チバさんは、これまで同じグリーン・ステージでも様々な時間帯に出演されてきましたが、ステージ上からのそれぞれの光景は、やはり昼夜ちがうものですか?

チバ

夜は夜で群衆が蠢いている感じがするし、昼は昼でパーッとした光景が広がっていて、違った気持ち良さがあるよね。昼の緑の感じやパーッとした開放感は、昼にしか味わえないし。どっちも好きだよ。

2003年は3日目のレッド・マーキーでの<Sunday Session>で冷牟田さんのTabooにDJ出演しましたね。

チバ

出たねぇ。そうそう、あれで想い出すのは、自分の出番まで時間があったんで、スタッフ用の自転車を借りて、場内を散策していたら、道に迷っちゃったこと。「チバが出番なのに、いない!!」って、みんなが騒いでいたという。

チバさん、携帯持ってないですから連絡つけられないですもんね(笑)。

チバ

自力で何とか戻ったよ。

しかし、チバさんが自転車に乗っている姿、見てみたかったなぁ。

チバ

そう?乗れるんだゼ、ちゃんと。ちゃんとかは分かんねぇけど(笑)。あの日も乗っていてコケた記憶がある。

2003年はTMGEでの最後の出演であり、今は亡きジョー・ストラマーに捧げられたグリーン・ステージでの一発目を飾りました。

チバ

ジョーはね、やっぱり大好きだし、(ジョー・ストラマー&)ザ・メスカレロスと共演したこともあったんで、思い入れは強かったよ。ジョーは人間が素晴らしかったよね。ジョーを初めて生で観たのは、メスカレロスで。あの日はクラッシュの曲もやって、ちょうど(甲本)ヒロトさんも来ていて、「おまえ前に行け!!」って押し出されて、前列の方に行った。そうそう、あの年のフジロックは、そのジョーの追悼もだったけど、ちょうど俺たちも解散する、しないの話もしてたから、その印象も強い。

ちなみに、この日はグリーンのトップでしたが、トップバッターの気分ってどんなもんなんでしょう?

チバ

眠い(笑)。朝いちの時には、前の晩、飲まないようにしているし。その代わり終わったら、長時間ずっと飲んでいるけど。

ROSSOでも1度出ておられるんですよね。レッド・マーキーで。ああいった箱感覚のステージは、<フジロック>の中でもある種、異質ですが、演者的にはどんな感じなんでしょう?

チバ

レッド・マーキーは、お客さんともより近いし、歌ってる声とかも凄く聴こえてくるんだよね。大好き。グリーン、ホワイトもいいけど、レッド・マーキーが一番好きかも。楽しいんだよね。反応がダイレクトに返ってくるし。

そうそう。チバさんって、TMGEの頃からステージの大小に関わらず、機材のセッティングの規模って、そう変わらないんですよね。

チバ

変わらないよ。そのステージの大きさ毎に合わせちゃうと、他のメンバーの出音が聴こえなくなっちゃうじゃん。大きなステージでも、せいぜい30cmぐらいじゃない、変わるの。直で音が聴こえないとイヤなんだよね。基本、ギターとベースに関してはモニターから音を返してもらわないから。中音だけでプレイしてるからね、俺たち。

MG_3988 チバユウスケ、自身のフジロック出演歴から現在のフジロックの楽しみ方までを語る

なるほど。で、2008年からはThe Birthdayとして、<フジロック>のステージにコンスタントに立っています。これまでに、6度7ステージも出演されていました。しかも、2008年はホワイトとグリーンの2ステージに立ったり

チバ

そうそう。あの年のグリーンは、(忌野)清志郎さんの代わりに立たせてもらったんだ。ありがたかったよね。

特にあの年のグリーンのステージは、急遽決まったにも関わらず、2Daysとも違ったセットリストで感激しました。

チバ

やっぱり、そこは変えて演らないと。

あの日のグリーンのステージは、The Birthdayの前までは豪雨だったのに、みなさんの出番になったら雨がピタッと止んだんです。

チバ

そうだったね。あの日はそうだった。出番前までガーッと降っていて、今年はダメかな…なんて思ってステージに出たら、雨が止んで。“さすが晴れバンドだな、俺たち”って思った。

そうなんです。チバさんの歴代出演の降水確率は異様に低いんです。

チバ

TMGEの頃は逆に雨が多かったんだけど、The Birthdayになってからは、野外ではほとんど無いんじゃないかな。まっ、雨が降ろうが、降るまいが、変わらず演るだけだけどね、俺たちは。

2009年は、その直前に急去した、元TMGEのギタリストだったアベさんに捧げられていますし、その年は苗場食堂でも苗場音楽突撃隊(池畑潤二[d]、松田文[g]、井上富雄[b])にゲスト出演されてます。

チバ

あれは、池畑さんに、「出ろ!!」って脅されて出たんだよな、たしか(笑)。

あと同じ2013年は、3日目のグリーン・ステージのトップバッターとして、THE GOLDEN WET FINGERSで出演されました。

チバ

また違ったバンドだと立ち位置も違うんで、見える景色も違うんだよ。あれは面白かった。

MG_4097 チバユウスケ、自身のフジロック出演歴から現在のフジロックの楽しみ方までを語る

先ほどのお話の中でも、やはり気になったのが、1998年の豊洲での第二回目のTMGEでのライブ中の中断でした。当時は、まだフェスでのスタンディングでの楽しみ方も、それほど馴染みが無かった印象があります。で、あの日以降、オーディエンス内でも、スタンディングでの安全な楽しみ方の自意識が芽生え始めた気がします。フェスでのスタンディングで自由に楽しむ為の無言のルールが生まれ始めたキッカケの出来事の一つであったような……。

チバ

どうなんだろうね……。ルールと言えばさ、それはそれで大事だとも思うけど、もっとむちゃくちゃで、好きに楽しめばいいと思うんだよ。変に自分たちや周りで無言のルールを作ってるじゃん、今は。それで楽しめているんだったらいいんだけど、なんかそれに縛られたり、自制しているようにも見受けられるところがあって。“それで本当に愉しめているんだろうか?”って疑問はあるよね。俺、個人的には、せっかく音楽を楽しみに来たんだから、興奮したら、もっとむちゃくちゃになってもいいんじゃないかと思っている。そんなこと言ったら日高さんに怒られちゃうかもしれないけどね(笑)。

無言のルールに従っているが故に、自由だけど自由に成り切れていないところが端から見ていて感じるところではあります。

チバ

ただ、俺たちがそこまで楽しませ切れていないところはあるのかもしれないけど。せっかくなんだから、我を忘れるぐらいの楽しみ方をしてもいいんじゃないかな。もちろん倒れたヤツが居たら起こしてやったり等のマナーや、危険なことやアブないことを避ける為の最低限のルールは必要だけど、あまりにもそこに縛られてもなぁ……。

“フェスに参加するには、ルールを守らなくちゃいけない”と、参加していない人たちまでもが、そのようなイメージを持っちゃっているところは見受けられます。なんかルールに敏感になっちゃって、お客さん同士が過剰なマナーの守り合いや自治をしているところも正直見受けられますからね。

チバ

それあるかもね。俺からすると<フジロック>は、“みんなどうして山登りみたいな格好しているの?”ってところも疑問だし。

最近はカジュアルになりつつありますが、まだそういったスタイルの印象はありますか?

チバ

まっ、準備や装備するに越したことはないからそれはそれでいいけどね。

それにしてもチバさんは、色々な会場でライブを見ていますよね。場内で、よくお見かけします。

チバ

観たいバンドがあったら観に行ってるよ。いや、楽しんでいる。そのぶん色々なところで迷惑をかけているのかもしれないけど(笑)。でも、<フジロック>は自分たちが演る楽しみはもちろんだけど、他のアーティストを観る楽しみもあるから。けっこうタイムテーブルは見てるよ。「なんだ、見たかったけど、俺たちとカブってるじゃん」とかあるし。

チバさんの場合、今でも充分に堪能している印象がありますが……。

チバ

まだまだだよ。ほんとはもっと色々と周りたいし、ほら、なかなか辿りつけないエリアもあるじゃない。そこも行ってみたい。いろいろエリアがあるからね、<フジロック>は。

これまでの<フジロック>で、最も印象的だったアーティストはどなたでしたか?

チバ

最近だったら(ストーン・)ローゼスかな。好きだったんだよ、昔から。見えなかったから、友だちに肩車してもらって観てた(笑)。あと、ライブはかぶって観れなかったけど、ポーグスのシェーン(・マガウアン)と会ったことは、忘れらんねぇな。自分たちの出番が終わってホテルに戻ったら、居たんだよ、シェーンが。しかも、えれえドロドロな姿で。俺、舞い上がっちゃって。着ているTシャツにサインを求めたら、「Help」って書かれた。

切実な訴えみたいですね(笑)。ちなみに<フジロック>で観たいアーティストはおられますか?

チバ

トム・ウェイツは観たいね。

では、今年だったら?

チバ

ウィルコだね。

チバさんから見た<フジロック>で、変わったことと変わっていないことがあればそれぞれ教えてください。

チバ

あんま変わってないんじゃないの。でも、苗場になってステージがたくさんできたし、それによっていろんな楽しみ方ができるようになったっていうのはあるかもしれない。それからずっと続いているわけで。<フジロック>がずっとある、それがいいことなんじゃないかな。

他のフェスと<フジロック>との違いは何でしょうかね? 

チバ

環境かな。特に苗場に移ってからの自然な環境がいい。あっ、あと飯がうまい。とは言え、俺、あんまり食べないけど(笑)。

今年20回目を迎える<フジロック>にメッセージをお願いします。

チバ

よく苗場って場所を見つけて、そこに根付かせて、やり続けてきたと思うよ。ホント凄い。ずっと続けて欲しいよね。<フジロック>20回目おめでとう!

チバさんにとっての<フジロック>って何でしょう?

チバ

何だろうね……。お祭りかな。夏の風物詩。自分にとって特別なものなのは間違いない。それは来ているお客さんにも言えるだろうし。あっ、あと、毎年出させてもらえるか、は気にはなる(笑)。“今年は俺たち、出れるのかな?”って。毎年、出れるのを楽しみにしているんで、ずっと続けて欲しいよね。

最後にお客さんにメッセージをお願いします。

チバ

めちゃくちゃかっこいいライブやるので来てくれ。ピース。

MG_4052 チバユウスケ、自身のフジロック出演歴から現在のフジロックの楽しみ方までを語る

interview&text by 池田スカオ和宏

photo by 横山マサト

music140217_fujirock1 チバユウスケ、自身のフジロック出演歴から現在のフジロックの楽しみ方までを語る

『SMASH go round 20th Anniversary』 FUJI ROCK FESTIVAL’16

2016.07.22(金)、23(土)、24(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場