「音楽ってやつは、歳なんて関係ないし、好きなものは好き、いいものはいい、それでいいと思うんだよね。」
——先ほど、“忘れ物”とおっしゃいましたけど、これまでの活動において、「ロック」を封印してきたような部分はやはりあったのでしょうか?
まあ、封印されちゃったみたいなもんだな(笑)。当時の映画のプロデューサーなんて「英語の歌詞なんてダメダメ!」みたいな感じでさ、作ったものをみんなみんな否定してくるもんで、日本語の歌詞に書き換えてレコーディングすることになったりね。そうやって、僕がやりたかったようなロック系の曲はことごとく排除されて、ほとんどがミディアムテンポの曲に替えられたんだ。映画の中で使いやすいのはそういう曲だからさ。
——THE King ALL STARSは、加山さんの原点を取り戻せる場所でもあるわけですね。
本当にそう。僕の歳でこんな楽しいことをやらせてくれるメンバーにもスタッフにも感謝しているよ。まず最初に、THE King ALL STARSのメンバーに、50年前に僕が書いたロック系の曲や僕の好きなエルヴィス・プレスリーの曲を聴いてもらったんだ。そうしたら彼らは「これは決して古くないですよ、いまでもやれますよ」って言ってくれて、それで「よし!」となってね。最初にメンバーにそう言ってもらえたのがすごく嬉しかった。なにせみんな日本のロックシーンの最前線にいる連中だからね。
——彼らとやることで、どのような刺激を受けますか?
最初はみんな気を遣ってくれていた感じもあったし、僕自身も合わせられるかなって不安もあったけど、いざ音を出してはじめてみたら、音になんの違和感もなくて、改めて、だから音楽って楽しいんだなって思ったりしたもんでさ。一番下の山本健太くんが48歳下で、孫みたいなもんじゃんか(笑)。僕と同じくらいの世代の人は「なんだよ、その歳の差は?」って思うかもしれないよ。でもやっぱりさ、音楽ってやつは、歳なんて関係ないし、好きなものは好き、いいものはいい、それでいいと思うんだよね。それが僕の素直な気持ちだよ。
——THE King ALL STARSはもちろんのこと、先日発表されたリミックス盤『加山雄三の新世界』にはPUNPEE、ももいろクローバーZ、サイプレス上野とロベルト吉野、スチャダラパー、水曜日のカンパネラ、ECDなど、これまた今をときめくすごいメンバーが参加しています。新しい音楽に非常にオープンな加山さんのスタンスがここでもよくわかる作品でもありますよね。
好奇心旺盛だから、新しいものは常に気になる。いまどういうものが受けているのかとかさ。それで実際に聴いてみると、ああ、わかるよなあ、なるほどなってなるもんだよ。でもある年齢になると、聴こうともしなくなるんだよ。僕の周りでもさ、20歳下の人間とかでも話が通じないやつが多いんだよ。新しい音楽に興味を持とうとすらしない。なんだよって、もう、頭にくるよ。歳をとるとさ、余計に若い連中と話してないとだめだよね。同じ歳の仲間とばかり付き合っていると寂しくなっちゃうんだよ。どんどんいなくなっちゃうからさ。単身赴任みたいな気分になるよ(笑)。
——『加山雄三の新世界』はヒップホップ系のアーティストたちが多く参加しています。作詞家でもある加山さんから見て、彼らの言葉のセンスはいかがでしょうか?
本当に素晴らしいと思う。リズム感もすごいし、日本でああいうことができるんて信じられないよ。僕の中にはああいうセンスはまったくないの。前にラップをやらされたことがあったんだけど、もう、お経ですよ。もう二度とやりたくないな(笑)。最初にメンバーと“ブラック・サンド・ビーチ”をやった時に、スチャダラパー君が日本語でしっかりリズムをとって、しかもセンスのいい言葉を入れてくるんだよな。驚いたね。『加山雄三の新世界』でのPUNPEEもすごいだろう?
——最高です。
いやー、うまいんだよなあ。あの感性は素晴らしいよなあ。あいつのDJなんて本当にすごいよ。
——加山さんの口からPUNPEEという言葉が出てくることがとても新鮮です(笑)。また<フジロック>にお話を戻しますが、今年はなんと池畑潤二氏が率いるROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAのゲストとして、グリーン・ステージへの出演になりますね!
あんな大きなステージでやらせてもらうのは、浜名湖の<THE 夢人島 Fes.>にゲストで出演させてもらった時以来じゃないかな。夢のまた夢が実現しちゃうんなんてすごいなあ。いくつになってもやっぱり夢は持つべきだな。
——今年はどんなパフォーマンスになりそうですか?
今年は自分にとっても記念の年。なにせ4回目の成人式なもので(笑)。そんな年にまた出演できるなんて、こんな嬉しいことはない。どんな曲をやるか、いま考えているところ。みんなが知っている定番曲をどうするか、はたまたロックな曲をどれくらい入れるのか、そのバランスでいますごい悩んでいるところなんだな。ラストに定番曲をやると、まあ、みんな納得するわけ。サインするところに、判子を押すみたいなもんでさ。それは<フジロック>の場合、正解ではないかもしれない。そこはシュミレーションして、最高の選択をするしかないんだけどもさ。今回は大きなステージだからね、そこにいるみなさんに喜んでもらえるようなセットを考えるよ。だから楽しみにしていて欲しいね。
——最後に今年の出演にかける意気込み、メッセージをお願いします!
音楽は、歳なんて関係ないって思うよ。国境も年代もすべて超えることができるのが音楽なんだって、そんな気持ちが少しでも伝わってくれたら嬉しいなって思うよ。音楽を愛することは絶対にいいことだと思う。友達も増えるし、ボケ防止にもなるからさ(笑)。そんな気持ちでいくからさ、俺もみんなの仲間に入れてくれよ!
INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL’17
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
OPEN 09:00/START 11:00/CLOSE 23:00(予定)
text&interview 加藤直宏
photo by 大石隼土
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Title:加山雄三の新世界
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