AVALONでのライブも森の音楽会も、本当に素晴らしいステージでした。さて、前回はケロポンズとフジロックについてお話を伺いましたが、プロフィールには「謎のスーパー・デュオ」とあるケロポンズ。今回はその謎を解明するべく、ミュージシャンとしてのケロポンズについてお訊きします。まず、お二人の出会いは?
ポンちゃん | 大学4年の時、トラや帽子店(*以前ケロちゃんが活動していたバンド)をお客として観た時に、親も子どももそれぞれに楽しめるこんなバンドがいたんだって衝撃を受けたのが最初です。 |
ケロちゃん | 毎年御殿場で開催されているクレヨンハウス、メリーゴーランド、メルヘンハウスという3大絵本専門店による「サマーカレッジ」というイベントにトラや帽子店として出演したのをポンちゃんが観てくれていて。ライブ後、すごく可愛いぽよっとした人がやって来たから「うわー、かわいいー!」って声をかけました。そのグループの中で一際弾けてたから。 |
ポンちゃん | 大きかっただけなんですけどね(笑)。私からすれば講師だったので、みんなで一緒に写真撮ってもらったりとかしてて。 |
ケロちゃん | 不思議な出会いだと今でも思っているんです。 |
ポンちゃん | 不思議なんですけどね、ほんとに。当時トラやがまだ広島に来たことがなく、チケットを手売りすれば呼べると聞いて友達と主催してトラやを呼んだり。その後、大学卒業後に上京したんです。 |
ケロちゃん | その頃、ソロワークのパネルシアターで伴奏してくれる人を探していて、近くに住み始めたポンちゃんに声をかけました。教員採用試験も受けたって聞いていたし、体から弾けるリズム感からもなんとなく弾けるんじゃないかなと。 |
なるほど。しかし、なぜケロポンズを結成しようと?
ケロちゃん | 1998年にトラや帽子店がほぼ解散状態で休業をしてしまって。でも私はまだ、トラやみたいな、子どもも大人も解放されて楽しめるステージをやりたいと思っていたんです。そこで当時(パネルシアターの)伴奏をやってくれていたポンちゃんが、伴奏だけじゃなくてもっと前に出てくればいいんだ! と思って「一緒にやろう!」と誘いました。 |
そうして結成されてから17年が経過したわけですが、ケロポンズは海外レコーティングも経験されているんですよね?
ケロちゃん | それはポンちゃんが仕掛けたっていうか、「ニューヨークで録らない?」って言い出したんですよ。 |
ポンちゃん | 中川ひろたかさんのレコーディングを手伝いに行ったときに、ニューヨークから帰国されていたキーボード・プレーヤーの徳家敦さんが参加されていたんですよ。「ニューヨークってどうなんですか?」と聞いたら「すっごい楽しいよ!」って。「本当に気持ちのいいミュージシャンを僕はいっぱい知ってるんだ。一回レコーディングでおいでよ」って言っていただいた言葉が頭に残っていて、ずっとやりたいとは思っていました。ケロポンズを始めて2枚目のアルバムを作ろうってときに、「よし、今だ!」って。 |
ケロちゃん | 私は最初、無理だよって言ったんです。でもポンちゃんは「行こう! ニューヨークに行きたいか?! オー!」と言われ、私も段々その気になっちゃって。 |
ポンちゃん | やったことのないことを端からやりたいと思っていたからね。それでアルバム用の曲を用意して行こうとしていた矢先に貿易センタービルの事故が起きて…。 |
911ですね。直前ですか?
ポンちゃん | 予定の2ヶ月前でした。ニュースを見て、もうニューヨーク行きは終わったねと二人で夜中に電話で話して。 |
ケロちゃん | でも徳家さんに電話したら「何言ってるんだい?! 今こそおいでよ!」って言われてね。 |
ちょうど、「イマジン」をラジオで流さないとか音楽を取り巻く環境も自粛ムードだった頃ですよね。
ポンちゃん | 「みんな待ってるんだよ。今こそニューヨークへ来て、音楽で世界にアピールしようよ」と言われて本当にそうだなと思い、アレンジャーでもありギタリストの下畑薫さんと一緒にニューヨークに行きました。 |
ケロちゃん | 空港の検問もマンハッタンに入る前に2回くらい止められたね。 |
ポンちゃん | でも行ったらやっぱりみんな待っていてくれて。 |
ケロちゃん | あのときのエネルギーがあのアルバム(『アルバム・エビカニクス』2002)には入ってるんだよね。 |
ポンちゃん | 短い滞在期間だったので寝ずに毎日録って。最終日、夜中にトラックダウンが終わって朝まで呑みながら聞いて、泣いて、抱き合って。で、そのまま日本に帰ってきて。 |
ケロちゃん | 青春だったよね。ニューヨークで活動している徳家さんと奥様のコーディネートがあったからこそできたこと。だから今夏発売したCDのことも「あのときの音がこうなってメディアに取り上げられているんだよ」って連絡したらすごく喜んでくれました。 |
『アルバム エビカニクス』の制作背景には壮大なドラマがあったんですね。発売から14年後の今夏、メジャー・デビュー作にしてベスト・アルバムである新譜にニューヨークで刻まれた音も盛り込まれているわけですね。
ケロちゃん | はい。音に出てると思います。あとね、タイムズスクエアのマンホールの上でエビとカニの格好でジャケット撮影をしていたら、警察官が近づいてきて、怒られる! って思ったら「Hey shrimp, What are you doing now?」って言われて(笑)。 |
タイムズスクエアの写真(『アルバム・エビカニクス』のジャケット内)ありますよね。
ポンちゃん | 「エビ、なにやってんだ?」って(笑)。 |
(笑)。全国津々浦々でコンサートやセミナーを開催されていますが、印象に残っている活動は?
ポンちゃん | 場所によって地域性だったり、フジロックだったり、子どもたちの反応は毎回違いますが、以前、陸前高田でやっつけられちゃうだるまの話のショーをやった時に子どもたちが立ち上がって「がんばれ! 負けるなーっ!」って泣きそうになりながらだるまを応援してくれたんですよ。こんなにも入り込んで応援してくれて、ピュアだなあって二人で話をしていたんですけど、その1ヶ月後に311が起きてしまって。 |
ケロちゃん | あれはショックでした。その後ももちろん行ってコンサートもしたんですけど、なにもかにも流されてしまって、何て言ってよいのやら…。 |
全国に行かれているお二人だからこそ、地域の人との思い出だったり、繋がりだったりがあるからこそのご経験ですよね。心配も多いのでは?
ポンちゃん | やっぱりね、人ごとじゃないし。 |
ケロちゃん | 一度会うと子どもたちに愛着がわいてしまって、ニュースなんかで災害の情報とかみると、みんな大丈夫かなあって心配になってしまいますね。 |
ポンちゃん | 子どもはどういう状況でも生きようとしている。大変なんだけど明るく日常を生きようとしている。子どもの持っているパワーやエネルギーを感じて感動したよね。結局応援しに行ってるんだか、応援されに行ったんだかわかんないくらいで帰ってきました。 |
おそらくフジロックも、日頃の苦しいこと、悲しいことがあってもフジロックの期間だけは楽しみたいと思って向かってくる場所でもあると思うんです。
ポンちゃん | 職業とか性別とか何歳とか何年目とか、そういうの関係なく、人間としていられるっていう感じがフジロックにはある。懐かしいような、ほっとするような。自分の家でもほっとはするけど、それとは違う、原始の時代から持っている大事な何かを刺激される空間っていうか…だから来たいって思うのかも。フジロックにいるとみんな一緒だって思えるし。 |
役回りが違うだけで、みんな同じ。音楽の才能に秀でた人が舞台に立つけど、お客さんがいなければ成立しないですもんね。
ケロちゃん | フジロックは宝探しみたいな場所だって誰かが言ってたけど、今まで知らなかった自分の好きな音を探せるっていうのも、私たちには刺激になる。こんなやり方もあるんだなとか、去年、奥田民生さんがソロで気負いなくやっておられるのをみたときもすごく感動して。舞台と客席と、居場所は違うけど、同じ地球人だよって、みんな同じ人間だっていうのをすごく感じる場所だよね。いいな、いいな、人間ていいなってなっちゃうね(笑)。 |
二人の楽しい装いから一見すると子ども向けと思われがちなケロポンズ。17年に渡る活動の中ではNHK「おかあさんといっしょ」やくまモンへの楽曲提供、新沢としひこ、中川ひろたか、DJみそしるとMCごはんなど多くのアーティストとコラボ作品を制作、ケロこと増田裕子氏は「らりるれろんちゃん」「チャームポイント」などのソロ・アルバムも発表されています。中でも特筆すべきは15年もの長きにわたって全国の子どもたちに向けて歌い続けてきた「エビカニクス」がじりじりと注目を集めて大ヒットに結びついた軌跡。信じて真っ直ぐ進んできたその愛らしいキャラクターの内側に、秘められたロック・スピリッツを感じずにはいられません。
4度目となったフジロックでのステージ。サポートメンバーの伊賀航(B)張替智広(Dr)吉川LEE理(G)千葉純治(Key)とともに「エビカニクス」で始まり、「ひっつきもっつき」「イカス」「スキーボードそりすべり」の遊び歌、「おおアスパラガス」「チェケマッチョ!」では大いに盛り上がり、歌を聴かせる「ただきみとして」「にじ」からの「ラブ&ハグ」、そしてラストは「らららハッピーデイ」で大合唱となりました。今回は在日ファンクの後関好宏(sax)、ジェントル久保田(tb)、村上基(tp)をゲストに迎えるという驚きの演出もあり、子ども連れではない人たちが楽しむ姿も多くありました。
音楽家としてだけではなく、絵本作家、翻訳家、保育士といったさまざまな顔を持つ二人が織り成すコンサートは多角的な要素が散りばめられており、子どもの楽しむ力、やる気、好奇心を引き出すだけでなく、大人の心も解放してくれる、親子で楽しめるケロポンズの世界。真にこれこそフェスティバル。未体験の方にはぜひ体験していただきたいです。
写真=ⒸTsuyoshi Ikegami/カエルちゃんオフィス/SMASH
取材・文=早乙女 ‘dorami’ゆうこ
ケロポンズ最新作『おどってあそぼう!!ケロポンズBEST』(CD+DVD)
キッズの間で話題沸騰! YouTube再生回数1,300万回を超え、運動会やお遊戯で一度はみんな踊っている大人気曲「エビカニクス」を収録!! その他の代表曲も入り、さらに新曲3曲も含んだケロポンズ初の体操ベスト「おどってあそぼう!ケロポンズBEST」がユニバーサルレコードより発売中! 映像も付いたCD+DVDのお買い得盤で、聴いて、見て、思わず子どもが踊り出すこと必至!
<こどもフジロックFacebook>では、役立ち情報のシェアを呼びかけています。子連れで不安に感じていることなどを、子連れ参加経験のある方には体 験談をシェアしていただくことで、子連れ参加がしやすくなるようにするための【こどもフジロック】企画。多くの方の参加をお待ちしております!