各界のキーパーソンによって<フジロック>の魅力を語り尽くすコーナー「TALKING ABOUT FUJIROCK」。今回登場頂くのは女優として活躍している片瀬那奈さん。以前、当コーナーに登場した沢尻エリカさん、玉山鉄二さんや山田孝之さんとも友人な彼女。実は根っからの“マニアック”なミュージック・ラヴァーだったのです(※撮影の際、“なぜ私に先に声をかけなかった!”とキュートにおっしゃられていたのが印象的)。<フジロック>は、豊洲で開催された1998年の第2回目から皆勤で参加という根っからのフジロッカー。様々な思い出を語る様子から、これは本物の音楽ファンだと確信しました。だって、<フジロック>でのベストアクトがプレフューズ73だそうですよ。というわけで詳しくお話を伺ってきました。片瀬那奈さんによる<フジロック>・トークをお楽しみ下さい!
INTERVIEW:片瀬那奈
━━片瀬さんの<フジロック>歴から教えてください。
片瀬 豊洲でおこなわれた2回目から参加しています。本気で参戦したのは3回目の苗場からですね。初回も行きたかったんですけど、前例がないからどう挑んでいいのか考えてしまって。レイヴ慣れはしていたんですけどね。レッド・ホット・チリ・ペッパーズがすごいことになっていると聞いて、行けばよかったと思いながら2回目から皆勤賞です。
━━それはかなりのフジロッカーじゃないですかっ。<フジロック>唯一の都市型開催となった、豊洲はいかがでした?
片瀬 都心から近かったですし、地元でやっている気分でした。ビョークが大好きだったので、こんな近くにビョークが来てくれてるってだけでもテンションがあがりましたね。
━━今年は、片瀬さんも大ファンのレッド・ホット・チリ・ペッパーズが出ますね。
片瀬 ベックも出るし20周年感ありますよね。
━━女優業って、撮影など時間をとられて予定を計画しづらい職業だと思いますが、<フジロック>皆勤賞ってすごいですね。
片瀬 マネージャーさんにまず、年間スケジュールの中で<フジロック>を真っ先に押さえてもらいますからね(笑)。
━━さすがです! 片瀬さんは<フジロック>をどんな楽しみ方をされていますか?
片瀬 若いときはこのアーティストが出るからとか、目当てが気になる感じだったんですけど、ここ数年は<フジロック>自体の場所と空気を求めていますよね。7月の後半に向けて1年をがんばるっていう感覚なので。もはや生活の一部なんですよ。目的というより、ただその場所にいたいという気持ちですね。だって、あの空間を思うだけでワクワクするじゃないですか? ソワソワしちゃいますよね。終わった後は、<フジロック>ロスもありますし(泣)。また来年かぁっていう。
━━“あの国で生活していたい”って気持ちですよね。それこそ、<フジロック>への思い出はたくさんありそうですね?
片瀬 7年前、テントを一番最初に張ったことあるんですよ。前夜祭も一番乗りで参加して。あれは忘れられませんね。見晴らしの良い丘にテントを立てて気持ちよかったなぁ。ライブのベストアクトは、2005年にプレフューズ73がホワイト・ステージでツインドラムでやったときですね。衝撃的にすごかったですね。
━━おおお、まさかのプレフューズ73とは。もともとかなりの音楽好きなんですか?
片瀬 歌手をやっていたのもあるんですけど、自分で打ち込みもしたりするので、作るのも聴くのも踊るのも大好きなんです。
━━踊れるエレクトロな音楽がお好きなんですか?
片瀬 ルーツはもともとはヒップホップとR&Bですね。高校のときダンス部だったので、ダンスを作るのでヒップホップをやっていたんです。はじめてニューヨークに行ったときに、たまたまサシャを聴いて感動しました。こんな至福な音楽があるんだって。そこから四つ打ちだったりトランスが好きになりました。それで野外フェスにも行くようになりました。
━━それこそご自身でやられていた音楽もハウスな歌モノでしたよね。
片瀬 そうですね。一応四つ打ちと2ステップをメインにしていました。
━━<フジロック>では、各ステージをまんべんなくまわるタイプですか?
片瀬 もともと歩くのが好きなんですよ。ステージで言えば、音楽的にはホワイト(・ステージ)とレッドマーキーが好きですね。<フジロック>に出てから有名になるアーティストは本当に多いし、意外と目をつけていないアーティストでもふらっと歩いているときに聴こえてきて好きになることがあるんです。その後、スターになっていくみたいなね。レッドからのし上がってホワイトいってグリーン(・ステージ)っていう。なんか応援したくなるんですよね。
━━今年の面子だとどのへんに興味がありますか?
片瀬 ディスクロージャーが楽しみですね。あとベックが久しぶりだなっていうのとバトルスもすごい好きだし。国内だと、Suchmosに注目していたので生で体験したいですね。
━━かなりチェックされてますね。
片瀬 もう趣味ですから。毎日、ネットで夜な夜なミックスを探したり、ネットサーフィンしています(笑)。
━━情報源とかあるんですか?
片瀬 一人で勝手にネットしています(笑)。たとえばディスクロージャーだったら、リミックスをやっている人を検索して広げていったりしますね。あと、音楽の趣味があう友人たちと、DJして音楽で盛り上がるのは好きなんです。
━━そうなんですねぇ。片瀬さんのプレイリストが気になります。
片瀬 知らないことを知りたいんですよ。わからないことは知りたいし、興味とか好奇心はすごくある方だと思います。
━━<フジロック>以外でもキャンプやアウトドアは楽しんでいるんですか?
片瀬 行っていますね。キャンプも好きですよ。先週も<RAINBOW DISCO CLUB2016>に行ったし、もちろん<サマソニ>も行くし、レイヴもトランス系も行きますね。
━━めっちゃ楽しんでますね(笑)。となると、がっちりフェス・ファッションも楽しんでいますか?
片瀬 超がっちりです(笑)。<フジロック>は完全装備です。長靴も2つは持っていくし。どんな天候でも対応できるようにはしています。だから雨が降ってほしいんですよ、そうすると人もはけるし涼しくなるし(笑)。雨が降るからこそ<フジロック>だなって思っています。
━━考え方が完全にスマッシュの日高さんと一緒ですね(笑)。
片瀬 雨が降ることで、勝つアーティストと負けるアーティストがいるじゃないですか? 雨を味方につけることができるかどうか? 雨降ったときのアトムス・フォー・ピースとかすごく良かったですね。
━━おおお。ちなみに、<フジロック>の過ごし方としては遅めな時間帯からですか?
片瀬 そうですね、遅めですね。
━━何時くらいに会場に入られますか?
片瀬 とはいえ、グッズを買うのも好きなんですよ。グッズ売り場が空いているのは朝10時くらいなので。Tシャツだけ買いに出かけたりとか(苦笑)。あとは、ゆったり買い食いしています。
━━どの辺で御飯は楽しまれているのですか?
片瀬 去年見つけて今年もあるといいなと思うのは、オアシスの横にあったワールドレストランのガレットですね。いつも欠かせないのは、苗場食堂のとろろご飯かな。
━━けっこういろいろまわられるんですか?
片瀬 そうですね。もともと食べるので大好きなんですよ。フェスだと、歩くのでいっぱい食べちゃいますね(笑)。フローズンのいちごをカキ氷にしたやつあるじゃないですか? あれなんて一日5回は食べます(笑)。ソフトドリンク並みに食べているかもしれないです。
━━楽しんでいますね〜。それこそ会場で声かけられたりするんじゃないですか?
片瀬 そうでもないんですよ。なぜならすごく踊っているので(笑)。声をかける隙間がないみたいですね(苦笑)。
━━<フジロック>の会場はとても広いですが、疲れたときとか、どういうふうに休まれていますか?
片瀬 毎年、持っていくイスは一番軽いのを探しています。今年は杖になる軽いやつをゲットしました。あと、フィールド・オブ・ヘブンへ行く間のボードウォークにいい小道があるじゃないですか? あそこでぼ〜っとしたりとか、ところ天国に行って、ところ天食べながら茶屋みたいなイスでぼ〜っとするとか、川でぼ〜っとするとかですかね。
━━自然とともにゆったり楽しむのが<フジロック>の魅力ですよね。この記事を読んで<フジロック>へ行ってみたいなと思った初心者な読者へ向けて、これは絶対持っていくべきなど先輩からのアドバイスはありますか?
片瀬 とりあえず帽子とライトと雨具と長靴は絶対ですね。夜はけっこう暗いので足下を照らすライトはあると便利ですよ。わたしは3種類持っていきますけど(笑)。首から下げるのと、手持ちと、あと空間を照らすUFO型のやつですね。
━━さすがすぎますねぇ。ちなみに、プレフューズ73以外で、このアクトはすごかったというアーティストはいますか?
片瀬 一昨年のビョークは最高でした。「ビョークに会えたらいいね!」って友だちと話してたら、たまたまレッド・マーキーで踊っていたんですよ(驚)。真横ですよ。
━━えっ、すごい貴重な体験ですね。
片瀬 でしょ? 感動しましたね。あとはDJシャドウも素敵でした。!!!(チック・チック・チック)も好きだし、アニマル・コレクティヴも良かったなぁ。でもやっぱりケミカル・ブラザーズですよね。あの楽しさは他では変えがたいものがあります。3年前のケミカルが忘れられないんですよ。ケミカルが出たら、音がこれまでと違う大迫力で。やっぱり<フジロック>に慣れているな〜と。
━━邦楽アーティストだとどのあたりがお好きですか?
片瀬 BOOM BOOM SATELLITESが好きです。あと電気グルーヴも好きですね。気になるのはSuchmosかな。
━━それこそ<フジロック>に参加したことでご自身の生活に良い影響などありましたか?
片瀬 1年の一番活力になる日だし、<フジロック>に行けるようにがんばって仕事してますからね。「休みすぎだろ!」って言われないように、ちゃんと仕事しようと思っています(苦笑)。というか生活の中心ですよね。
━━女優業に与える影響なんてありますか?
片瀬 音楽って人に与える影響が大きいと思うんです。人生変えちゃうことだってあるじゃないですか? たとえばプロフィールを知らなくても胸に残る音楽ってあるんですよね。仕事へも活かされていると思いますね。心を揺さぶってくれる感情表現とかね。苗場という環境は特別ですよね。あんな大自然に囲まれて、音楽を体験できるなんて夢のようですよ。
━━まさに<フジロック>に惚れ込んでいますね。
片瀬 ほんとひとつの国みたいですよね。3日間だけどみんなが家族になれるというか。ゴミもひとりひとりが責任を持って、きれいに会場を使おうって想いがあるんですよ。みんなで良いフェスにしようっていう気持ちが強いんです。そこが他のフェス、イベントとは決定的に違う気がします。ただ楽しむというよりも、ひとりひとりがフェスを作っているんだって気持ちの問題ですね。
━━今年20周年の<フジロック>は、中学生以下が無料(※保護者同伴に限る)になるなど新しい試みにも注目ですね。
片瀬 本物に触れるには、早い方がいいですよね。大事だと思います。年齢や環境が変わることで、音の聴き方や生活が変わってくるから、早くから一流のアーティストに、一流のフェスに触れるというのは良いことだと思います。
━━今って各地でロックフェスが増えているからこそ、意外と<フジロック>ってハードルが高いところもありますよね?
片瀬 そうですね。もう20年近く仲が良い人でも、1回も行っていない人もいるし。でも、<フジロック>には無理やり誘えない感じってありますよね。自分のことを自分でやれる人じゃないと<フジロック>には向かないと思うし。あんまり神経質な人はきついと思うから。軽々しく行けるものではないのかもしれないけど、<フジロック>に行ってないとフェスに行ったと語っちゃ行けないと思いますね(笑)。行ったら絶対に楽しいので、やっぱり本物に触れてほしいですね。
━━では最後の質問です。20回目の<フジロック>に期待することは?
片瀬 毎年期待していますし、期待以上のものを得て帰っています。特に今年は20周年で、レジェンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズやベックが出るというワクワク感もあるし。みんなで20周年を気持ちよく迎えられるように、楽しみつつあたたかいお祝いの気持ちになれればいいなと思います。
Text by fukuryu(音楽コンシェルジュ)
Photo by 横山マサト
INFORMATION
『SMASH go round 20th Anniversary』 FUJI ROCK FESTIVAL’16
新潟県 湯沢町 苗場スキー場