━━では、これまでに印象的だったハプニングというと?
杉山 <フジロック>の裏の主役は深夜だと思うんですけど、夜のクリスタル・パレスでは毎年何かしら起きているイメージですね。同じお仕事をされている方や友達にばったり出くわしたりするし、あそこで観たキングダム☆アフロックスという日本のアフロビートのバンドは凄かったです。ウェスタンの映画に出てくる田舎町のパブで、酔っぱらった人たちがテーブルで踊り始めるような、ああいう制限されてない空間のイメージ。しかもアフロビートなんで、ダンサーさんもまぁエロいんです(笑)。演奏も含めて「これはめちゃくちゃ楽しいな。」と思ったのが初の<フジロック>の思い出でした。僕が行き始めたのは遅くて、12年ですね。
━━その時はお仕事で向かったんですか?
杉山 12年は仕事ではなかったですよ。単純に音楽が好きなんで、友達と行こうということになったんです。「なんで自分は<フジロック>に行けてないんだろう。これじゃあ全然音楽を追究できてないな。」って。
栗原 すごいです。
杉山 当時J-WAVEのレギュラー番組をやっていたんで、帰りはそこに間に合うかギリギリになったりもして。あともうひとつ、<フジロック>の魔法として、「何であんなに食べられるんだろう?」というのがありますよね。食べて食べて食べまくっちゃうというか。
栗原 イスを持ち歩いていたりすると意外に体力を使ったりするのか、一日の食費も結構いっちゃいますよね。
━━好きなフェス飯というと、どの辺りですかね?
栗原 僕は磯辺焼き。初めて食べたのは6年以上前のことなんですけど、それ以来<フジロック>に行くと一日2本ぐらいは食べます。ラーメンや、ワールドレストランのパエリアも好き。一昨年はあまりにも暑かったんで、かき氷も食べました。果物と白玉が入った数量限定のもので、その時初めて、「暑い時にみんなが冷たいものを食べる気持ち」が分かったという。
杉山 僕は鉄板ですけど、ビールとガパオの組み合わせかな。あとは、ワールドレストランのフィッシュ・アンド・チップスやシェパードパイ。あまり気づかれてないんだけど、シェパードパイ、意外といけるんですよ。でも一番記憶に残っているのは、東山食堂の甘酢丼。あれは猛烈にうまかったですね。絶妙な甘さと酸味のバランスで、「こんなにうまいご飯が<フジロック>にあるんだ……!」という感じでした。
━━ああ、それは最高ですね……! 音楽以外の要素としてはフェスファッションも重要な要素です。<フジロック>に向かう際にはどんなことを意識していますか?
杉山 <フジロック>って難しいよね。
栗原 うん、難しい。いつ雨が降ってもおかしくないので、みんなレインコートを着たり、持っていたりすると思うんですけど、僕の場合は日焼けしたくないから、どんなに暑くてもUVカットのパーカーとサンバイザーは持っていきますね。
杉山 類くん、サンバイザーしていたね! 実は類くんと、<フジロック>帰りにばったり会ったことがあるんですよ。14年の帰りに、新幹線に乗る直前の駅の改札で見かけて、最初は僕だと分かってなくて超ビビっていて。その時に、ハットとかをかぶっている類くんのいつもの感じではなくサンバイザーでした。僕も悩むんですよ。本当はUKっぽいハットでも行きたいけど暑くなっちゃうし、いいハットをかぶって雨が降ったら台無しじゃないですか。
栗原 だから僕もフード付きのパーカーとサンバイザーと、あとはブーツ。水たまりもあるし、「HUNTER」のブースに立ち寄ったりもしますね。
杉山 類くんはちゃんとプランニングしていますね。僕は初めて向かった時なんて、タンクトップに半パンで行ったとんでもないバカで。そこから反省しつつ、でも服でも自分が好きな音楽のニュアンスを伝えたいから、スキニーのパンツにバンドTで行きます。しかも靴は、長年ライブに行く時に履くコンバース。もう汚くなっていて泥だらけだけど、あえてそれで。「このスニーカーを履いて俺はアクアラングを観れたんだ。」っていう、そんな思い出が沢山詰まっている靴なんですよ。
栗原 ああ、そういうものがあると後で孫が出来たりした時に、「これで観にいったんだよ。」って伝えられますね。
杉山 うん、「この靴を履いて観たんだよ。」ってね。
━━バンドTシャツの話が出たので訊かせてもらいたいんですが、お2人の好きなバンドTシャツというと?
杉山 バンドTシャツはいいですよね。最近、デヴィッド・ボウイのTシャツがバカみたいに高くなっちゃって(笑)。なかなか売ってないんです。類くんは現地で買ったりとかもします?
栗原 はい、買います。ザ・キュアーが出演した時にも<フジロック>でザ・キュアーTシャツを買ったりとか。
杉山 ザ・キュアーはやばい!
栗原 ただ、ザ・キュアーはその時観られなかったんです。東京で仕事があって、戻らなければいけなくて。でもたとえ観られなかったアーティストだとしても、そういう風に買えたら嬉しい。会場限定のものもあるから、それを見つけるのも楽しいですしね。
杉山 ねえ。そういえば、バンドTシャツって結構早くなくなっちゃうんですよね。1日目の昼ぐらいにもう売り切れちゃったりして、「なんで……。」って。どのアーティストのものを着るかにも意味があるから、こだわりますよね。
栗原 着ていたら「あ、●●好きなんですか?」って聞かれたりしますし。
杉山 今年とかも欲しいですもん。
栗原 まだこれからラインナップが発表されますし、何を買うかはそれ次第ですよね。発表されていないものでは……誰が決定しているんですか? 5名ぐらい教えていただけませんか!?
杉山 知っているんでしょ!? 今日のギャランティはそれでいいですから!
━━それは全員、発表されてのお楽しみですね。最後になりましたが、<フジロック>は今年で20回目を迎えます。お2人が感じる<フジロック>の一番の魅力とは、どんなものだと思いますか。
杉山 <フジロック>は自分が大好きな音楽やアーティストに五感を通してフルに向き合える、楽園だと思いますね。たとえば1年を通して、毎日色んな喜怒哀楽があるじゃないですか。仕事で「ああ、自分はダメだな。」って思うこともみんなあるはずで。でも、それをすべてゼロに戻す力というのが、<フジロック>にはあると思う。だから、生きている限り毎年行きたいですね。僕は魔法は信じないですけど、<フジロック>にはそういうマジックがあると思うんです。
栗原 <フジロック>に行くのって本当に冒険ですよね。山があって、ハリーさんが言っていたように、自然も音楽も食べ物も、全部揃っていて。そして自然の中で人と人が繋がったり、他では経験できないことが沢山あったり。だから、自分自身を変えられる場所でもあると思う。僕は仕事がなければ家から出ないタイプの人間ですけど、「<フジロック>は毎年行きたい!」って思えるんですよ。自分を見つめ直したり、変えられたりするような場所だと思いますね。
杉山 うん、そうですよね。今類くんもお話ししてくれましたけど、「新しい自分と出会える」「自然と音楽の楽園」。これこそが、<フジロック>の魅力なんだと思います。
text&interview by Jin Sugiyama
photo by 横山マサト
撮影協力:NOS ORG
栗原類、じつは初年度の<フジロック>から参加していた!フェスの楽しさとロックTの魅力を語る。
INFORMATION
『SMASH go round 20th Anniversary』 FUJI ROCK FESTIVAL’16
新潟県 湯沢町 苗場スキー場