「人がひとりのときに感じているような感動に、負けないような表現がしたい」
――それ以降<フジロック>を訪れる中で、ライブがよかったアーティストというと?
(過去のラインナップを色々と観ながら)あっ、去年は行けなかったんですけど、UAさんのライブがよかったみたいですよね! 私も他のフェスで観ることができて、すごくよくて。ジ・インターネットやバトルスも出てたんだ。いいなぁ。15年はBOOM BOOM SATELLITESやMANISH BOYSも観たし、モーターヘッドを(レミーが亡くなる前に)観られたのも大きかったですけど、ルディメンタルがめちゃくちゃよかったのを覚えています。パッドで叩いているドラムに生感があって「へええ」と思ったり、メンバーかわからないシンガーとかダンサーが出たり入ったりしてて。
――コムアイさんはやっぱり、ライブでの面白いアイディアに注目して観ているんですね。
水曜日のカンパネラをやる前から、ライブを観るときは「私だったらこうしたいな」「こういうステージならここから出てきたら面白いな」「この光はどうやって出しているんだろう?」と考えるのが好きです。FOHで、PAや照明やVJの人の仕事を観るのがすごく好き。そういう裏方の人たちがグッときながら舞台を作っていくのを観るのが楽しくてよくそっちから見ています。
――水曜日のカンパネラのライブも、裏方のスタッフの人たちも含めた色んな人たちとの関係性で成り立っている感覚がとても強いですよね。
カンパネラは完全にそうですね。私は、裏方の人たちもみんなメンバーだと思っているんです。だから、かかわってくれるメンバーが少しでも変わると、それってすごく大きなことだったりするんですよ。そういうとこで悩んだこともあって……最近やっと、少し慣れてきたところです(笑)。
――今年のラインナップで、コムアイさんが楽しみにしているアーティストというと?
今年私が出演する最終日は、すごくいいラインナップだと思うんで、観たい人がたくさんいるんですよ。ヘッドライナーのビョークは私にとって神なので絶対観たいし、1日目のアルカも観たい! アルカって、ちょっと浄瑠璃っぽいと思うんです。琵琶法師とかもそうですけど、心が引き裂かれて泣いているような感じがする。ロティックとかもそうですよね。あのキーンとした感じは自分の表現の核にはないから、「すごくいいな」と思います。「音楽が好きな人の音楽」というより、「その人自身が音楽になっている」というか。ビョークもそういうところが好きです。その人が呼吸すると、それが音楽になる。そういう人って、直接観た方が絶対にいいじゃないですか? そういうものをアルカのステージで観られたらいいな、と思っていますね。あとはゴリラズもジ・エックスエックス、ロードも楽しみですけど、エックスエックスやロードはこの間<コーチェラ>で観ちゃったんです。ロードはセットが豪華だったので、遠い島国にどれだけ演出機材を持ち込んでくるのか見比べようと思います。ライとサムファ絶対観たい。
――会場でたくさん観ることができたらいいですね。水曜日のカンパネラの当日のステージについては、どんなことを考えていますか?
3月に武道館でのライブ(単独公演<八角宇宙>)をやってから気持ちがまた変わってきているというか、水曜日のカンパネラをはじめてからの約5年の区切りがついた気がしていて。自分の好みも今ちょうど、出産するときのようにガーッと変わってきているんです。妊娠して、食べものの好みが変わるような感じで(笑)。たぶん、ここ最近は人を楽しませようとし過ぎていたんですよね。その結果人に本当に楽しそうなものを提供できていなかった。自分が本当に感じている感動をそのままの感じで共有したいだけだと気付いたんです。この間やった競馬場のTIME TO PLAY(JRAとの企画「東京遊駿」の一環で東京競馬場から生配信したライブ)ではそういうことができたと思っていて、嬉しかったんです。観終わったときの後味は全然派手じゃないですが、私がその場で感じている空間の感じ、そのままが映像に映っていたと思った。たとえば、部屋に蝶々がひらりと入ってきて、他の蝶も来て交尾してて、光が差している中に飛び去っていなくなるってことが起きて、その時隣に誰かいて、一緒にそれを見れたら。そういうことをたくさんの人と共有したい。
――ああ、さっきのアルカやビョークに感じる魅力とも繋がってくるような話ですね。
そうなのかもしれないですね。TIME TO PLAYのリハーサルをしているときに、通路にあるカーブミラーにたまたま光が反射して、地面に池のようなものができていたんですよ。それ本当に綺麗だった。偶然でできているものに化粧をせずに、そのまま出したいというか。シンガポールでたまたま撮ったユニコのMVもそういう類です。最近は、そういうことが自分のライブでも出来たらいいなと思っていますね。人がひとりのときに感じているような感動に、負けないような表現がしたい。「楽しませようとしている」というのはある意味それに負けていると思うので、そういうものをそのまま出すようなライブをしたいと思っているんです。
――<フジロック>は会場に向かったこともあるだけに、色々な演出も考えられそうです。
今ライブもいろいろ試しています。今まではステージのラップトップのiTunesを再生して声なしの2ミックスのトラックをPAに送っている感じでしたが、ステムデータに分かれたものをケンモチさんが出して、zAkさんが声とそれぞれの要素をミックスするという流れに変わりました。その場によって違う空気や気分を全てに反映させたいな、と思っていて、遠隔にバンドメンバーが二人いるような感じになっています。演出も、自然現象や超常現象がいいなと思っていて、美術も照明も衣装も本番汗だくになって走り回って、幼稚園児の集まりみたいな感じで楽しんでやっています。<フジロック>までにいろいろ実験しておきます! 是非来てください。
text&interview 杉山仁
photo by 横山マサト
INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL’17
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
OPEN 09:00/START 11:00/CLOSE 23:00(予定)
Now on sale!
Title:SUPERMAN
Artist:水曜日のカンパネラ
WARNER MUSIC JAPAN
WPCL-12464
¥3,240(tax incl.)