらわれています。タイトルはどの段階でつけたんですか。
わりと最後かな。
――アルバムの共通した気分や雰囲気をあらわすような。
そうだね。
――ソフト&メロウで、メロディアスな歌の流れというのは世界的に見ても来ているような気がしますが……。
それはあまり関係ないかな。3年ぐらい前にクルマの免許をとったんですよ。それでクルマで音楽を聴くようになったのね。それでこれも加齢なんだけど(笑)、おっさんが若いころ聴いてたのをまた懐かしくなって聴いちゃうみたいなのあるじゃない(笑)? ああいうのでプリファブ・スプラウトとかザ・スミスとか、今の時点でちゃんと掘り下げて聴き直したり。そういうのは曲を書くにあたって影響はしてると思う。ただそれも無意識の積み重ねで、あとから眺めてみて、その中に共通するムードみたいなものが見えたら、それに向かってまとめていく。去年の年末以降に書いた曲あるんだけど、アルバムを作ること前提で、やりたいことと足りないものを自分なりに考えて作った。
――前作との違いみたいなものはどれぐらい意識しましたか。
10年前では確かにこういう作品は出来なかったよね。前作との違いで言えば、「匂い」ってことは意識したかな。匂いっていうか「癖」っていうか「温度」っていうか。前のアルバムとか『POINT』って、もっとミニマルで、匂いがないっていうか。空気とか水みたいな感じなんだけど、今回はちょっと味があったり、匂いがあったり、癖があったり、そういう感じは意識してたと思う。
――人間味ってことでしょうか。
人間味っていうよりも味、っていうか。若いころはさ、ブルーチーズとかさ、パクチーとかさ、ちょっと苦手だったりするでしょ。でも年取ってくるとブルーチーズ美味しいじゃん、みたいな。このクセがいいんだよね、みたいな。そういう感じ。
――それもある種、年齢を重ねたからこそわかることかもしれないですね。今の気分にしっくりくるっていうか。
うん、加齢ですね(笑)。
――さて、このアルバムを引っさげて<フジロック>に出て、それからツアーですね。
うん。かなり回ることになりそうですね。
――自分のバンドで長期のツアーに出るには久しぶりだと思います。
うん。でも去年、長期ではないけどアメリカ・ツアーはやったからね(<CORNELIUS PERFORMS FANTASMA>北米6カ所6公演。8月)、リハビリ・ツアーを。
――だいぶ勘は戻っているはず。今回の楽曲は難易度高いんですか。
難易度高いですね! でもみんな巧い人ばかりだから。リハやってますけど、速いですよ。みんな慣れてきたし。
――今年の<フジロック>のラインナップで、気になってるアーティストなどはいますか
ライ見たいね。3日間はいられないと思うけど、初日の夕方ぐらいには来たいから。そうしたら何を見られるかなと。コーネリアスの前がアヴァランチーズでしたっけ。どんなライヴやるのか、ちょっと気になるな。アヴァランチーズは見たことないけど、昔リミックスしたことあるんだよね。何人かで会って一緒にカラオケ行ったこともある。カイリー・ミノーグ歌ってたよ(笑)。やっぱオーストラリアだから。あとはなんだろレモン・トゥイッグスとかもちょっと見たいな。あとはサンファも見たいね。ゴールデン・カップスも。加部(正義)さんを見たい。楽しみだね。
text&interview 小野島大
photo by 横山マサト
INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL’17
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
OPEN 09:00/START 11:00/CLOSE 23:00(予定)
宮城・仙台 Rensa
OPEN 19:00/START 19:30
北海道・札幌 PENNY LANE 24
OPEN 18:00/START 19:00
北海道・札幌 PENNY LANE 24
OPEN 17:00/START 18:00
香川・高松 festhalle
OPEN 18:30/START19:00
大阪・なんば Hatch
OPEN 17:45/START18:30
愛知・名古屋 DIAMOND HALL
OPEN 17:15/START 18:00
東京・新木場 STUDIO COAST
OPEN 18:30/START 19:30
東京・新木場 STUDIO COAST
OPEN 18:30/START 19:30
神奈川・横浜 Bay Hall
OPEN 17:00/START18:00
広島・広島クラブクアトロ
OPEN 17:00/START 18:00
福岡・DRUM LOGOS
OPEN 17:15/START18:00