■7月30日(日)本番3日目

○朝
最終日。こどもフジロック的ヘッドライナーである「DJみそしるとMCごはんのケロポン定食」を見る前に、キッズランドからジプシーアヴァロン・ステージまで子どもたちが行進する“エビカニ大作戦パレード”に参加するため、宿で朝ご飯をしっかり食べてキッズランドへ。

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パレード開始まであと少し。大人ならダラダラとその場でやり過ごす短いその時間さえも、余すことなく全力で遊ぶ子どもたちに混ざってドラゴンも遊び始めた。
人見知りはもともとしない彼だが、他の子どもや大人たちに自ら働きかけて面白いことを探して遊ぼうとするドラゴンの姿は初めて見た。

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さあ、パレードが始まるよ! という時に事件が起きた。
狙っていた(らしい)ピアニカを他の子が先に持っていったことに腹を立てたドラゴンが、そのピアニカをよこせと泣きじゃくり始めた。他の楽器を使うように促すもまったく聞き入れる様子はなく、あまりのドラゴンの泣きっぷりにピアニカを持っていたお子さんと親御さんが譲ってくださるという事態に。本当に申し訳ないと感じながらもお礼を言い、なんとかパレードに参加。

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大勢の子どもたちが、手作りの楽器やカニツメを手に行進する。

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ジプシーアヴァロン・ステージに到着し、カニツメを装着して憧れのケロポンズの登場を待ちわびるドラゴン。

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ライブ開始が正午ということでお腹が空いてしまったドラゴンは、隣でお菓子を食べていたかわいこちゃんの親御さんに詰め寄って欲しいアピールを開始。止める間もなくお菓子をわけていただき、母はお礼を言い、親フジロッカーの深い優しさを噛みしめた。ほどなく、そのかわいこちゃんがとてもナチュラルにファルコンの膝の上に乗ってきて、二人仲良く食べはじめた。

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○昼
待ちに待ったライブがスタート。かつてないほどに客エリアは子どもと大人でぎっしりと埋まり、ギュウギュウの中だが子どもたちは楽しそうに踊り始めた。

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ドラゴンの目もいつも以上に輝いていた。途中、雨が激しくなった瞬間があったものの、しっかりと雨対策をしていた多くの子どもたちは雨にも負けず、一所懸命にステージを見つめていた。

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ライブを楽しんだ後は、朝霧食堂でぐるぐるウインナーを買ってランチタイム。近くにいたフジロッカーズとトンボをめぐって遊んでもらい、楽しいひとときを過ごす。意外なことに、子連れファミリーよりも大人フジロッカーズたちと交流できたことの方が断然多かった。

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○夕方
その後はまったりと過ごして、森の音楽会のフィナーレに参加。
昨年は客席エリアでウロウロしていたドラゴンだったが、2歳となった今年はステージ上のポンちゃん前をガッチリ陣取って、客に背を向け、ポンちゃんだけを見つめて踊るというなかなかの狂信ぶりを発揮。夢中で自己世界(もといドラゴン&ポンちゃんワールド)にドップリと入り込むドラゴンの姿を見ながら、人はいつ、どのタイミングでオーディエンスとアーティストとのボーダーを知り、意識できるようになるのだろうかと考えた。我が子をしっかりと観察していればそれも知れるかもしれないなという思いを巡らせながら、来年もまた、この森に彼を連れてこようと心静かに決めたのだった。

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その後も遊び足りないドラゴンは、滑り台を駆け上がり、スタッフのお姉さんと輪ゴムで遊び、森を逃げ惑い、果ては泥水にダイブしてびしょ濡れになってメリーゴーランドに乗せてもらい、楽しすぎて放心状態に。間違いなくやりきったところでドラゴンの2度目のフジロックは終了した。

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ドラゴンとファルコンを見送った母はキッズランドにしばし残り、写真を撮り続けた。

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○夜
この日もファルコンのおかげで独身時代にフジロックへ一緒に来ていた友と合流してLORDE、Björk、G&G Miller Orchestra plays Elvis Presleyを観ることができた。帰りがけにはクリスタルパレスの中にも入ったりして、夜のフジロックを妊娠前以来、実に4年振りに楽しませてもらった。

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2度目となった子連れフジロック3世代ファミリー参加は、まったく気負うことなく、心にゆとりをもって楽しむことができました。

まず、未経験ゆえの過度な不安からはすっかり解放されていました。そして昨年は乳児だった息子も幼児へと成長しているため、準備編(「こどもフジロック 〜準備を楽しもう! 2017〜」)での記載通り、所持品には変化がありましたが取り分け困ったことはありませんでした。準備すべきものもおおよそ見当をつけることができましたし、昨年学んだ「わからないことは身近な経験者に聞いたり調べればいい」を遂行すればいいだけでした。

ドラゴンについて振り返りますと、欲しいものは欲しい、協調性ゼロの、自我に目覚めたての2歳児。そのため、ピアニカよこせ事件やお菓子ちょうだいアピールなどで他の参加者に影響を及ぼした時には親としてお礼と謝罪をすることに徹しました。皆様の優しさと寛大な心のおかげで一家は救われました。

また、今年はドラゴンの観たいアクトがありました。
昨年はケロポンズをケロポンズと認識できておらず、音に合わせて手を叩いていた程度でしたが、今春、母のフジロック業務がスタートした頃にケロポンズのMVをドラゴンに見せて「覚えてる?」と聞いたところ、薄ら記憶にあるような様子で真剣に画面を見つめ、リプレイを要望すること毎朝、毎晩。保育園でも絶叫しながら踊っているくらい、今やケロポンズのビッグファンです。
そのためフジロックからの下山後、母は泥だらけになったカニツメのメンテナンスを、ドラゴンはケロポン道を極めるべく「ミジカクシマショー、キッテ!」と志願したので前髪短協会員になりました。

最も肝を冷やしたのはキッズランドのシンボルである木の滑り台。昨年までは少しも登れなかったのに、周りができるなら自分もできると思う彼は、やってのけてしまいました。近所の公園では体験できない挑戦を成し遂げたドラゴンは、トップの写真の通り、自信に満ちて、誇らしげな顔を見せてくれました。

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そしてもうひとつ、ドラゴンを通して、子ども同士のコミュニティ・助け合いを多々観ることができました。小さなドラゴンが困っていると、大きな子が手を差し伸べて助けてくれる。それは1度や2度ではありませんでした。そうした光景を目にした時、やっぱり子どもを連れてきて良かった! 連れてきて正解だった! と強く思えましたし、フジロックとは子どもがこうした経験をできる場であると知ることができ、感動も覚えました。

大人が手出し、口出しをぐっと堪え、子どもの力を信じ、一歩下がって見守るということは、こうした子ども同士の助け合いや年齢も性別も超越した一期一会の出逢いを大切にすることにも繋がるのだということを2年目にして認識するに至りました。

それから、仕事仲間がファミリーを連れてキッズランドに遊びに来てくれた時、彼の5歳の長男が輝く瞳で一心に遊んでいたので「キッズの森がよく似合うお子さんですね」と言うと、普段は極度の綺麗好きで泥などが手につこうものならすぐ洗いたがるのに、キッズランドでは何かが吹っ切れた様子で快活に遊び始めたとのことでした。

「これまで観たことのない息子の姿を観られたのでここに来て本当に良かったです」

彼の言葉は昨年の初子連れ参加時の筆者の思いと同じです。
フジロック・マジックは子どもにも大人にも平等に、キッズランドだけではなくフジロック会場中で起きていることでしょう。自分、そして子どもの新たな可能性を知れる唯一無二の音楽空間。だから、少しばかり大変でも、子連れフジロックはやめられません。

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実母・ファルコンもまた昨年の経験を活かし、ご飯やドリンクをすぐに買えるようにと千円札を多数準備した他、ガラケーでは写真を撮るのが面倒だったとのことで、流行に乗って写ルンですを所持して参加してくれました。

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今年取材した母フジロッカーたちも話していましたが、母と子の写真をなかなか撮れない家庭が実は多いようで、我が家もドラゴンと筆者のツーショット写真が非常に少ないのです。しかし、今年のフジロックではファルコンのおかげでドラゴンとのお気に入りの写真が1枚増えました。母・ファルコンにはすべてにおいて感謝しかありません!

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天候は雨でしたが、独身時代はもっとひどい荒天のフジロックも経験済み。そのせいかAPHEX TWIN時の土砂降り以外はそれほど気になりませんでしたし、ドラゴンは常に汗と泥に塗れていましたから我が家にはあまり影響を及ぼしませんでした。

特別なことはなにもせず、ただ、フジロックという特別な空間に息子と母と自分の身を置くこと。これが毎年できるだけで極上の夏休みを過ごすことができるということを2年目にして確信しました。

フジロックに限らずですが「親になったから諦める」のではなく、これまでの自分の思考や行動をほんの少し変えてみることで新たな「子どもと一緒に過ごす別のカタチ」を見つけられることもあると思います。フジロックという素晴らしい空間経験を多くのファミリーにも体験して欲しいと強く願い、今後も子連れフジロック参加者に役立つ情報発信やシェアを皆さんと一緒にしていきたいと考えています。

また、マナー向上が叫ばれた今年のフジロックでしたが、子連れの場合は自分たちのことに手一杯のため、周囲を観察したり、声がけをしてコミュニケーションを楽しめるほどの余裕がない参加者が多いと思われます。それに一人一人がしっかりと行動すれば問題は起きないはず。ですから、まずは自分と同行者の面倒を見た上で他人と自然に迷惑をかけぬように行動すればいいだけのことだと、シンプルに考えていきませんか?

しかしながら、一方ではイヤーマフも付けさせずにグリーン・ステージ最前列で幼児を抱えて楽しむ大人、入口ゲートで配布されたタワーレコードのゴミ袋をレインコート代わりに子どもに着せて雨の中夜遅くまで場内を連れ回している大人、赤ちゃんを抱えていることを理由に、上の子と思しき5歳位の幼児に人混みと大雨の中を一人で自分の忘れ物を取りに行かせる大人の無責任さについては言及し、改善を促していかなければならないでしょう。
連れてこられた子どもたち全員がフジロックを手放しで楽しめるように、自分にできること、そして皆さんとできることを共に考えていきたいです。

では皆さん、どうか元気で無事に、来年もフジロックへ参加できるように健やかにお過ごし下さい。
それではまた来年、苗場でお会いしましょう!

取材・写真・文=早乙女 ‘dorami’ゆうこ
以下、写真
ケロポンズ、DJみそしるとMCごはん=ⒸTsuyoshi Ikegami
GORILLAZ、APHEX TWIN、=Masanori Naruse
QUEENS OF THE STONE AGE、LORDE=Yasuyuki Kasagi
BJÖRK=Santiago Felipe

<こどもフジロックFacebook>では、役立ち情報のシェアを呼びかけています。子連れで不安に感じていることなどを、子連れ参加経験のある方には体験談をシェアしていただくことで、子連れ参加がしやすくなるようにするための【こどもフジロック】プロジェクト。想い出を振り返りながら、来年に備えて今年の情報シェアを!