【こどもフジロック】「DJみそしるとMCごはんのケロポン定食」2017年7月30日（日）Gypsy Avalon・ライブレポート

魔法から覚めると「雨が晴れて、虹が出るといいね」というケロの語りが聞こえてきて、キッズランドのテーマ・ソングでもある名曲「にじ」が披露された。聴いても歌ってもじんわり涙がにじむ曲はそんなに多くは存在しないが、「にじ」は多くの人にとってその中のひとつに数えられる曲だろう。

日本全国の保育園や幼稚園などでも歌われ、いつ聴いても泣けてくるこの美しい歌は、作詞　新沢としひこ、作曲　中川ひろたかによって生み出された作品で、ケロポンズをはじめ、つるの剛士などによって広くカバーされている名曲であり、プレイパークづくりを通して被災地の子どもたちの心のケアを行っている「日本冒険遊び場づくり協会」の復興支援にむけたテーマ・ソングでもある。

昨年、森の音楽会では奇跡のように虹が出たのだが、今年は残念ながら出現しなかったものの、この日の歌も素晴らしかった。しかし、この歌だけは、ケロポンズ以上に客席で力強く歌う子どもたちの合唱に感動させられたことを付け加えておこう。

しんみりと聴き入った後は、「みんな知ってるかな？　大人も子どももみんなで踊っちゃおーう！　ネクスト・ソング！　エビカニ〜！」というケロとポンの声と共にケロポンズの代表曲「エビカニクス」が始まった。

今やYouTube動画再生回数が2,300万回を超えたこの曲のイントロに、カニツメを付けた子どもたちは爆発したように反応し、合羽姿で思い思いに踊りまくる自己解放の瞬間を迎えていた。おみそはんのラップからメンバー紹介へとなだれ込み、バンドのメンバーそれぞれが操る音を食い入るように見つめる子どもたちの目はキラキラと輝いていた。いつになくロック調の「エビカニクス」には英語バージョンも組み込まれ、盛り上がりは最高潮に達したのであった。

その後、「ただいま！」とステージに戻ったおみそはんとケロポンズによって、おみそはんの番組であるEテレ『ごちソングDJ』で作った楽曲「食べルーツ」のスペシャルな演奏が届けられてから、DJみそしるとMCごはん・パートが開始された。「ママのバーガー」「The Gang Eat More」を立て続けにご機嫌なヒップホップを届け、「次はピザの歌だよー！」という曲紹介に続いて「PIZZA」が始まった。「P」「I」と、そのスペルを体で作る子どもたちのはしゃぎっぷりを見ているだけで幸せな気分になれた。

曲終わりで「改めまして、こんにちは。おみそはんこと、DJみそしるとMCごはんです！　イエイ！」　と挨拶した後、「フジロックは今年で４回目、デビューしてから、ほぼ、ほぼ、毎年出演しています」と言い、最初の１回目はDay Dreamingでの出演予定だったものの雷雲のせいで幻となってしまったことや、翌年はリベンジでDay Dreamingに出演できたこと、昨年は苗場食堂でのライブを決行し、今年はアバロンに出演できた喜びを率直にオーディエンスに伝えた。

MC後、言葉遊びが楽しい「アスパラのベーコン巻き」では、「アスパラ食べるから　明日は晴れるかな」というキャッチーなメロディに覚えやすい歌詞を子どもも大人も口ずさむ。続いて披露された「きゅうりのキューちゃん」「パンプキンぜんざい」などで見られるように、おみそはんの歌詞には英語も多々織り交ぜられているので、子どもたちはきっと食と音楽を楽しむのと同時に英語も楽しく覚えられることだろう。

「みなさん、どこから来たんですか？　一番遠いところから来たのはどこかな？　群馬？　秋田？　横浜も遠いね！　みんな日本中の仲間が集まっていいことですね」というオーディエンスとのコミュニケーションの取り方ひとつを取っても、彼女の優しくて穏やかでポワワンとした丸い空気には自然と笑顔になってしまうのだが、新規のグッズを紹介する「グッズ音頭」では、どこか演歌調なその調子とおみそはんの持つ雰囲気から、商売っ気は一切感じられず、笑いを誘う和みの空間にしてしまっていた。

そしてケロポンズを再び呼び込んでのフジロック流コール・アンド・レスポンスを楽しみ、そのままの勢いで「ジャスタジスイ」、そして最後の曲は「あの素晴らしい味をもう一度」を共演し、ケロポンズが５年連続で出演してきたジプシーアバロン・ステージ史上、最大動員数をマークしたおみそはんとのコラボレーション・ライブは大盛況のうちに幕を下ろした。

何よりもこのレポートで伝えたいことは、雨に降られても、じっとステージを見据え、真剣に音楽に対峙し続けたこどもたちの眼差しは尊くて美しく、グリーン・ステージなどで多く見られる憧れのミュージシャンを前に歓喜する大人のそれとまったく等しいものであったということだ。

そしてひとつ、親として気になったこともあった。それはライブの時間帯についてだ。正午スタートということもあり、お昼寝タイムと丸かぶりだった子どもたちも多かったようで、ライブ中、そしてライブ後も、親、祖父母、またはワゴンに抱かれて、雨の中でも気持ちよさそうにスヤスヤと眠りについた子どもたちの姿をたくさん目にした。どの子も至福そうな寝顔であったが、本来ならばきっとライブを楽しみたかったはずだ。

年齢によっても異なるとは思うが、昼寝が必要な子どもにとって、フジロックにおけるライブ体験のベスト・タイムは何時なのだろうか。それを割り出してタイムテーブルに反映してもらえると子連れ参加者の負担を少しでも減らせるような気がするのだが、実際あの場にいた大人たちはどんな思いでいたのだろう？

尚、このスペシャルなコラボレーション「DJみそしるとMCごはんのケロポン定食」は、今秋10月7日（土）、8日（日）に開催される朝霧JAMへの出演が発表された。そちらに参加される人は下記のセットリストを予習して、多いに楽しんで欲しい。

音楽も踊りも自分流に楽しむことができる元来自由な子どもたちと、自発的、または、何かをきっかけに巻き込まれ、ライブそのものを楽しんだ大人たちそれぞれが自由なスタイルで楽しむ姿を一同に臨めるステージ・アクトは、これから子連れ参加者がますます増えてゆくであろうフジロックの未来を考えると必要不可欠であり、果たす役割も大きい。
近い将来、こうしたオーディエンスたちの姿がフジロックの原風景の一部となったとき、フジロックは日本初の三世代が楽しめる音楽フェスティバル空間として確立することだろう。

取材・文・写真＝早乙女 ‘dorami’ゆうこ
写真（ケロポンズ、DJみそしるとMCごはん）＝ⒸTsuyoshi Ikegami

■7月30日（日）12:00〜13:30
「DJみそしるとMCごはんとケロポン定食」セットリスト

1 ちょっとだけ体操
2 かみなりドン
3 Go! Down! ジェットコースター
4 ごはんハンハン
5 なんでも歌合戦
6 ひっつきもっつき
7 前髪短協会のうた
8 タコクロナイズドスイミング
9 ふりかけパラパラ
10 糸引き納豆
11 地球と踊ろう
12 にじ
13 エビカニクス
14 食べルーツ
15 ママのバーガー
16 The Gang Eat More
17 PIZZA
18 アスパラのベーコン巻き
19 きゅうりのキューちゃん
20 パンプキンぜんざい
21 グッズ音頭
22ジャスタジスイ
23 あの素晴らしい味をもう一度

1-3：鈴木翼
4,5,13-14,22-23: ケロポンズ＆DJみそしるとMCごはん
6-12: ケロポンズ
15-21: DJみそしるとMCごはん

バンドメンバー：dr ふーちん、baさくら、gtやまぶー、keyしんちゃん

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