フェス好きに大好評のフリーペーパー「Festival Echo ’15(フェス・エコ)」と富士祭電子瓦版のコラボ企画vol.5。フェスエコに掲載されたceroのインタビューを瓦版でも公開! 2011年にルーキーとして出演してから4年。ceroにとっての<フジロック>とは?

TOKYOから発信される
音世界の行方

2011年にルーキー・ア・ゴーゴーに出演。そのライブが認められ、翌年にはフィールド・オブ・ヘブンに登場したcero。都市生活を描く歌詞。ポップさとアバンギャルドさを併せ持つサウンド。進化するバンドの「今」が<フジロック>で体感できる

Interview:cero(高城 晶平、荒内佑、橋本翼)

cero-002 cero、ルーキーからの飛翔【FESTIVAL ECHO ’15×瓦版特集 vol.5】

ルーキーからの飛翔

2011年にルーキー・ア・ゴーゴーに出演したcero。ステージに立ったときは、どんな感覚でしたか?

高城晶平(以下、高城) ルーキーステージのトップバッターだったんですよね。目の前ではサーカスみたいなものをやっていて。綱渡りとかオートバイとか、僕らの音楽よりも派手で。このイリュージョンに音楽で対抗するのは、マジで難しいなぁと思いながら、ライブをやっていました。

<フジロック>に出るのは、ひとつの目標だったのですか。

高城 出たいと漠然と思っていましたね。今でこそ、全国各地でフェスが開催されていますけど、僕らがバンドをはじめた頃は、大きなフェスと言えば<フジロック>でしたから。2011年はファーストアルバム『WORLD RECORD』をリリースして<フジロック>に出演できたんですけど、実はそれ以前にも応募しているんですよ。落っこちちゃいましたけど(笑)。<フジロック>にはお客さんとしては行かんぞ、出演者として行くぞってずっと思っていたんですよね。その思いが叶ったのが2011年でした。

ceroの音楽から洋楽のエッセンスを感じます。しかも野外で聞くのにもはまる音。音楽ファンのひとりとして、みなさんは<フジロック>へ行っていると勝手に思っていました。

橋本翼(以下、橋本) 多くのバンドマンは、「出演者として<フジ>へ行く」という気持ちを持っていると思いますよ。
高城 プライドなんでしょうかね。呼ばれるまでは行かない、と。そんなこだわりを捨ててもいいかって思っているときに応募してみたら通った。もちろん出られると決まったときはとてもうれしかったですよ。

そして2012年には、ルーキーから飛躍してヘブンに出演を果たした。

橋本 ルーキーも<フジロック>のひとつのステージなのですけど、まったく違っていましたね。
高城 でも俺らは、2012年に<フジロック>へ行くまではルーキーとヘブンの違いをそれほど感じていかなったんですよ。でも周りにいるスタッフの気合いが違っていて。「これは自分たちも気合いを入れてやらないとヤバいんだな」みたいな感じになったんです。
高城 ライブはやっていましたけど、まあ誘われるがままという感じで活動していました。橋本くんが音楽制作をパソコンでやれるようになったこともあって、一念発起して、自分たちのアルバムをちゃんと作ろうということになったんですね。それが『WORLD RECORD』なんです。
橋本 僕は遅れてバンドに参加したんですね。 ceroは、音楽性がけっこう変わるんですよ。変化するバンドだから、今の状態を記録しておきたいって思ったんです。それがきっかけでした。レーベルも流通も決まっていなかったんですけど、録りたいという気持ちが大きくなって、レコーディングをはじめたんです。

フジロックで自由を味わう

3枚目のアルバム『Obscure Ride』が5月後半にリリースされます。過去の2作よりも、ソウルっぽさが出ていたというのが印象です。

高城 まさにそういうものを目指したんです。常に変わっていくバンドで、その都度にモードが生まれるんです。前のアルバムを出してから2年半も経過しているんですけど、ソウル的というかブラックミュージック的なモードに入っていったんですよ。もっとフィジカルなものをやりたい。そのひとつの形になったのがこのアルバムなんです。

3人が同じ方向を見ている感じなのでしょうか。

橋本 高城くんと荒内くんは、なんとなく同じものを聞きはじめていたりするんですけど、僕は違うんですよ。
荒内祐(以下、荒内) ブラックミュージックに傾倒していったのは、ロバート・グラスパーの『ブラック・レディオ』の影響が大きかったのかもしれませんね。
高城 ふたりは向かう方向が見えてきたらグッと行きがちなので、そこを橋本くんがそれまでのceroとしての音とうまくバランスをとってくれている。

今年の<フジロック>は、『Obscure Ride』が中心となる?

荒内 そうですね。フェス向きじゃない曲が多いんですけど、それでもなんとかうまく聞かせたいと思っています。
高城 フェスってどうしても画一的なノリになってしまうことが多いと思うんです。でも<フジロック>は違っていて、耳の肥えたお客さんが多いんでしょうね。そして自分の好きな音楽をしっかりと持っている。いろんな音楽が好きな人たちが、たまたま<フジロック>で一緒になる。そんな人たちが、僕たちのライブで少しでも自由になってくれたらなって思います。

<フジロック>の魅力とはなんだと思いますか。

橋本 一番驚いたのは、あれだけ人がいて、ゴミが落ちていないということ。
高城 確かにそう。いい場所に見合う自分になりたい。みなさんが、そう思うんでしょうね。民度があがっていく。願わくば、<フジロック>だけではなく、普段の生活もそういう場だったらいいんでしょうけどね。その場所に見合う自分になるために、自分を高めていく。
橋本 飯を食べて、お酒を飲んで。気になる音が鳴っているほうへ足を運ぶ。僕は音楽の趣味が古くて、現役の人の音楽をあまり聞いていないんです。だから不意に古い要素を取り入れたライブに出会うと、それだけでうれしくなってしまって(笑)。<フジロック>はそんな偶然の出会いもありますし。
荒内 ジェイムス・ブレイクを橋本くんは知らなかったんですね。でも一緒に行って、並んで見ていたんです。そのライブは最高で、「良かった〜」と横を向いたら、橋本くんが号泣していて。
橋本 本当に最高でした。
高城 「最高だった」と、めっちゃ純粋に涙を流していて。あれが僕にとっても<フジロック>の一番の思い出です(笑)。

最後に、今年の<フジロック>で見たいアーティストを教えてください。

荒内 FKAツイッグスは見たい。
高城 あとはジョーイ・バッドアス。ライドも見たいし、日本人では岡村靖幸さん。
橋本 僕はトッド・ラングレンとか上原ひろみさんとか。
高城 <フジロック>へ行ってもダラダラしている時間が多いんですね。同じダラダラでも、ライブを見続けながらダラダラしたいと思っています。

Text by Sukaru Kurisu
Photo by Kaoru Ito
festival-eco cero、ルーキーからの飛翔【FESTIVAL ECHO ’15×瓦版特集 vol.5】

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Profile:cero

2004年に結成。現在のメンバーは、高城 晶平、荒内佑、橋本翼の3人。Contemporary Exotica Rock Orchestraを略してcero。メンバーによると、「これは後付けで、そもそもは宮沢賢治の物語からとったバンド名」とのこと。2011年にルーキー・ア・ゴーゴーに出演。そのライブが認められ、翌年にはヘブンに連続出場を果たした。今年で3回目の<フジロック>。6月上旬からはじまるリリースツアーを終え、新しいバンドの音を成熟させてから、<フジロック>へ登場する。
詳しくこちら:http://www.geocities.jp/cerofan/

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『Obscure Ride』

前作『My Lost City』からおよそ2年半ぶりにリリースされるサードアルバム。自分たちを「変化を続けるバンド」と言う通り、ジャンルレスなサウンドを展開している。ポップでグルーヴィー。「ブラックミュージックのモードに入って」制作されたアルバム。