「偶然の出会いを楽しむのも<フジロック>ならではの時間」
——今年はじめて行こうと考えている人へアドバイスすることはありますか。
私がアドバイスできることは少なくて、私がアドバイスしてもらいたいほどです。ただ言えるのは、<フジロック>は本当に楽しいですよ。ステージとステージをつないでいるルートにあるデコレーションも好きで、特にボードウォークがお気に入りで、そこを何度も歩いた記憶がありますね。とにかく歩いていろんなものを見て、歩きながらいろんな音が聞こえてくることが楽しくて。「あ、この音が気になるな。じゃあ行ってみよう」とか、そんなふうに知らない音に出会えるのもいいんですよ。何もプランしないで、偶然の出会いを楽しむのも<フジロック>ならではの時間ですよね。フィールド・オブ・ヘブンの奥の方にキラキラのカーテンがあって、そこがきれいでずっと写真を撮っていたり。
——それをインスタにあげたり?
去年はインスタストーリーにあげていましたね、他にも森のなかにミラーボールがあったり、映像があったり。歩くことでいろんな発見がある。夜と昼とでは景色が違うし。
——ライブが目的ではあるんだけれど、他の楽しみも見つけられるのが<フジロック>ですよね。
そうなんですよ。ライブの合間合間で違うものが見つけられる。<フジロック>ってけっこう広いじゃないですか。最初に行ったときに、ヘブン(フィールド・オブ・ヘブン)までめちゃくちゃ遠いっていうイメージがついてしまって、「あ、奥まではなかなか行けない」って思っていたんですけど、歩くことを楽しむようになったら、意外に近く感じられるようになったんですよね。去年や一昨年は「全然大丈夫じゃん」って思えるようになりました。
——道も整備されてきているのもポイントのひとつだと思います。道が渋滞しているとまた遠く感じられるし。今年はどのアーティストのライブを楽しみにしていますか。
友だちのマック・デマルコ(Mac DeMarco)が出るんですよ。去年知り合って、LAでも会って、共通の友だちもいたりするんです。ケンドリック(・ラマー/Kendric Lamar)は絶対に見たいなあと思っていて。あとボブ・ディラン(Bob Dylan)も絶対にやばいですよね。エム・ジー・エム・ティー(MGMT)も気になるし、アンダーソン・パック(Anderson .Paak)も気になるし。ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)もすごく良さそうですよね。<フジロック>で聞いたら気持ち良さそう。マック・デマルコは1月にリキッド(LIQUIDROOM)であったライブに行ったんですけど、野外フェスだともっともっといいんだろうなあっていうライブでした。
——ケンドリックのライブは見たことがあるんですか。
ケンドリックは確かあります。どこで見たんだろう。ケンドリックって前に<フジロック>に出ていますよね。ただ前に見たときのケンドリックと今のケンドリックでは明らかに違う。アルバムもすごく良かったし、パフォーマンスもビッグになってきているし、メッセージ性も強くなっているし、どんどん進化しているし、おもしろいことをしているから。本当に楽しみですよね。
——あげていただいたアーティストのライブを見るとなると、3日間参加することが絶対条件ですね。ついに水原さんも3日間フル参戦。
今年は本当にフルで参戦したいと思っています。もうスケジュールをマネージャーに伝えています。毎回「行きます」と言っていても、ギリギリで仕事が入っちゃったとか、行けないことが何度もあったんですよね。それで悔しい思いをしてきているんです。ビョーク(Bjork)も見られなかったし、YMOもバックステージではお会いしているのに実際のライブは見られなくて、YouTubeで見て悔しい思いをしたりしているし。
——そうだったんですね。YMOはバックステージで3人にお会いしただけ。
そうなんですよ。仕事で帰らなきゃならなくて。バカなんですよ。YMOを逃してしまったのは本当に腹立たしくてしょうがないんです。
「インスピレーションの場であり、出会いの場でもある。」
——3度の経験を踏まえて、今年はどんな楽しみ方をしたいと思っていますか。
普通に楽しみたいですね。マックが出るから、裏に行けないかなって。何かしらあやかりたいですよ。3日間参加するのだっから雨対策も準備していかなきゃですね。
——雨に降られながらのライブ体験ははじめてになるかもしれないんですね。どこかドラマチックな経験になるかもしれないですよ。
雨のなかでのライブは、私にとっては初になるかもですよね。でも毎年のように<フジロック>に行かれている人たちには、それが当たり前の体験。たとえきつくなったとしても逃げ出さないですよ。3日間参加するんだって友だちともすでに約束しているんです。毎年毎年、そう約束しているんですけどね。なかなか実現できないから、今年は絶対です。
——3日間いるといろんな物語があってさらに楽しいですよ。
NOBUさんとかが「今年は行かないの?」って毎年誘ってくれるんです。NOBUさんは行くと仙人のような格好をして、完全に仕上げていて。
——<フジロック>は毎年参加する人が多いフェスです。多くの人がそう感じてしまう理由はどこにあると思いますか。
<フジロック>って大きなインスピレーションだと思うんですね。ジャンルを問わず、いろんなアーティストが一気に見られる3日間というのは、ずごく贅沢な時間だと思いますし、山のなかにいることも気持ちいいですから。<フジロック>のことを考えていると単純にワクワクしますよね。
——あれを見てこれを見ていないとか、世代を超えていろんな話をいろんな人と話せることができる場所だと思います。
話がどんどん展開されていくというか。今まであまり知らなかった人と仲良くなれる場所なんですよね。みんな同じ目的で、同じような考え方を持った人たちが<フジロック>という場所に集まる。インスピレーションの場であり、出会いの場でもある。だからやっぱりその刺激をもらいたくて行くんじゃないですか。私ですら毎年行きたいと思いますもん。行けば絶対に楽しいんだっていうこともやっとわかるようになりました。
——ライフスタイルのなかにアウトドアで遊ぶというものはもともとあるのでしょうか。
あまりないですけど、個人的には自転車が好きで、サイクリングはしています。海外でも日本でも野外フェスは行っています。自分は周りの友だちに甘えっきりで、そういう人たちのテントに遊びに行って、暖かいお茶をもらったりだとかおいしいご飯を食べさせてもらったりしているんです。いつもそういうポジションなんですよ(笑)。
——連れて行ってくれる人を探せっていうこともフェスで楽しむ秘訣のひとつだと思います。
慣れている人たちにしか連れて行ってもらってないので、逆に自分では何もしていないのは問題かなって感じではあるんですけど。
——行きたいんだけどひとりでは行けないって思っている方は多いと思います。達人に教わって、それを次の人たちにバトンタッチしていく。
仙人はずっといていただいて(笑)。上の世代の人たちが、毎年楽しみにしていて、元気に行っているというイメージもあります。私のなかの勝手なイメージですけど。家族で来ている方も多いですよね。自分の家族ができて一緒に行けたら楽しいなあと思いますね。
——今年はおじさん率も高いと思いますよ。ボブ・ディラン決定のニュースを受けて浮き足立っている人が多いですから。
おじさんが多いと一番安心できるんですよ。ボブ・ディランは父親がよく聞いていて、ビートルズと並ぶような伝説のアーティスト。見ておかないといけない人ですよね。なんと言ってもノーベル賞受賞者ですから。本当に同じ場所にいるんですか? っていう感じになるんでしょうね。
——ケンドリック・ラマーとの対比がおもしろく感じられるんでしょうね。
私の女の子の友だちは、ほとんどがケンドリックを見たいと大騒ぎしていますよ。ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)も見たいっていう声も多いですね。私も全部見たい。今年もすごいメンバーがラインナップされていますよね。こんなフェス、世界でもなかなかないと思います。
text&interview 菊地崇
photo by 横山マサト