毎回さまざまなゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力・思い出・体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回登場するのは、フィンランド・ヘルシンキ出身の4人組ロックバンド・US(アス)。世界各地でフロアを沸かしているTeo Hirvonen(Vo, Gt)、Max Somerjoki(Gt, Vo)、Pan Hirvonen(Harm)、Leevi Jämsä(Dr)の4人は、何を考え、どこに向かっているのだろう。3度目の出演となる<フジロック ’26>への意気込みから、6月リリースのセカンドアルバム『Everybody’s Giving Up The Cabaret』のことまで、彼らの“今”を聞いた。
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Interview:US

いままでの観客の中で一番、本当に最高の観客だった。
──2024年に<フジロック>に初めて出演されましたが、それ以前から<フジロック>の存在は知っていましたか?
Teo Hirvonen (以下、Teo):ああ、もちろん知っていたよ。大好きなギタリスト・Gary Clark Jr.(ゲイリー・クラーク・ジュニア)が<フジロック>に出演したのがきっかけだったと思う。たぶん2013年か、2019年だったはず。そのとき<フジロック>について調べてみたら、とてもすばらしくて、いつか出演できたら最高だと思っていたんだ。

Pan Hirvonen(以下、Pan):僕らのバンドのロゴをデザインしてくれた仲の良い友人が、2018年に実際に<フジロック>に行っていて、それで存在を知ったよ。Bob Dylan(ボブ・ディラン)が出演していた年で、確かすごく激しい雨が降った年だったと思うんだけど……。
──LeeviとMaxはどうですか?
Leevi Jämsä (以下、Leevi):僕はオンラインで<フジロック>のいくつかのパフォーマンスを観たことがあったんだ。それと、かなり前にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが出演していたっていう情報も目にしたことがあったから、何度も耳にするフェスだったよ。
Max Somerjoki(以下、Max):うん、僕ももちろん知っていたよ。

──全員、出演前から<フジロック>の存在を知っていたんですね。
Teo:あと、イギリスのDJ・GAZ MAYALL(ガズ・メイオール)が僕らに「<フジロック>は地球上で最もすばらしいフェスだから、きっと君たちのお気に入りになると思うよ」って何度も言ってくれていたんだ。だから僕たちはオファーを受けたときすごく期待していたんだけど、彼の言葉は本当だった。<フジロック>は、すぐに僕らのお気に入りになったよ。
Pan:そうだね。初めて会場に到着したとき、山とか、すべての自然が本当に美しくて、その時点でもう最高にカッコよかったのを覚えてる。

Leevi:これまで都会的な場所で開催されるフェスにばかり出演してきたから、<フジロック>の自然に溶け込むような音楽体験には、本当にワクワクしたよね。

──大自然の中でパフォーマンスする機会は、これまであまりなかったんですか?
Teo:知っている限りだと、フィンランドにはそういうフェス自体あまりないんだよね。あってもかなり規模が小さいものなんだ。何でないのか、本当に不思議なんだけど……。
Pan:多分、蚊が多すぎるからかな(笑)。
──みなさんは<フジロック>以外にも日本で単独公演を行っていますが、日本のオーディエンスへはどんな印象を持っていますか?
Tao:初めて<フジロック>に出演したときに思ったのは、いままでの観客の中で一番、本当に最高の観客だったってこと。僕らが演奏を始めた瞬間から観客のみんながすでにそこにいて、会場にはものすごいエネルギーが溢れていた。そのエネルギーのおかげで僕らもいつも以上にパワーをもらえたし、みんなが僕らの音楽に「真剣に耳を傾けてくれている」ことを常に感じることができたよ。そんなふうに観客が“聴き入っている”のを肌で感じられる体験はいままで一度もなかったから、メンバー全員即座に「これはすごい!」ってお互いに言い合ったよね。
Pan:そうだね。日本でファースト・アルバムのCDをリリースしてから2ヶ月ほどしか経っていなかったし、実際に日本で演奏するのも初めてだった。だから、僕らの音楽をどれくらいの人が気に入ってくれているのかわからなかったんだったんだけど、みんなが曲を熟知してくれているってすぐに感じ取ることができたよ。例えば、「Night Time」を演奏し始めたとき、みんながその曲をすぐに認識して、すっかりその曲の世界に引き込まれるのが見て取れたんだ。
Leevi:<フジロック>にも渋谷WWW Xにも、あんなにたくさんの観客が集まってくれて、本当に驚いたね。信じられないほどすばらしかった。
Max:うん。日本の観客については、僕らがパフォーマンスする前から楽しみにしていたことの一つだったけど、実際にすばらしかったよ。


──よく「日本人はシャイだ」と決まり文句のように言われますが、少なくとも音楽シーンに限って言えば、それは事実ではないですよね(笑)。ちなみに、みなさんがよくパフォーマンスをしているヨーロッパのオーディエンスたちは、どんな雰囲気を持っていますか?
Teo:ヨーロッパの中でも国によってかなり違いがあるけど、その違いは多くのことを物語っていると思う。例えば、僕らの出身地・フィンランドの観客は本当に控えめだから、演奏中や演奏したあとに、みんなが気に入ってくれているのかどうか推測できないんだ。全曲演奏し終わったあとも、ほとんど沈黙に近い状態でオーディエンスがそこに立っているから、その瞬間は不安になる。でも、ステージから降りたあとに「ねえ、あなたたちのライブはいままで見た中で最高のものだったよ」といった声をかけてくれるんだ(笑)。
Teo:イギリスの観客はエネルギーに溢れているけど、日本のオーディエンスとはまた違うと思う。彼らは常に何かしらのリアクションを送ってくれるんだよね。曲の途中でもコメントをくれたりね(笑)。日本のオーディエンスのすばらしい点は、あのエネルギーを持ちながら常にしっかり耳を傾けてくれるところだと思う。僕らと観客って、ある種の“相互関係”にあると僕は思っているんだ。観客が僕らにエネルギーを与えてくれて、僕らもそれをオーディエンスに返す。そうすることで、会場に調和が生まれるんだと思う。
Pan:うん、そうだね。それで言うと、ヨーロッパの中でいい意味で一番熱狂的だったのは、アイルランドと北アイルランドだったと思う。文字通り、僕らはずっと叫び続けていたよ(笑)。
“ホーム”のような場所。<フジロック>はバンドに欠かせない要素
──今年で3年連続の<フジロック>への出演となりますが、いまはどんな気分ですか?
Leevi:間違いなく今年のハイライトになると思う。ここ2年、<フジロック>には毎年行かせてもらっているけど、今年はこれまでとはちょっと違う気がする。というのも、いまの方が<フジロック>のことをより理解できていると感じるし、僕たちにとって“ホーム”のような感覚が芽生え始めているんだ。
Max:そうだね。僕らがいつも“良かったライブ”について話し合うとき、<フジロック>がそのうちの1つとして必ず話題にあがるんだよね。だから、僕らはそこで演奏できることを、いつも楽しみにしているよ。
Teo:<フジロック>はバンドにとって本当に大きな存在で、すごく重要だよね。メンバー同士でライブについて話すときはもちろん、バンドメンバー以外の誰かと話すときでさえも、真っ先に話題にあがるものの一つが<フジロック>なんだ。間違いなく、<フジロック>はバンドにとって欠かせない要素になっているね。
Pan:でも、今年もまた<フジロック>のステージに立てるなんて、僕たちは想像もしていなかったんだ。2年後、もしくは3、4年後くらいに、運が良ければ戻れるんじゃないかって想像していたくらいだった。だから、今年もそこで演奏できるなんて、本当に最高だよ、本当に。

──パフォーマンス以外で、<フジロック>で思い出に残っていることや、楽しみにしていることは何かありますか?
Teo:ご飯かな。日本ってご飯が信じられないくらいおいしいよね。日本に住んでいるみんなは、本当にラッキーだと思う(笑)。
Pan:そうだ、TeoとMaxは<フジロック>で“Natto”にトライしていたよね?
──納豆⁉︎
Teo:うん。実は苗場食堂で食べたんだけど、本当においしかった。トライして良かったよ。あと、ポカリスエットも気に入ったよ。<フジロック>の会場内のどこでご飯を食べても本当においしいから、今年もご飯が楽しみだな。
Pan:僕は、フェスのすぐ近くの山の頂上までハイキングできたらいいなと思ってる。あと初めて出演した年に、越後湯沢の温泉に連れて行ってもらう機会があったんだけど、あれはすばらしかった。
Teo:本当に良かったよね。
──ちなみに……Leeviは日本語がとても上手ですが、どうしてそんなに話せるようになったんですか?
Leevi:“ちょっとムズかしいけど”(照れながら日本語で)。長い間、日本のアニメや漫画、そしてゲームをはじめとしたカルチャーに興味があって、3年前から日本語を学び始めたんだ。来日したときは日本のファンや、現地の人たちと日本語で会話できるから最高だよ。あと、以前<フジロック>の会場で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんとも会話できたんだ。日本語で「あなたたちのファンです」って伝えられて良かった。彼らは今年も出演するから、パフォーマンスを観られたらいいな。
ニューアルバム『Everybody’s Giving Up The Cabaret』を引っ提げての<フジロック>、京都、東京
──みなさんは、6月24日(水)に日本先行で2年ぶりのニューアルバムをリリースされますね。いまのお気持ちはいかがですか?

Teo:本当にワクワクしているよ。このアルバムは昨年11月から12月にかけてロンドンでレコーディングしたばかりのものだから、こんなに早くリリースできるのを本当にうれしく思ってる。“今”の自分たちをそのまま反映した作品だと感じられるよ。
Pan:間違いなく、いままでの中で最高の作品だと感じているよ。みんながワクワクしながら聴いてくれるのが本当に楽しみだよ。
Max:そうだね。ついにリリースできることを、ワクワクし過ぎるくらいに本当にワクワクしてる。
Leevi:ニューアルバムでは、バンドの新しい視点を表せたと思う。けど、それと同時にお馴染みの要素も散りばめられているはずだよ。日本をはじめ、世界中のリスナーがこの作品をどのように楽しんでくれるか、とてもワクワクしているよ。
──日本版CDには、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『Baby, please go home』のカヴァーが収録されていますね。カヴァーに至った経緯についてお聞かせいただけますか?
Teo:初めて彼らのことを知ったのは、元マネージャーを通じてだった。彼が僕らに初めてTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの曲を聴かせてくれたんだけど、そのときに「これ、すごく聞き覚えがあるな」って思ったんだ。そして調べてみたら、実はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTは2000年代初頭のフィンランドのロックシーンに多大な影響を与えていることがわかったんだ。
僕らはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTから影響を受けたフィンランドのロックバンドを聴いて育ってきたんだよね。つまり、自覚するずっと前から僕らはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTから多くのインスピレーションを受けてきたってことになる。その事実に敬意を表したいと思って、この曲をレコーディングしたんだ。みんなにそのことをはっきり伝えたくてね。
──具体的には、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのどんなところに「聞き覚えがある」と感じたんですか?
Pan:多分彼らのエネルギーそのものだと思う。
Teo:そうだね。あと、サウンドもその要素の一つかな。きっと、フィンランドのロックバンドたちも、そのパワーや精神、エネルギーといった全体的な雰囲気にインスピレーションを受けてきたんだと思う。
──では、リスナーにどんなふうにこのアルバムを楽しんでほしいですか?
Teo:そうだな、できるだけ大音量で聴くのがいいと思う。そうすれば最高の体験ができると思うし、最初から最後まで、充分に楽しめるはずだよ。レコーディングは本当にすばらしいものだったから、その思いが音源を通じて伝わって、僕らと同じように、もしくはそれ以上にみんなが楽しんでくれたらうれしいな。
Max:そうだね。このアルバムは、まるで一本の映画のような、そういう作品だと思う。
Teo:その通りだ。それはかなり的を射ていると思う。
──レコーディングはロンドンで行ったそうですね。
Teo:そうなんだ。「Baby, please go home」だけはヘルシンキのスタジオでレコーディングしたんだけど、他の曲は「Dean St. Studios」と「Fish Factory Studio」で4〜5日間くらいで録ったんだ。「Dean St. Studios」はソーホーにある伝説的なスタジオだよ。ちなみに、「Fish Factory Studio」はちょっと謎めいたスタジオで、録音環境はすばらしかったし、機材も本当に良かったんだけど、夜になるとキツネが中に入ってきて、椅子やソファをかじって食べちゃうらしいんだ(笑)。
──怖いですね(笑)。でも、ソーホーはあらゆるカルチャーが交差する街ですし、思い出深いレコーディングになったんじゃないですか?
Teo:そうだね。ソーホーは僕らにとって本当にインスピレーションの源なんだ。何度もそこでライブしてきたし、GAZ MAYALLに出会ったのもソーホーだったしね。初めてロンドンでのライブの機会を得たのも、ソーホーでの出来事だった。あ、あといま思い出したけど、GAZ MAYALLから<フジロック>について初めて聞いたのも、ソーホーだったな。つまり、ソーホーは僕らの出発点なんだ。
──9月末には、そんなアルバムを引っ提げて東京「LIQUIDROOM」、京都「磔磔」で単独公演も行われますね。
Max:それらの会場でライブできるのを本当に楽しみにしているよ。屋内でのライブは、<フジロック>とはまた違ったものになるはずだしね。
Teo:うん。京都でライブをするのは初めてだし、加えて「磔磔」がどれほど伝統的な場所なのか認識しているから、そこでライブできるなんて本当に素晴らしいことだよ。「LIQUIDROOM」は日本で行った中で最大の会場だから、本当にワクワクしているよ。
Pan:Maxが言ったように、野外フェスでの演奏も大好きだけど、やっぱりバンドの主なアイデンティティは屋内でのライブにあると思うんだ。だから、<フジロック>ともまた違った雰囲気を届けられるのが楽しみだよ。
Leevi:「磔磔」は間違いなく伝統的な会場だし、京都のみんなが僕らの音楽をどう受け止めてくれるのかが楽しみだよ。MaxやPanが言ったように、屋内はより親密なライブになると思うし、僕らの音楽をより心に届けられる気がして、楽しみにしているよ。
Teo:それに、僕らの演奏はセットリストがほぼ決まっていなくて、観客の反応を見て決めているから、2夜とも本当にユニークなライブになるはずだよ。
――楽しみです。みなさんのライブを観ていると、まさに今「2020年代のロック史が創られている」と感じます。USのライブには、何か秘訣のようなものがあるのでしょうか?
Teo:僕たちは、とにかくライブにエネルギーを持ち込もうとしているよ。それと、前にGAZ MAYALLからとても良い言葉をもらったんだ。彼が初めて僕たちのライブを観たとき「ステージに立って、『もう全力を出し切った』と感じたときこそ、さらにその先を目指せ」と言ってくれたんだ。僕たちは、そのことを常に心がけているよ。
──最後に、9月末の単独公演と、<フジロック ‘26>への意気込みを聞かせてください。
Teo:<フジロック>に戻って来られるのは本当にすばらしいことだよ。またみんなに会えるのを本当に楽しみにしているし、地球上で最もすばらしい観客を集めてくれていることに感謝しているよ!
Max:またみんなに会えるのが本当にうれしい。僕らの曲を聴いてくれること、そしてライブに来てくれることを心から感謝しているよ。
Pan:あなたたちは間違いなく、私たちのお気に入りだよ。また会えるのが楽しみだ。
Leevi:みんなからのサポートと愛に本当に感謝しているよ。また会えること、またそこで演奏できるのが待ちきれない。“いつもありがとうございます。フジロックで会いましょう。楽しみです!”(流暢な日本語で)。

text&interview&translation by 那須凪瑳
INFORMATION
US 『EVERYBODY’S GIVING UP THE CABARET』
日本盤CD: 2026年 6月24日(水) 先行リリース
*配信&全世界リリースは: 2026年 6月26日(金)
日本盤CD品番:SICX-216 価格:¥2,860(税込) 解説・歌詞対訳付き
来日公演情報
2026年9月28日(月)京都: 磔磔(takutaku)
2026年9月29日(火)東京: Ebisu LIQUIDROOM
開場 18:30 / 開演 19:30
スタンディング 前売り:¥6,500
BIOGRAPHY

フィンランド出身の4人組ガレージ・ロック・バンド“US”(アス)は、ヴォーカリスト/ギタリスト/メインソングライターのテオ・ヒルヴォネン(Teo Hirvonen)が高校で友人と結成したバンドから始まった。テオはその後間もなく、二人の兄弟、パン・ヒルヴォネン(Pan Hirvonen/ハーモニカ)とマックス・ソメルヨキ(Max Somerjoki/リード・ギター&ヴォーカル)とジャムを行っているときに、彼らにもバンドに加わってもらうことを決めたという。のちにもう1人の友人、リーヴァイ・ヤムサ(Leevi Jämsä)がドラマーとしてグループに加わり、USが誕生した。(2025年末にベーシストのラスムス・ルオナコスキ(Rasmus Ruonakoski)が脱退。)
そして現在、ヨーロッパで最も話題の新人ライヴ・バンドとして急速に台頭している“アス”は激しいエネルギー、精力的なツアー活動、そして猛烈なDIYスピリットを特徴とする。生のロックンロール、ポストパンクのエッジ、昔ながらのソングライティングへの愛を共通項として結成されたこのバンドは、世界的なフェスティヴァル・シーンにおいて最も人を惹き付ける新興勢力として、瞬く間に評価を獲得してきている。











