毎回様々なゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力/思い出/体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回登場するのは、2015年の「ROOKIE A GO-GO」への出演から数えると、今年で4回目の登場となる3人組オルタナティブバンドD.A.N.。
2014年の夏に結成され、「フジロック出演」を一つの目標に掲げていた彼らは今や苗場に欠かせない存在となった。時には朋友の小林うてな(black boboi)をサポートメンバーに迎え、時には3人だけでミニマルかつサイケデリックなサウンドスケープを展開してきたD.A.N.。昨年8月にはおよそ3年ぶりのフルアルバム『No Moon』を発表し、コロナ禍の混沌とした世界を生きる私たちに一つの指標を指し示した彼らは、今年の<フジロック>で一体どんなステージを見せてくれるのだろうか。
Interview:D.A.N.
憧れの海外アーティストとの遭遇も。D.A.N.のフジロック遍歴
──まずは、今年の出演が決まった率直な感想を聞かせてください。
櫻木大悟 <フジロック>は「日本のフェス」というより「世界的なフェスの一つ」だと思うし、そこにまた出られるのは単純に嬉しいですね。久しぶりですし、今まででベストなパフォーマンスが出来るようにしたいです。
市川仁也 僕ら、バンド編成で出るのは3回目になるのかな。フジに出るときはいつも節目になっているんですよね。今回もサードアルバム『No Moon』をリリースして、こうやって節目のタイミングで出してもらえるのは光栄なことだと思っています。
川上輝 コロナ禍を乗り越え、<フジロック>がまた海外アーティストを呼んで開催できるようになったのも嬉しいですね。
──2015年のROOKIE A GO-GO出演から数えると、D.A.N.の出演は今回で4回目になります。今までで特に印象に残っているステージやエピソードというと?
櫻木 やっぱり「ROOKIE A GO-GO」に出たときのことが強く印象に残っています。当時はバンドを結成したばかりで、まだ数えるくらいしかライブにも出ていない状況でしたし。
川上 「ROOKIE A GO-GO」の時は会場近くの民宿みたいな大部屋を一つ借りて、そこでメンバーやスタッフみんなで寝たんですけど、次の年は苗プリに泊まれるようになって感動しましたね。ステージへのアクセスもハンパなく楽ですし(笑)。
櫻木 そのときの演奏を気に入っていただけたのか、翌年にはRED MARQUEE(PLANET GROOVE)にも出させてもらって。それも嬉しかったし光栄に思いました。
市川 僕はPLANET GROOVEが印象に残っています。その頃もまだ無名に近い状態だったのですが、お客さんで会場がパンパンになっていて。あんな大勢の前でライブをやるのも初めてだったんですよね。
──<フジロック>自体の思い出というと?
櫻木 いっぱいあるなあ……。土砂降りの中で見たエイフェックス・ツイン(Aphex Twin)とか。あんなハードな天候でカオスなサウンドを聴いているのが面白かったし、かなり五感を刺激されました。他にもFKAツイッグス(FKA twigs)やジェイムス・ブレイク(JAMES BLAKE)、トム・ヨーク(Thom Yorke)のソロなど自分が影響を受けたアーティストのパフォーマンスを、間近で見られるのは単純に嬉しいですよね。
川上 俺はFIELD OF HEAVENで観たカマシ・ワシントン(Kamasi Washington)のライブが印象に残っています。バンドがツインドラムで「とんでもねえな!」と思いましたね(笑)。クルアンビン(Khruangbin)やライ(Rhye)、Yogee New Wavesもヘブンでしたよね。ヘブンまでは結構歩くので、その時見たライブは印象に残ってますね。
櫻木 ステージだと俺はRED MARQUEEが一番好きですね。床や屋根もあってクラブっぽいのに、周りは自然に囲まれている感じもいいですよね。ドラゴンドラに乗って行く山頂のステージ「DAY DREAMING/SILENT BREEZE」も気に入っています。ソフトクリームを食べながら、普段はあまり聴かないような民族音楽などに出会えるのも楽しくて。ちょっとした非日常というか、小旅行気分が味わえますよね。ああいう環境もフジロックならではなのかなと。
市川 俺も大悟と一緒で、大体RED MARQUEEかオアシスエリアのあたりにいますね。基本的に朝までコースなので、午前中のアクトは見逃してしまうことが多くて。ヨガとか毎回参加したいと思いつつ、まだ一度も行けたことがないです(笑)。
櫻木 開催中は、謎の時間感覚で生活することになるよね。朝とか夜の概念がなくなっていくというか。
──知り合いに出くわしたり、逆にそういう時にしか会えない人とばったり会えたりするのもフジロックの醍醐味ですよね。
市川 確かに。エイフェックス・ツインと同じエレベーターに乗り合わせた時があって、めちゃくちゃ体がデカくて圧倒されました。アニメのキャラクターを見ているような印象でしたね。
川上 エレベーターでの遭遇案件だと、僕が一人でエレベーターに乗っていた時にマキシマム ザ ホルモンのナヲさんが乗ってきて。中学の時に死ぬほど聴いていたから興奮しましたね。向こうは俺のこと知らないと思うんですけど、あちらから丁寧に挨拶してくれて。「めっちゃいい人やん!」って。心の中で思いました。
櫻木 (笑)。僕はちょっと後悔していることがあって。ジェイムス・ブレイクの長年サポートをしているエアヘッド(AIRHEAD)ことロバート・マクアンドリュースと、ミスター・アシスター(Mr Assister)ことベン・アシスターの2人が苗場のアーティストラウンジにいたんですよ。僕らD.A.N.は、ジェイムス・ブレイクの大阪公演でサポートアクトをやらせてもらったことがあって、彼らとも軽く面識があったから話しかけたかったんですけど、気後れしてしまって(笑)。せっかくいろんなアーティストと繋がれる場なのに、話しかけられなかったことを未だに悔やんでいます。
辿り着いた新しい「D.A.N.」のあり方。3人が見据える、これからについて
──2020年はコロナ禍で延期となり、翌年のフジロックは日本で活動するバンドのみのラインナップとなりました。当時の状況を振り返って何か思うことはありますか?
櫻木 もちろん賛否両論あったと思うし、僕自身も思うところはあります。けどフジロックが日本人アーティストだけでやり切ったことの意義は大きいですよね。後から行った人たちの話を後から聞くと、お酒が飲めなかったり歓声も出せなかったりで、例年とはかなり雰囲気が違っていたみたいですが、日本のカルチャー/エンターテイメントを維持するという意味でも、非常に重要な決断だったと思います。
市川 いろいろバッシングもあったようですが、ルールやガイドラインをしっかり守った上で楽しむなら問題ないんじゃないかなと僕は思っていました。賛否あって当たり前というか。あの時期にフジロックが開催されることに「賛成」の人しかいなくても、逆に「反対」の人ばっかりなのも、怖いなと思います。
──確かに。フジロックが一石を投じたことで、議論が活性したのは良かったことだなと僕も思いました。もしやっていなかったら「最初の一歩」がさらに遠ざかっていたでしょうし。
市川 そう思います。議論が起きたことで、一般の人たちにも音楽業界の実情が広く知れ渡りましたし。
──D.A.N.もこの2年間、試行錯誤をしながら活動の仕方を探ってきたと思います。
櫻木 そうですね。オンラインのライブをやってみたり、安全を確保できた段階でツアーを回ったり。ひょっとしたら時期尚早と思った人や、不快に感じた人もいたかもしれないけど、それで批判されたり怒られたりすることよりも、僕らが音楽に対して持っている情熱が消えてしまうことの方が怖かったんですよね。色々不安もあったけど、人は誰しも不安を抱えて生きているわけで。いずれにせよ安全にライブが行えるよう、周りのスタッフが尽力してくださったおかげというか。それに尽きますね。
──『NO MOON』のリリースツアー『ANTIPHASE OF THE MOON』では、久しぶりに地方もまわったんですよね?
櫻木 そうです。飛行機に乗るのも久しぶりだったけど、いろいろな場所でたくさんのファンの顔が見れて高揚しました。
──これからのフジロックにはどんなことを期待しますか?
川上 最初に大悟が言ったように、フジロックは「日本のフェス」というより「世界的なフェスの一つ」だし、そこに僕ら含め日本のアーティストが入り混じっていることにわくわくする。これからもそういうフェスであり続けてほしいです。
市川 海外のリスナーやアーティストにも「行きたい」「出たい」と思ってもらえるような場所だと思うので、コロナとか色々大変なこともあるだろうけど、なんとかこれだけは残してほしいと心から思っています。
櫻木 謎のステージを作ってほしいですね。川にやぐらを組んだり、地下や空中に特設ステージを立てたり。そこに何だかよく分からないエクスペリメンタルなアーティストを呼ぶとか面白そうじゃないですか?(笑)
text&interview by Takanori Kuroda
Photo by 寺内暁
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フジロックにおける新型コロナウイルス感染防止対策
<FUJI ROCK FESTIVAL’22>を開催するにあたり、フジロックに携わる全ての方々の安全を確保するため以下のガイドラインを定め、徹底した対策を講じてまいります。チケットご購入前に、必ず以下に記載の内容をご確認いただき、ご理解の上、ご来場いただけますようお願い致します。FRF’22事務局より