10月7日、8日に静岡県富士宮市の朝霧アリーナ・ふもとっぱらにて開催された「It’s a beautiful day〜 Camp in 朝霧 Jam」。この日本におけるキャンプインフェスのパイオニアは、アジア最大規模を誇る野外音楽フェスティバルのフジロックフェスティバルを主催するスマッシュによって運営されている秋フェスの代表格です。
今年で17回目を迎えた朝霧Jamですが、「フジロックには毎年行くけど朝霧には行ったことがない」という人が筆者の周りにもいます。
良いものは良いと伝え、多くの人とシェアしたいというライターとしての想いと、久しぶりに自分も朝霧Jamへ参加したかったこと、そして息子もそろそろキャンプ・デビューできるだろうと思えたこと、さらに今年はこどもフジロック的ヘッドライナーである「MCごはんとDJみそしるとケロポン定食」が今夏のフジロックに続いて朝霧Jamにも出演するというこの好機を、ケロポンズのビッグファンである息子と筆者が見逃すのはいかがなものかという疑問が相まって参加に至りました。
そこで今回は、フジロックを愛するこどもフジロックご愛読の皆様に『こどもフジロック番外編「2歳児とのキャンプインフェスの過ごし方」〜朝霧Jam初体験記〜』をお届けします。
今回、朝霧Jamに参加した家族構成は次の通り。
①長男・ドラゴン(2歳11ヶ月/フジロック歴:2回/アサギリ歴:初!)
②母(兼ライター/フジロック歴:1回目から16回/アサギリ歴:10年ぶり?3回目(子連れ参加歴:初!))
改めまして、自称・こどもフジロック推進委員会書記、そして朝霧Jamの隠れファンである母ライターのドラミです。ファンであるわりに参加できないことが多く、約10年ぶりに朝霧Jamに参加しました。子連れでは初参加です。
そして、我が息子・ドラゴン。今回が朝霧Jamデビュー、且つ、初キャンプ体験となりました。彼は前髪短協会員(※詳しくはケロポンズの楽曲を参照)でもありますし、2歳児で、しかも朝霧Jamでキャンプ・デビューを果たせるならば、それは筆者の施す音楽英才教育上、非常にクールなことであると考えました。
早速ドラゴンに「ねえ、ドラゴン。キャンプいく〜?」と問いかけたところ、「キャンプゥ〜? イクー!」という元気のいい答えが返ってきたので参加決定にかかった時間は数秒でした。もちろんキャンプが何なのかはわかっていなかったでしょうが、行けばわかるのでノープロブレム。これが早乙女家のやり方です。
我が家はドラゴンと筆者の二人家族。シングルマザーだからキャンプには連れて行けないなんてことは言いません。しかし、暴れん坊将軍の極みである3歳に近い2歳児を抱えてのキャンプを筆者一人でハンドリングするのは難しいと予想しました。
そこで今回も、過去2回のフジロックに渋々ながらも参加してくれた頼みの綱である実母ファルコンに、今回も来てくれるんじゃないかしらんという淡い期待を抱いて出動要請コールをしましたが、それはそれはキッパリと「キャンプ? お断りします」という完全なる“No”を出されました。
「キャンプ」
ここですよね、ここ。のっけから核心に迫りますが、キャンプインフェスである朝霧Jamへの参加にはキャンプが必須です。中には日帰りする人もいらっしゃるのかもしれませんが、それでは朝霧Jamの良さの半分も体験していないことになります。
もともとアウトドアが好きではないファルコンですから、フジロックに参加してくれたことが奇跡的なことと受け止めながらも、ぎりぎりまで、かなりしつこく何度も聞いてみましたがその後もファルコンの首が縦に振られることはありませんでした。昨年の苗場デビュー時のように、八代亜紀さんが出演していたら話は違っていたかもしれません。
しかしながら朗報です。
前置きが長くなりましたが、ここから先が本題であり、朗報レポートが始まります。朝霧Jamでのキャンプは、フジロックのそれとは異なりますし、幼い子連れでも十二分に快適でした。
今回筆者が選んだのは「場外・ふもとっぱらオートキャンプ駐車券」を使った、その名の通りオートキャンプです。ライブ重視であれば、今年から登場したレンタルテントを利用するのが最も楽な朝霧の楽しみ方でしょうけれど、そこはやはり子連れですからライブよりも子ども、次に寝床となるキャンプを優先して考え、子連れキャンプをする上で最も楽な方法と場所を選びました。
ただ、予期せぬアクシデントなどもあったせいでライブのほとんどを観ていませんが、それでも充分に楽しめ、満足してしまった親子で初のキャンプインフェス体験となりました。フジロックでは味わえない、朝霧Jamならではの魅力を息子とたっぷり体験してまいりましたので漏れなくレポートしてまいりましょう。ちょっと長いですが、家事の合間に、仕事の合間にでもぜひご覧ください。
■10月7日(土)初日 天候/曇り→雨
都内北部を始発で出た友人に合わせ、朝6時40分に我が家で集合し、積み込みをして7時には出発。9時には会場に到着する予定…だった初日。
まず予定を狂わせたのは、子連れの車移動には欠かせない“アレ”だった。
○事件その1 <チャイルドシートが動かない事件>
集合時間に友人らが遅れて到着。すぐに荷物の積み込みを始めるも思った以上に荷物が多く、チャイルドシートの位置をずらす必要に迫られた。しかし設置から約3年、取り付け方など覚えているわけもなくウンともスンとも動かない。
メーカーが公開している映像を確認しながらやってもダメ。結局、悪戦苦闘すること1時間、チャイルドシートなど触ったこともない独身男性である友人が解読に成功し、ものすごく分かりにくい場所にあったロック解除ボタンを遂に発見、ポチっと押したらスルリと回転して引っこ抜け、数分で別座席に固定できた。
ISOFIXが悪いわけでも、そのメーカーが悪いわけでもないけれど、問題視していなかったことが問題になると本当に厄介だ。早くも教訓一号“事前にあらゆる想定をしておくべし”が頭を過ぎった。
そんなこんなでようやく出発できたのは、なんと朝霧到着予定時刻の9時! 皆に謝り倒してこれから高速に向かおうというとき、友人Aがスマホを見ながら口を開いた。
「なぁ、東名が通行止めやで」
○事件その2 <東名高速道路通行止め事件>
先発隊から「東名で今、目の前車が事故。だと思ったら、また違う車が事故」という情報を得ていたので、
「は? 事故渋滞ではなくて?」
と聞き返すと、東名高速道路で大事故が起きた関係で我らが通過する予定だった区間の一部が通行止めになっていると説明してくれ、その事態を全員が把握。うそ〜ん…と声に出しながら全員でスマホを使って別ルートを検索。協議の結果、中央自動車道で向かうことにした。
この決断が悪かったのか、ただ単に三連休と東名通行止めの影響だったのかは分からないが中央道は大渋滞で通常の倍の時間がかかった…。
教訓“事故渋滞、連休渋滞、そして通行止めをも想定せよ”
○事件その3 <スーパーマーケット激混み事件>
事前に友人が調べておいてくれた巨大スーパーマーケットは河口湖I.Cを降りてすぐの場所にあった。事前にメモなどせず適当に買えばいいというフリースタイルで思いつきの食材をポンポンと買い物かごへ投入し、素早くレジへ。するとそこには大行列が!
朝霧Jamのオーディエンスもいたかもしれないが、秋キャンプや日帰りBBQなどの行楽客が食材を山ほど抱えて並んでいたのでレジ待ちに30分以上かかった。さらに考えなしで買った食材は余らせる始末。
教訓“必要以上を買い込まず、買い出しは前日までに済ませよ”
○会場到着〜テント設営
15時、スーパーから1時間ほどで場外キャンプ場に到着。先発隊の、朝霧歴の長い3ファミリーのパーティに混ぜてもらい、すぐさまテント設営を開始した。
音楽好きの仲間とワイワイ来ていた独身時代は、グループに誰かしらキャンプマスターがいたので誰かがテントを立ててキャンプ飯を作ってくれた。しかし、結婚や子どもの誕生によって、キャンプはファミリー単位へと切り替わる。
人に頼っていられた時代は終わり、当人のスキル如何に関わらずテントを自立させるスキルを求められる上、出来て当然みたいに流れる子連れキャンプでの空気感は育児とまるっきり同じだと思った。それにどちらも奥が深いし、終わりや正解はない。それを素直に受け入れてしまえば楽しめるようになるのもきっと共通している。だからこそ、ファミリーキャンプは人気なのかもしれない。いやあ、本当に楽しい!
しかし、楽しいとばかりに脳天気でいられるわけではない。ドラゴンは初のキャンプとあって、キャンプ場という独特の自然空間の中に大好きな車と見慣れぬテントを見て回るのに大興奮でひっきりなしに動き回っている。今回はそうした状況を予想してドラゴンに鈴を着け、鈴の音で彼の動きを察知できるようにした。
我らが寝床にしたキャンプ地のふもとっぱらは、オートキャンプ場なので車の出入りが常にある。だから、子どもから目を離すことは絶対にできないので、どんより雲からポツポツと降り始めた雨とふもとっぱらの地盤の堅さに泣かされつつも、ドラゴン観察を友人らに代わる代わる頼みながらなんとか一人でテントを組み立て、本降り前に完了できた。
今思えば、この時点で会場へ向かい、朝霧Jamの誇る地元飯を堪能すれば良かっただけであったのに、なぜか我らは「あれほど並んで買った食材なのだから使わねばならぬ」と思い込んでしまっていた。この痛恨のジャッジ・ミスにより、ドラゴンだけではなく筆者含む大人たちまでもが極限の空腹に達し、さらに朝4時からの活動での疲れが出てきて一同が一気に不機嫌になってしまった。その上、雨が駄目押しし、ドラゴンは余力全てで愚図り始めた。
なんとかご飯を食べ終えた頃、雨は小降りになったもののすっかり暗くなってしまっていた。最後のベルセバだけは絶対に観ようと奮起して、片付けもそこそこに身支度を開始した矢先、暗闇から「ウワーーーーン!」という鳴き声が響いた。