栗原類×ハリー杉山が語る。フジロックは自然と音楽の楽園

アーティストや著名人の方々に、<フジロック>の魅力や思い出を思い入れたっぷりに語ってもらう人気企画「TALKING ABOUT FUJIROCK」。今回は大の音楽好きとして知られるこの2人、栗原類さんとハリー杉山さんの登場です。

栗原さんはモデルでありながらも、音楽ライター/通訳さんの母親に連れられて第1回開催から足を運んでいるベテランのフジロッカー。一方12年に初参加したハリー杉山さんは、ラジオやTVでのアーティスト・インタビューはもちろんのこと、様々な場所で音楽の魅力を発信している生粋の音楽ファン。今回はもともと「一緒に<フジロック>の話がしたかった。」という2人に、今年のラインナップや<フジロック>ならではの魅力について語っていただきました。

果たして、2人が楽しみなアーティストや思い出のベスト・ライブ&フェス飯はいかに……? 開催前に仲間とワイワイ語るのも、<フジロック>の大きな楽しみのひとつ。そう、今年の<フジロック>はもう始まっているのです。

Interview:栗原類×ハリー杉山

今年もラインナップが続々と発表されはじめていますね。お2人は特にどのアーティストが楽しみですか?

栗原

僕はシガー・ロスですね。彼らが10年ほど前に出演した時にキャンプエリア内で写真撮影をしていて、当時10歳だった僕が虫かごと網を持って遊んでいたら、ヨンシーに「きみ可愛いね。一緒に写真撮ろうよ。」と声を掛けられて、それが公式の写真として使われたという思い出があって。

杉山

へええ、10年ほど前。じゃあ類くんが今みたいなお仕事をはじめる前の話?

栗原

僕の母親が音楽ライターだったんで、連れられて<フジロック>に遊びに行っていたんです。僕の初めての<フジロック>は、第一回目だったんですよ。当時はまだベビーカーで移動していたぐらいで、まったく記憶はないんですけどね。

杉山

えーっ!? 類くんの歳であの場にいられた人って、なかなかいないでしょう。<フジロック>で生まれたんじゃないですか?

栗原

生年月日を調べたら都内の病院で生まれていたので……。残念ですが……。

杉山

ははは。<フジロック>で生まれてもよかったってことね。

栗原

あと、僕はジェイク・バグも観たい。それからトゥー・チェロズ。『笑っていいとも!』で共演したことがあるんですけど、まだライブは観たことがないんです。もともとクラシックも好きで聴いているというのもあるし、生で彼らのライブを観てみたいんですよ。

杉山

彼らのライブは激しいですよ。僕が一番観たいのはジャック・ギャラット。この間<ブリット・アワード>の「クリティックス・チョイス」を受賞しましたけど、この賞はアデルやフローレンス・アンド・ザ・マシーン、エミリー・サンデーも輩出した賞ですよね。彼はエド・シーランともダフト・パンクとも比べられたりしていて、とにかくジャンルレスなところがいい。子供の頃からギターも鍵盤も出来て、自分の音楽を全部自分で演奏していて。しかもビジュアルは赤毛でヒゲもじゃもじゃの北欧の海賊みたいなのに、歌っていることは非常に繊細で、ボーカルもジャジーで。16年は絶対にブレイクするアーティストだと思うんですよ。

このタイミングで観られるのはとても貴重ですね。

杉山

本当ですよね。もちろん、レッド・ホット・チリ・ペッパーズもベックも楽しみだし、シガー・ロスも生で観るのは初めてだからすごく楽しみです。でも、今はまだマイナーだけど<フジロック>で爆発するアーティストっていると思うし、僕はそれを毎年楽しみにしている部分もあるんです。

確かに、<フジロック>は知名度に関係なく名演として話題になることが多々あります。

杉山

やっぱり音楽のよさや力、その魔法を全面的に味わえるのが<フジロック>なんですよね。あとはクーラ・シェイカーも観たい。<フジロック>には10年にも来ていましたけど、実は僕がイギリスに住んでいた時……96年ぐらいがちょうどブリットポップの時期だったから、彼らのことは大好きで。ライブの演奏もタイトだし、クリスピアン・ミルズは日本人から見てもビジュアルもかっこいい。それに、“ヘイ・デュード”のイントロのアロンザ・ベヴァンのベースがとてつもない変態ベースで、それを観るのもすごく楽しいんです。レッド・マーキーで観られたら嬉しいですね。僕はレッド・マーキーの雰囲気が大好きなんですよ。

栗原

ああ、分かります。グリーン・ステージは野外の開放感のある雰囲気で、通りすがりの人やショップに行く人も観られる環境ですけど、レッド・マーキーは完全にライブハウス的だから、中に入った人にしか味わえない雰囲気がある。僕もグリーン・ステージよりもレッド・マーキーのライブを観ることが多いですね。

杉山

(深くうなずきながら)うんうん、同感です。

栗原

そういえば、一昨年に一番感動したのは、レッド・マーキーで観たセイント・ヴィンセントだったんです。あの空間を支配するような、みんなを操り人形のように思うがままに動かすような雰囲気が本当にかっこよくて。

杉山

レッド・マーキーって、そういう風に場を操ってしまえる人もいれば、操れない人もいて、ごまかしが効かない環境だよね。僕が<フジロック>で一番感動したのも同じレッド・マーキーでのアクアラング。一時期裏方として活動していたのが久しぶりに来てくれることになって。インタビューをさせてもらったら、「(裏方として)世界中を回って正直疲れていたんだ。でも、唯一もう一度ライブをやりたいと思ったのが<フジロック>だった。」と話してくれました。去年って結構ピーカンだったじゃないですか? その2日目の昼で、みんなふらふらで観に行ったんですけど、音楽自体が気持ちよく熱さをさらってくれて、ライブ中に風も吹いてきて。その風と音が見事にブレンドされて……。もう、僕のNo.1ライブですよ。あと、ちょっとした奇跡が起きたんですけど、実は彼、僕の高校の先輩だったんです。

栗原

えーっ。

杉山

僕のウィンチェスター・カレッジの先輩で、「すげえなぁ。この人先輩なんだな。」と思って観ていたら、ライブ後にトントンと僕の肩をたたく人がいて。それがよく見たら高校の頃の後輩で、彼もなぜか日本の<フジロック>にいて、アクアラングのライブを観ていたという。

すごいお話ですね。

杉山

いやー、ビックリしました。何年かぶりにうるっと来ちゃって、すぐにジョージ・ウィリアムスさんのところに行って、「いやー、アクアラングやばかったです。」って伝えたりしましたね。

一方、栗原さんのベスト・ライブというと?

栗原

一番感動したのは、13年にウィルコ・ジョンソンがグリーン・ステージでやったライブですね。彼の病気が悪化していた時期で、最後の最後に“グッド・バイ・ジョニー・ビー・グッド”を演奏して、その覚悟に僕も周りの人も涙目になってしまって。もう完治して去年も来日しましたけど、あの時の彼はライブをやっていても悔いがない雰囲気でした。そこに自分の仕事への誇りを感じたし、「ライブで自分が生きているのを実感する。」ということをインタビューで言っていて、そういうことが言える大人になりたいと思ったんです。ドクター・フィールグッドで発明した彼の伝説的なギターを生で聴けるのも本当に貴重なことですし。

なるほど。では、これから発表される追加ラインナップについて、期待も込めて決まってほしいアーティストはいますか?

杉山

僕はフローレンス・アンド・ザ・マシーン。一度だけ赤坂ブリッツで来日しましたけど、途中から着物を着たりもして、ライブも素晴らしかったです。それに、これも変な話なんですけど、彼女は僕のハトコなんですよ。若い時に何度か会ったことはあって、<ブリット・アワード>の「クリティック・チョイス」に選ばれた時には流石に「おっ!」となって。彼女と大自然が合体したら今までに観たことのないフローレンスが観られると思うんで、かましてほしいなぁと思いますね。しかも夕方が希望です。夕方の少し肌寒くなるタイミングで、「あ、ここで雨?」とか。あれが起こってほしいなぁ。

栗原

そういえば、一昨年にザ・ウォーターボーイズが出た時に、ちょうど雨が降り始めたんです。そういうめぐり合わせが起こるのが、山の中のフェスの楽しさですよね。

杉山

確か12年にレディオヘッドが来た時も、彼らのステージが始まった瞬間に雨が降り始めて。あれもよかったなぁ……。類くんはどう? これから決まってほしいアーティスト。

栗原

色々あるんですけど、今年は20回目ということもあって、(16年に急逝した)デヴィッド・ボウイにはぜひ来てほしかったですね。<リアリティ・ツアー>で“ライフ・オン・マーズ”をやっている映像は観たことがあるんですけど、昔は出せなかったような渋めの声で歌っていて、「この人をみたいなぁ。」と思ったんです。

栗原

(残念そうに)いやぁ、デヴィッド・ボウイは本当に観たかったですね。

栗原

それよりは実現できる可能性があるもので言うと、ジョニー・マーとモリッシー。それぞれ別にでもいいんで、同じフェスに来てくれたら嬉しいです。それから、一番決まってくれたら嬉しいのはPJハーヴェイ。

栗原さんは以前ライブを観たことがあるんですよね?

杉山

<フジロック>で?

栗原

そうなんです。彼女の熱狂的なファンだったので、プレスエリアに母親が仕事で近くにいたりして、僕が着ていた(モッズの象徴としてお馴染みの)ターゲットTシャツに彼女がサインをしてくれて。今でも持っていますよ。他にはルーファス・ウェインライト。グザヴィエ・ドランの映画『トム・アット・ザ・ファーム』で彼の“ゴーイング・トゥ・ア・タウン”が主題歌に使われて、歌声のパワーや希望と絶望がまざったメロディを改めて聴いて、「彼のライブを観られたら、これ以上ライブはいかなくていいんじゃないか。」と思ったんです。

ひと言で「<フジロック>の魅力」と言っても色々とあると思いますが、中でも「これは<フジロック>だけでしか経験できないな」というものを挙げるとしたら、何を挙げますか?

杉山

やっぱり、大自然ですよね。これはどこにもないと思う。

栗原

それこそ、僕は小さい頃会場で虫取りをしてカブトムシを見つけたりしていました。トンボを30匹ぐらい捕まえたり、母親が虫嫌いだったんでわざと見せて遊んだり。音楽だけじゃなくて、みんなで自然の中を歩いたりするのも<フジロック>の魅力なんですよね。

杉山

来ているアーティストが会場をフラフラ歩いているのも特徴ですよね。それから、色んなアーティストに話を聞かせてもらうと、「<フジロック>は綺麗で安全で、『平和』へのリスペクトが感じられる。」と、みなさん言います。あとは、普段起きないことが起きるというか。来ているお客さん自身も、いつもとはまったく違う自分に出会えるし、普段ではありえないことが<フジロック>では起きる。友達とよく言うんですけど、「<フジロック>であったことは<フジロック>で納めよう。」っていう言葉があって。