001年のホワイトステージ以来、数々のフジロックのステージを盛り上げてきたEGO-WRAPPIN’。
デビューから、23年。9枚目となるアルバム『Dream Baby Dream』を先月リリース。
多様性に溢れた世界観で進化を遂げてきたふたりの音楽は、今もなお成長をとげようとしている。

以下、「Festival Echo ’19 フェス・エコ」に掲載されたインタビューの完全版をお届けします。

EGOのライブは安心できるライブだねってよく言われるんですけど、そう言われるとなんか悔しいんですよ。

――お二人にとって、フジロックはどんな存在ですか。

中納 日本のフェスの先駆けであり日本を代表するフェス。

森 世界に一番近いフェスだと思っています。

――EGOが結成したのは96年でした。

中納 結成した頃はまだフジロックが始まっていなくて。

森 大阪で活動していたこともあって、フジロックがスタートした後も「フジロックに出る」っていう思いをあまり持っていませんでしたね。よっちゃん(中納)はあったかもしれないけど。

中納 確かに出たいという気持ちは強かったですよ。周りには毎年フジロックに行っている知り合いも多かったし、大雨の富士山に行った友人もいました。海外のバンドが集結するイベントが他になかったから。私もそうでしたけど、多くの人がフジロックに対してすごく期待を持っていたんじゃないですかね。

ego-wrappin-2_01 フジロック3年ぶりの出演!進化し続ける「エゴ」の今【FESTIVAL ECHO ’19×瓦版特集 vol.1】

――最初に出た時の思い出は残っていますか。

中納 2001年、ホワイトステージでしたね。晴れていて砂埃が舞っている中、めちゃ盛り上がっていて。その光景は今でも忘れられませんね。

森 実際に行くまで、ステージがあれだけあるって知らなかったんですよ。

――前に出たのはEGOの20周年イヤーの年でした。

中納 3年前ですけど、なんか久しぶりって感じがしますね。

――何度もフジロックに出演なさって、フジロックへの思いに変化はあるのですか

森 変わらへんな。

中納 リリースがある年に出演することが多くなっているんですけど、リリースがない年でも常に出たいと思っているます。

森 どのステージに出たとしてもワクワクしますよ。

中納 フジロックは、出すバンドをちゃんと選んでいるような気がするんですね。だからこそ、選んでもらえたってこともうれしいんです。

――20周年の年は、フジロックから初の武道館公演とつながっていきました。

中納 20年というのはEGOにとって節目で、そんな節目もあっとい間に過ぎて、もう3年も経ってしまったかという感じです。25周年が目の前なんですよね。とりあえず目の前のことをやっていたら、時間が過ぎてしまっている。なになにに向けてとか、あまり考えていないかも(笑)。

――9枚目のアルバムがリリースされました。制作に入る時に、アルバムのコンセプトはたてていたのですか。

森 コンセプトは特になかったですよ。とりあえずよっちゃんとスタジオに入って、音遊びの延長で作っていくというのが今のEGOのスタイルだから。定義をつけて曲を作っていくということが、ちょっとおもしろくなくなってきたというか。音楽を学ぶっていうことをしていなくて、聞いてきた音楽に影響されて自分たちの曲が生まれていくっていうタイプなんですね。自分で聞いて、おもしろいと思える音楽を作られたらいいなっていうのが常にあって。よっちゃんとスタジオに入って、衝動的に作っていくのが一番の近道なのかなって今は思っているんです。時間はかかるかもしれないけど、そういう作り方のほうが、自分の中では楽しくなってきているんです。それぞれが作った曲の原型を持ち寄って、この曲はレゲエっぽくしようとか、ジャジーでいこうとか。そんな感じで始まりますね。キャッチボールすることで、混じり方のおもしろさみたいなものが出てくるんです。

中納 ソロでは声を重ねて作ったり、歌とピアノで作ったりしているから、まったく違う作り方ですよ。

森 EGOの場合は、インストではなく歌というのが前提としてあるんですよね。歌の表情が見えやすいようなリズムでありコードの進行であり。

ego-wrappin-2_02 フジロック3年ぶりの出演!進化し続ける「エゴ」の今【FESTIVAL ECHO ’19×瓦版特集 vol.1】

――誰か他の方にプロデュースをお願いすることもあるのですか。

中納 プロデューサーはいなくて、いつも二人でやっています。

森 その時に関わってくれたミュージシャンなりエンジニアの方なりが、プロデューサー的にアドバイスをくれることもあるんです。俯瞰的に見てくれるっていうか、自分たちでは気がついていないポイントを教えてもらうことも少なくないですね。

――配信やストリーミングなど、音楽を伝える方法が広がってきています。形に対するこだわりを持っていますか。

中納 アルバムをリリースした後は、聞き手がどうかっていうことになるから。去年、やっとガラケーからスマホに変えたんです。スマホに変えたら、ストリーミングもなかなかおもしろいし便利だなって思うようになりましたね。けれどじっくりは聞かないんです。流して聞くっていうか。アルバムでは曲間も、曲順も、めっちゃ考える。アルバムを通して聞いて欲しいって思っているから、CDとしても出すし、アナログも出すし。音楽を聞くということでも時短という風潮になっているじゃないですか。それはどうかなって思うんです。CDのプレイボタンを押すとか、レコードに針を落とすとか。映画館に映画を見にいくとか、美術展に絵を見にいくとか。この行為って、たぶんちょっとした余裕がないとできないことじゃないですか。この一手間であったり一歩なりが大切なことなんじゃないかなって。

――受動態ではなく能動態になること。

中納 人間がそれを忘れたらあかんと思うんですね。感じたりすることが少なくなってしまう。

――作品一枚に向き合って聞くということは、確かに少なくなっているのかもしれません。いっぽうでライブやフェスは多くの人から注目されています。

中納 みんな、いろんなことに対して普通に詳しいじゃないですか。でもひとつひとつに対する熱量っていうものがすごく減っていると思うんですね。昔のライブでは、熱狂のあまりにお客さんが気絶してしまうってこともあったじゃないですか。私はライブで白目をむいて倒れてしまったことはないんですけど、でもキャーって思ったライブも数多くあったし。

――フジロックに限らず、フェスはお二人にとってどういう存在ですか。

中納 いいプロモーションの場というか(笑)。普段、私たちのライブに来ない音楽ファンの人たちが集まっている場ですからね。

――EGO主催のフェスを考えたりはしていないのですか。

中納 なんかやってみたいという思いもあります。アジアのおもしろいバンドとかを集めて。

――確かにアジアへツアーに行く日本のバンドも多くなっていますし、フジロックにもアジアから多くのバンドが出演します。

中納 国とか人種とか関係なく音楽で結ばれるっていうことは、本当にいいことですよね。それが音楽が持つ力なんだろうし。

――今持っている、次の目標を聞かせてください。

中納 いろんな世代に聞いてもらえる音楽を作っていきたいですね。お年寄りから若い世代まで。アキ・カウリスマキっていう北欧の映画監督がいるんですけど、スウェーデンに行った時にその人が経営しているカフェに行ったんです。めっちゃオシャレでめっちゃかわいいんですよ。おばあちゃんと孫とか、おばちゃん同士とか、若い子のグループとか、いろんな人がカフェにいたんですね。その光景がすごく良くて、なんかそういうバンドになりたいなって。次の目標っていうか、いつも思っていることですけど。

森 THE GOSSIP OF JAXXではないメンバーとライブをしていくことを決めたんですね。そのメンバーたちとの音の関係を新たに構築していきたいと思っています。

――新しいメンバーとのライブは刺激になるんでしょうね。

中納 EGOのライブは安心できるライブだねってよく言われるんですけど、そう言われるとなんか悔しいんですよ。

ego-wrappin-2_03 フジロック3年ぶりの出演!進化し続ける「エゴ」の今【FESTIVAL ECHO ’19×瓦版特集 vol.1】

――けれどEGOのライブは、いつも安心して見ていられます。高レベルで安定しているし。

中納 でもね、安定を伝えているんじゃないんですよ。昔に作った曲をライブでやって、安心して楽しめるっていうことはすごくいいことだと思うんです。だけどその中でも、ワクワクしたり新鮮さを感じていたり、そういう聞かせ方もしたいなって思っているんです。

森 その時に自分たちがどう思っているのかを音で表現して、それを見てもらうのがベストやから。

――フジロックも新しいメンバーでのライブになるわけですね。

森 そう。

――最後にフジロックではどんなステージにしたいですか。

中納 フィールドオブヘブンのいい時間をもらっているから、「みんな、いいライブするから集まってよぉ」っていう心境です(笑)。

森 集まれ~って(笑)。

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text&interview by 菊地 崇
photo by 須古 恵

★「Festival Echo ’19 フェス・エコ」は岩盤、タワーレコード渋谷店、HMV、BEAMS、Jeep販売店、OSHMAN’S、CHUMSなどの各店舗で手に入ります。
(※一部店舗を除く)

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FESTIVAL ECHO’19

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