様々なゲストに<フジロック>の魅力/思い出/体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回は、6月2日(金)の第8弾ラインナップ発表で、池畑潤二氏が率いるROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAのゲストとしてグリーン・ステージへの出演がアナウンスされた加山雄三さん。
2014年、THE King ALL STARSとしてORANGE COURTのステージに立ち、超満員のオーディエンスを熱狂させたことでも記憶に新しい加山さん。今年はなんと生誕80年のアニヴァーサリー・イヤーです。「音楽は年齢も国境も関係ない。すべてを超えることができるのが音楽の素晴らしさ」とご本人が語っているように、今回のインタヴューでは<フジロック>やロックに対する真っ直ぐな想い、情熱を大いに語って頂きました。
Interview:加山雄三
「当日は雨が降っていたんだけど、僕が冗談で『念じて雨を止めてやる』って言ったら、本当に止んだんだ(笑)。」
——2014年にTHE King ALL STARSとして、はじめて<フジロック>のステージに立たれました。はじめての<フジロック>のステージはどんなものだったでしょうか?
まさか自分が<フジロック>に出演できるなんて思ってもいなかったから、オファーが来た時に「本当かよ?」って驚いたんだ。本音を言うと、絶対に不可能だろうけど、いつか出てみたいなあなんて心の奥で思っていたんだ。だから本当に夢がひとつ叶ったという感じだったよね。昔、映画で苗場スキー場の上から下まで滑降したことがあるんだ。苗場という場所は僕にとって思い入れのある特別な土地でもあって、そこでロックをやらせてもらえるなんて、ご祝儀をもらったような気分だったよ。これもTHE King ALL STARSのメンバーのお陰だなって。
——もともと<フジロック>のことはご存じだったんですね?
もちろん知ってましたよ。僕にとっては憧れの場所。これまでに大きな規模のライヴイベントに呼んでもらったことはなくはないのだけど、でもロックのお客さんが集まるものではなかったから、そこで求められるものもロックではないんだよ。定番のヒット曲しか歌えない。僕にとって<フジロック>はロックをやらせてもらえる場所。そしてロックが好きなお客さんと喜びを分かち合える場所。本当に特別な場所なんだな。
——出演したステージはオレンジ・コートでした。加山さんが出演されるということは当日までアナウンスされていなかったとか。
そう。前日にうちのスタッフが下見に行ったら、(お客さんが)2700人くらいだったって言うから、そのくらいのイメージを想定していたんだけど、当日になったらゾロゾロとお客さんが増えてきて、結果的には入場規制になったんだ。最終的には6000人近く来てくれたみたいでさ。おお、これはTHE King ALL STARSもちょっと知名度が上がってきたぞって(笑)。そういう意味では、何か新しい出発点のような感覚もあった。崇高な<フジロック>のステージに立たせてもらったばかりか、あれだけのお客さんが集まってくれたわけで、本当に嬉しかったな。
——<フジロック>のお客さんのリアクションはいかがでしたか?
一体感のようなものを感じることができてね、それが何より嬉しかった。まあ、とにかくTHE King ALL STARSのメンバーがすごいからね。百戦錬磨のミュージシャンばかりでしょ。ライヴの盛り上げ方も熟知しているからね。もともと僕はロックが好きだから、<フジロック>という場で、ロックの好きなお客さんたちと一緒に盛り上がれたとことが、ものすごく嬉しかったんだ。
——ライヴ中に印象に残っていることなどはありましたか?
当日は雨が降っていたんだけど、僕が冗談で「念じて雨を止めてやる」って言ったら、本当に止んだんだ(笑)。その時に雲の切れ間から光がさーっと差し込んできて、ステージの後ろのほうからお客さんを照らしたんだ。あれを見たときに「待ってたぞ」って天から言われたような気がしてね。
——いわゆるフジロック・マジックというやつですね。ああいう自然や環境の中でやると、自然の演出というか、奇跡のような瞬間があるんですよね。
なるほどね。素晴らしい光景だった。なんかとても不思議な気持ちになったな。まあ、でもはじめから晴れているほうがいいわな(笑)。
——だははは。そうですね(笑)。若い世代の中には、加山さん=ロックと結びつかない人もいたかもしれませんけど、ものすごい歓迎されていましたね。
そうだね。とても嬉しかった。僕はもともとロックが好きで音楽をやっていたのだけど、途中から歌がそうでない方向にいったでしょ。とはいえ、それで仕事をしてきたわけだけど、いまこうやって彼ら(THE King ALL STARS)と一緒にやることで、何かこう、忘れ物を取り戻せたような感覚があるんだよな。しかも<フジロック>という、文字通りロックの好きな連中が集まるフェスティヴァルに出られるなんて、気持ちが昂らないわけがない。オレンジ・コートでは、僕のそういう気持ちの高揚がお客さんとうまくシンクロしたように感じられて、とても嬉しかったんだ。