〜子どもも大人もフジロックへ行こう〜

<フジロック>は今年で開催20回目を迎えます。当時赤ちゃんだった子どもが二十歳の大人になるほどにまで時が経過したと考えると、改めてその長い時間の流れに感じ入ります。

20年もあれば、人生には様々なことが起きますよね。ある人は学生から社会人になり、ある人は会社の中で昇進し、ある人は親になり、ある人は大切な人を見送ったかもしれません。これらの出来事は誰の身の上にも起き得ることですし、人間は時とともに成長や変化をしていく生き物だから<フジロック>を愛する人々の暮らしにも大きな変化がうまれていることでしょう。

例えば筆者の場合、この20年の暮らしの中で起きた最大の変化は母になったことです。今では伝説として語られる嵐の初年度の<フジロック>が開催された時は19歳の学生でしたが、37歳の時に俗に言うところの高齢出産を経験して母となり、現在に至ります。

<フジロック>へは渡英中と妊娠期間を除くほとんどの夏、仕事と遊びで参加してきました。多くの人がそうであるように、筆者にとっても<フジロック>に毎年行くことは当たり前でした。しかし、母になって初めて迎えた去年の夏は、参加する・しないについてかなり悩みました。まず頭によぎったのは、子どもを置いていくか、子どもを連れていくか。連れて行けないのならば、いっそのこと行くのをやめようか。産後数ヶ月だった昨年の春くらいから、こんなことばかりをぼんやりと考えていたものです。

母になってから多くの気づきがある中で、最も痛烈に感じているのは「その立場にならないとわからないことがある」ということです。頭では分かっていたつもりでも、実際にはまったく分かっていなかったという物事に多く出くわすので、否が応でも想像と現実の違いを思い知ります。

また、子育ては未知体験の連続なのですべてに戸惑いますし、困ることもあります。常に「この子に何かあったら」という心配から、緊張しっぱなしで慢性的な疲労困憊状態でもあります。

そんな日々の中で、例えば、席を譲ってもらえた時の有り難さや、子どもがぐずって遅刻した時に快く許してもらえたときの安堵感や感謝の気持ちは、母になる前には味わったことがないものでした。

それから、自分の経験したことのないものに子どもを巻き込んで踏み込むのには、それ相当の勇気と覚悟を迫られるようにもなりました。自分ひとりならどうでもよかったことや簡単にこなせたことでさえも、高いハードルとなってしまったからです。

だから去年、筆者は息子を<フジロック>へ連れて行けませんでした。あの山で、息子を連れているイメージと自信を持てなかったからです。悪天候になったら? 虫に刺されたら? ご飯は?

あれから一年が経ち、息子は1歳半となり、自己主張もできるようになってきて、しっかり歩けるようになりました。最近は彼のキャラもだんだん分かってきましたし、母としての役目も少し俯瞰して考えられるような余裕も持てるようになってきました。相変わらず失敗ばかりしていますが、周囲の人に支えられ、毎日成長する息子と楽しく暮らしています。

冒頭にも書きましたが、フジロッカーズの中にも親になったり、孫が生まれたりとそれぞれのライフ・スタイルに変化が生じていることでしょう。そして、昨年の筆者のように参加に踏み切れず、諦めたり、足が遠のいてしまっている人々も大勢いることと思います。

筆者は<フジロック>を“大人の遊び場”という認識でこれまで参加してきていたので、母になったときに「はて、子連れは<フジロック>に行っちゃ行けないんだろうか?」と思ったことがありました。しかし、実際はそうではないようです。

<フジロック>の生みの親であるSMASHの日高代表は、瓦版で現在公開中のインタビューの中で「三世代に来て欲しい」と明言しています。また、会場内にはKIDS LANDという子どものためのスペースが森の奥に開拓、用意されていますし、今年は中学生以下を無料(要保護者)としていますが、それ以前も小学生以下はずっと無料だったそうです。

以前は母の立場ではなかったので、それらにまったく気づきませんでしたが、<フジロック>は子どもと親世代に向けたホスピタリティをずっと持っていて、子連れに対してウェルカム! というメッセージを常に発信していたということを今回改めて知りました。

ロック・ミュージックとは、人生に多大な影響を及ぼし、夢も希望も与えてくれる唯一無二の価値あるものですが、悲しいかな、一般の学校で教えてもらえるものではありません。よってロックの素晴らしさを子どもに伝えたい親たちは、自らその環境を作るか、その環境が有る場所へ子を連れて行く必要があります。それを叶える環境として<フジロック>を見つめ直してみると、これ以上ない最高な場所のように思えてきませんか?

自分の血肉になっている好きな音はもちろんのこと、世界一流のミュージシャンが鳴らすホンモノの音を大自然の中で子どもに聴かせることの出来る喜びを感じたり、KIDSの森で普段触れられないような楽器を手にして音を出したり、プレイパークで思いっきり遊ぶ子どもたちを、同じ音楽が好きな親同士で見守りながら楽しむという、ちょいゆるスタイルに変化させて参加するのもいいものかもしれません。それに、音楽という共通の趣味を持った親同士で新たなママ友・パパ友を見つけることができるかもしれませんし、子どもたちはフジ友100人を難なく作れることでしょう。

親になったら参加を諦めるのではなく、子どもと一緒に楽しむ自分スタイルを新たに見つければいいのではないでしょうか。もちろん、親の道楽であることを忘れずに子を優先して、無理せずにゆったり、どっしり、自由に遊べば、例え目当てのミュージシャンがすべて見られなかったとしても、子どもも楽しんでいるし、<フジロック>に来られたし、まぁいっか、と思えるような気がします。

さて。筆者自身のことに戻りますが、今年の<フジロック>をどうしようかと考えていた今年の春先、この「こどもフジロック」企画のお話をいただきました。<フジロック>は息子が3歳になってからにしようと漠然と思い描いていたので少し悩みましたが、渡りに船、身をもって体験してみようと決意。まず息子に対して「母は今年から君を連れて<フジロック>に参加しようと思う」と説明をしました。

おそらく彼は理解していないと思います。彼の参加は母の勝手な解釈と判断となってしまいますが、好奇心旺盛でやんちゃな彼のことなので、<フジロック>に行けば大好きなお外で大好きな音楽に触れ、多くのモノを吸収し、大いに楽しむはずです。あとの問題は母の心構えと準備、そして当日の状況判断だけです。

今後この企画では、タイトル通りすべての内容が「子どもを<フジロック>に連れて行こう」に続くものになる予定で、「子どもを<フジロック>に連れてくるとこんな良いことがあるよ」という話や「こんな風に子どもと遊べるよ」「こうしたらちょっとは楽できると思うよ」といった子連れフジロッカーズとプレ子連れフジロッカーズに役立つ耳より情報をお届けしていきます。

その中で筆者は「初めて子連れで<フジロック>に参加する母ライター」として、子連れフジロッカーズへのインタビュー取材や当日までの準備の流れ、本番中の現場レポート、そして先陣たちがネット上に残してくれている情報を集約してご紹介する担当に任命されました。本番まであと2ヶ月、自身の持つ疑問や不安もテーマに盛り込ませていただき、それらをできるだけ解消して本番を迎えたいと考えています。

最後に。人間は皆、子どもだった時期があり、もう記憶にはない遠い昔にはきっと多くの大人たちに支えられ、守られてきたおかげで今があるんですよね。子どもが嫌いな人からすれば「は? <フジロック>で子どもかよ?」となるかもしれませんが、どうかそうは思わずに、ほんの少し優しい心持ちで見守っていただけたら有り難いです。困っている親子を見つけたら手を差し伸べ、ダメ親がいたらきっちり叱ってあげられるような、それぞれが快適に楽しめる<フジロック>を作り上げられたらと願い、この企画に参加します。

写真提供: (株)スマッシュ

早乙女 ‘dorami’ ゆうこ/freelancer

音楽を軸に、コンサート制作の現場アシスタントや翻訳リサーチ、ライター活動しています。目下の興味は「知育」。最近、親・子の片付けインストラクターとしての資格を得ました。そちらの分野でもいずれ活動できればと1歳児を抱えて勉強中です。

Pocket
LINEで送る

Recommend

Start typing and press Enter to search