毎回様々なゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力/思い出/体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回登場するのは、2022年に苗場食堂で<フジロック>初出演を果たしたNIKO NIKO TAN TAN。
2019年に結成された、ジャンルを超越した音楽×映像×アートを創造するクリエイティブミクスチャーユニット。去年の<フジロック>後、台湾のフェスにも出演するなど、日本のみならず世界に向かっている。
ボーカル&シンセサイザーなどのOCHAN、ドラムスのAnabebe、映像・アートワークはDrug Store Cowboyがプロデューサーを務めて、プロジェクトごとにメンバーを構成していく進化的クリエイティブ集団から発信される音と映像がリンクした唯一無二の空間が苗場に現れる。
Interview:NIKO NIKO TAN TAN
音楽を映像のミクスチャーを求めて
──クリエイティブ・ミクスチャー・ユニットとして2019年に結成したNIKO NIKO TAN TAN。このユニットをスタートさせたきっかけを教えてください。
OCHAN NIKO NIKO TAN TANの前に4人組のロックバンドをやってたんですね。ロックバンドという形態に飽きてしまった時期があって、それで何か違うことをやりたくなって、映像をやってる友だちが周りにいたので、それで音楽と映像をリンクさせられないかなって思って組んだんです。
──映像を意識することで、自分から出てくる音も変わったのですか。
OCHAN 前はポストオルタナみたいな感じだったんです。NIKO NIKO TAN TANは、どういう音かっていうことを決めていないんです。ダンスミュージックっぽいものもあれば、ミドルテンポの曲もある。振り幅が広く、いろいろバリエーション豊かにやっているっていう感じなんですよ。
──最初は映像の人とふたりで?
OCHAN そうです。そしてすぐAnabebeを呼んで。
Anabebe 前のバンドも一緒にやっていました。
──じゃあ、ふたりの関係は長い?
OCHAN 前のバンドをはじめた頃にメンバー募集で来てくれたんですね。その募集は、確かミクシーだったはず(笑)。
──かなり古い。
Anabebe 実はそうなんです(笑)。
──Anabebeさんは、NIKO NIKO TAN TANに変わって、どう感じましたか。
Anabebe メチャクチャかっこいいですよね。OCHANは、前のバンドでは曲を作ってなかったんです。
──歌って演奏しているだけ?
Anabebe いや、歌ってもなかったんです。あくまでもギタリスト。そこが一番の変化でした。やっていることがまったく違うわけですから。
──自分で歌うっていうことを決めたのはどんな理由があったのですか。
OCHAN 最初は女性ボーカルに入って欲しくて、女性ボーカルに歌って欲しいなって思う曲をいっぱい作っていたんです。でもなかなか出会わなくて。自分で歌うしかないなって思って歌いはじめたんです。
──音楽を聞いていると、ある種ジェンダーレスな印象を受けていました。制作において、音楽と映像はどの段階でミクスチャーされていくのですか。
OCHAN 最初に音楽のデモをあげて、そのデモを映像チームに聞いてもらって、映像は映像として膨らませてもらう。
──音楽チームと映像チームのふたつのチームがあるという認識で間違いない?
OCHAN そうですね。
──例えば映像チームから、こんな音楽にしてくれっていうリクエストがあったりはするのですか。
OCHAN 初期構想の絵を見せてもらって、それを見ながらアイデアを膨らませていくっていうこともあります。リクエストという部分では、曲の制作よりもライブが多いですね。ここの間奏の尺を長くしてくれとか。
──映像と音楽を一緒にやることによって、ライブへの意識は変わりましたか。
OCHAN 映像があることによって、いい意味でいろんなことを意識しなくなったというか。最初の頃は映像が入ってきたことによって、ちょっと硬くなってしまったこともあったんですけど、今は気にせずにやれるようになっています。映像があることで、ナチュラルに自分たちの音楽にライブでも向き合えています。
──どんなアーティストが好きだったのですか。
OCHAN <フジロック>で言うと、ケミカルブラザースですね。映像でケミカルブラザースのライブをよく見るんですけど、あれを<フジロック>で見たら本当にヤバイなって。
Anabebe ドラム目線ではレッチリの影響をメチャクチャ受けています。
──楽器は最初からドラムをやっていたのですか。
Anabebe 兄弟がみんな楽器をやってて、ドラムだけいなかったんです。長男に「お前、ドラムを叩け」ってスティックを渡されて。それでドラムを叩きはじめたんです。
OCHAN お兄さんに「ドリームシアターを叩け」って言われて、その練習をずっとしてたらしいんです。
Anabebe 小学生だったんですけど、当時、1日8時間くらい練習していましたよ。兄に「時間はあるよね」って言われて、8時間練習を強要されて。本当に泣きながら練習していました(笑)。それが今に生きているんですけど。
<フジロック>に出演して解散する?
──去年、苗場食堂に出演しました。<フジロック>はどんな存在でしたか。
OCHAN NIKO NIKO TAN TANを組んだときの目標が<フジロック>に出ることだったんですね。そして今年はさらに大きなステージに立たせてもらえる。
──<フジロック>にどんなイメージを持っていたのですか。
OCHAN なんて表現したらいいんですかね(笑)。最先端でもあり根っこも感じさせてくれる。「絶対に見たい」って思わせてくれる海外のアーティストが集っている。この感じがヤバイですよね。
──出演する前に、<フジロック>に行ったことはあったのですか。
OCHAN 苗場食堂に出させてもらった去年が初めてでした。
──苗場食堂に出られるって決まったとき、どんなことを思いましたか。
OCHAN 飛び上がりましたよ(笑)。それまでで一番うれしかったかもしれない。本当にずっと出たかったですから。日本で一番かっこいいフェスであり、バンドをやっている限りは、みんなが目指している場所ですから。
──実際にステージに立って、どんな風景が見えましたか。
Anabebe とにかくうれしすぎでした。それでメッチャ汗をかきました。力が入ってしまって。自分たちのライブは、ちょうど最終日のヘッドライナーの時間。GREEN STAGEではホールジー、WHITE STAGEではムラ・マサがやってて。自分がお客さんだったら、絶対そっちを見に行く。人が来てくれるのかなってすごい心配だったんです。
OCHAN 俺らとホールジーではあまりに違い過ぎて、比べるのも変やなって思って(笑)。でも結果、ホールジーが終わって、お客さんがグワーッと流れ込んできてくれて。メチャクチャいっぱいになったんです。その光景が感動的でした。
──そのステージが終わって、どんなことを思いましたか。
OCHAN 実は、バンドを組んだときには「<フジロック>に出たら解散しよう」みたいな話をメンバー同士でしていたんです。「<フジロック>に出て解散」がひとつの合言葉のようでした。いざ出させてもらって、ステージからお客さんがいっぱいいる風景を見たら、もっと登りたいなって。違う光景も見たいなって。ここで解散するわけにはいかないって思えたんですね。
──その違う光景が、今年も見られるわけですね。
OCHAN 今年の出演が決まったときには、去年以上に飛び上がりましたよ(笑)。実は自分たちとしてはかなり早い段階で出演が決まっていて、そのことを誰かに言いたくて言いたくて。
──今年はどんなステージにしたいと思っていますか。
OCHAN 去年の<フジロック>の後にワンマンをやったし、台湾の浮現祭というフェスにも出て、かなりパワーアップしていると思います。今年はVJも入れられるし。
──台湾のフェスはどうでしたか。
OCHAN ステージに登場しただけで、ワーッと迎え入れてくれて。3年間はコロナ禍だったし、あれだけの歓声のなかでのライブははじめてでした。台湾では人気があるんだなって、勘違いしそうになりましたよ(笑)。
──夏の<フジロック>では、きっともっと大きな歓声が待っていると思います。
OCHAN 今までは拍手だけでしたものね。そうなったらうれしいですけど。
──セットリストは、もう決めつつあるのですか。
OCHAN いつも、徐々に育てていく感じなんですよ。<フジロック>までにはまだ時間があるしライブもあるので、いろいろ試しながら決めていきたいです。
世界へ向かう大きな足がかりに
──去年の<フジロック>では、自分たちのライブ以外にどんな思い出がありますか。
Anabebe 自分たちのライブのセッティングをしているときに、RED MARQUEEからモグワイの爆音が聞こえてきて。
OCHAN こんな爆音なんやって思わされるのも最高でした。緻密に計算されているライブであるはずなのに、ダイナミックさが違う。
Anabebe 歩いて飲んでライブを見て、また歩いて飲んでライブを見て。その繰り返し。
OCHAN ライブが終わった後も遊んでいましたね。
──それでは今年はどのアーティストを見たいですか。
OCHAN ティーシャとルイス・コール、それとブラック・ミディですね。
Anabebe 俺はブラック・ミディ。
──ライブの時間帯が違うといいですね。
OCHAN 去年は最終日がライブでその前日入りでした。今年も出演するのは最終日なんですけど、初日から苗場にいたいです。ティーシャとルイス・コールは別の日なので前入りできたら見られるんですよ。
──今年の<フジロック>は、NIKO NIKO TAN TANにとってどんな場所になりそうですか。
Anabebe ビッグドリームを手にする場所。
OCHAN さらなるビッグドリーム。
──NIKO NIKO TAN TANとして、これからどんな世界観を構築していきたいですか。
OCHAN これっていうのを、今はあえて作らないようにしていて。それができる編成だなと思っています。個人的にはダンスミュージックが好きで、そういう要素もありながら、いろいろやりたいし作りたい。それを毒気のあるようなもので包んで、多くの人が「これってNIKO NIKO TAN TANの曲やな」っていうふうに感じてもらえるようになればいいなって思っています。
──それではNIKO NIKO TAN TANとしての、今持っている目標地点は?
OCHAN 個人的な思いでもあるんですけど、海外に出て行きたいですね。フェスでもツアーでも。海外でもやれるようなバンドになりたいっていう目標があります。
──最後にNIKO NIKO TAN TANというバンド名の由来を教えてもらえませんか。
OCHAN 前にいたメンバーの身内ネタっていうか、メンバーの兄弟が幼い頃に枕につけていたニックネームなんですよ。
──枕?
OCHAN そう。クッションのような枕にこの名前をつけていて。それを聞いて、バンド名にしてもおもしろいかなってフッと浮かんで。
──確かに忘れられないバンド名だと思います。
Anabebe このバンド名だと、どんなバンドなのかイメージしづらいと思うんです。それが効果的かなって。
OCHAN はじめからメッチャハードルを下げているんですよね。そこからの発信なら何をやってもおもしろい。音楽と映像がかっこよかったら「お?」ってギャップを生むと思うんです。ふざけた曲をやっても「らしいね」って受け取ってもらえそうだし。そう思って、今はいろいろやっていこう、やっていけるなって思っています。
Text&Interview by 菊地崇(Festival Echo/フェスおじさん)
Photo by 北村勇祐
EVENT INFORMATION
東京・大阪でワンマンライブツアー「NIKO NIKO TAN TAN 2ND ONE-MAN TOUR「 lol 」 開催!!
※「lol」=laugh out loud
OPEN 17:00 / START 18:00
東京:LIQUIDROOM
(問)HOT STUFF PROMOTION 050-5211-6077
OPEN 17:00 / START 18:00
大阪:club JOULE
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888