世界のフェスを渡り歩いたFestival Junkieがお届けするフジロックコラム第一弾。海外フェス情報を盛り込みながら、世界のフェスティバルカルチャーにおける日本代表<FUJI ROCK FESTIVAL>を語っていきたい。

フジロックを文化遺産に?

5e1c865d541f9246f7f99e9a65625481 世界が羨む<FUJI ROCK FESTIVAL>の魅力

まずは本コラムのタイトル「フジロックを文化遺産に」についてだが、「何を突然そんな大層なことを!」と思われる方がほとんどだろう。しかし少しだけ説明を聞いてもらう時間を頂きたい。

個人的なことになるが、昨年10年ぶりにフジロックを欠席し、「Festival Junkie」というプロジェクトを立ち上げ、1年かけて英国を中心に世界の音楽フェスを巡って潜入取材を行ってきた。英国内ではフジロックのモデルになった<グラストンベリー>に始まり、<ワイト島フェス>、<レディング>、<Vfestival>といった老舗フェスから、日本人はおろか現地人しかいないような小規模のフェスまで、夏の間はほぼ毎週どこかしらのフェスに足を運んできた。英国以外にも昨今ヨーロッパのフェス業界で注目されているクロアチア、国として音楽フェスをサポートしているアイスランドなど、様々な国に足を伸ばし、実際に観客として世界の音楽フェスティバルの「今」を体感してきた。

そんな1年を過ごしたおかげで、たくさんの素晴らしいフェスに出会うことができたことに加え、日本のフェス文化を改めて見つめ直すことができた。海外フェスの素晴らしさはもちろんのこと、外へ出てみたからこそ日本のフェスの素晴らしさも痛感したというのが正直なところだ。海外から輸入されてきたフェスティバルという文化が、日本独自の進化を遂げ、今では世界に誇れる文化になっていることを、一人でも多くの日本人に知って欲しい、ひいてはそんな文化を世界中の音楽ファンに知って欲しい、そんな勝手な想いから、「フジロックを文化遺産に」なんて仰々しいタイトルをつけてみたわけだ。10年後なのか、100年後なのか、フジロックで人生を変えられた筆者は半分本気でそう思っている。

フジロックのABCD『Awesome/Beautiful/Clean/Delicious』

海外からフジロックにやってきたアーティストが「最高だった!また苗場に帰ってきたい」なんてインタビューに答えている姿をよく見かける。正直言うと、ほんの数年前まではそんな台詞は半分社交辞令だと思っていた。もちろん日本好きのアーティストは多いことも知っているし、色んな面でホスピタリティに溢れているのが日本のフェスティバルの良さということも感覚的には理解していた。でも実際に様々な海外フェスに参加して感じたのは、彼らの台詞が全くもって社交辞令ではないということだった。。

海外フェスを取材する中でフジロックに出演したことのあるアーティストと話をする機会も多く、フジロックの話題になることもしばしばあるが、そんなときにアーティストが口を揃えて言うのが、以下の4つだ。

Awesome(最高)/Beautiful(美しい)/Clean(綺麗)/Delicious(美味しい)

面白いくらいに同じ台詞が返ってくるので、勝手にフジロックのABCDと名付けているのだが、本当に海外フェスに一度行くとフジロックのABCDを痛感することができる。「大自然の中で開催される壮大で美しい景色」、「異常なまでの会場の綺麗さ」、「食事の美味しさ・豊富さ」、そして「それら全てが紡ぎ出す最高の雰囲気」。フジロックに行ったことがある人にとってはある意味「普通」かもしれないあの環境は、海外フェスを多く経験した筆者や、筆者など比べ物にならないほど世界中を飛び回って色んなフェスに参加しているアーティストからしてみると、普通なんかではなく、もはや異世界、そして苗場でしか体験できない何かがあることを分かっているのだ。

その中でも上記の写真を見てもらえれば分かるが、海外フェスと比べて最も違うのが「会場の綺麗さ」。海外フェスに参加した日本人が一番驚くのは海外フェスのゴミ事情だろう。(もちろん綺麗なフェスは世界にもたくさんあるが、日本のフェスほどクリーンなフェスは残念ながら今まで体験したことがない)これに関して今日は多くを語るつもりはないが、とにかくフジロックは世界のフェス事情から鑑みると、普通ではない、ある意味「異常」なフェスティバルだと言えるだろう。

だからこそよく見聞きするあの「最高だった!また苗場に帰ってきたい」の台詞が嘘でないと今ならそう思えてくるのだ。前置きが長くなってしまったが、そういうわけで今回から「フジロックを文化遺産に」という突飛なタイトルで海外フェス事情を踏まえながら、これまでになかった視点でフジロックを語っていきたいと考えている。海外フェスと比べることで、ときには褒めちぎり、ときには一刀両断することで一歩でも本気で文化遺産に近づけていく手助けになれれば嬉しい。それでは今年は皆さん苗場でお会いできるのを楽しみにしています。

Photo by Ai matsuuRa

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著者プロフィール:nekomeguro

世界最大の音楽フェス<グラストンベリー>に参加したことがきっかけで、突然広告会社を退職し英国に移住。ロンドンで海外フェスプロジェクト「Festival Junkie」を立ち上げ、世界中の音楽フェスに潜入取材を行っている。現在は東京とロンドンを拠点に音楽マーケター/ライターとして活動中。執筆メディアはVICE、Qetic、EDM MAXXなど多岐にわたる。今年4月にフェス特化型プレイリストサイト「PLAYFEST」をOPEN。
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