<FUJI ROCK FESTIVAL’25>
2025.07.27(SUN)
Grace Bowers@FIELD OF HEAVEN
今年のフジロックの天国に、新たなギターヒロインが舞い降りた。
卓越したギターパフォーマンスで世界中の注目を集める19歳のギタリスト・ソングライターのGrace Bowers(グレース・バウワーズ)だ。
昨年Blue Note Tokyoに初来日したグレースだが、今年2度目の来日で初となるフジロック出場を果たした。
フジロック最奥に位置するFIELD OF HEAVEN(フィールド・オブ・ヘヴン)のフロアには、彼女の故郷カリフォルニアの旗が揺れる。足を運ぶのにも一苦労する会場へ、彼女を目当てに訪れたファンが埋め尽くす。その表情には期待の色が浮かんでいるのがわかる。誰もが彼女のプレイを堪能できる瞬間を待ち望んでいたのだ。
定刻通りにグレースがバンドメンバーを連れ立ちステージに姿を現すと、のっけからファンキーなブルースサウンドが響き渡り、開始早々に会場は熱狂の渦に包まれていく。
トレードマークのブロンドカーリーヘアをなびかせながら、オリジナルのペイントが目を惹くGibson Custom Murphy Lab 1964 SG Standard With Maestro Vibrola Faded Cherry Heavy Aged でグルーヴ感満点のアーム奏法を繰り出す。SGのサウンドが響き渡る甘美なギターソロに、息を呑む観客の姿が印象的だった。
その卓越したギタープレイもさることながら、一層心を惹かれるのはギターを弾く彼女の魅せ方だ。まるで自分の一部のようにギブソンのSGを操り、演奏のたびに変わる表情。ハードロックの申し子Angus Young(アンガス・ヤング)を思わせるほどにほとばしる感情を全身で表現する姿は、あの場にいた誰の目にも焼きついたはずだ。
ライブ終盤には、Stevie Ray Vaughanの名曲「Scuttle Buttin’」のカバーを披露。ギター好きには聴き馴染みのある高速リフを弾き始めると、会場の熱気は最高潮に。歓声に煽られ、彼女のプレイはさらにボルテージを上げていく。
勢いそのままに最後まで弾き切った彼女に、観客からは惜しみない歓声が送られた。あのとき、確かに私たちは目にしたのだ──新たなギターヒロイン誕生の瞬間を。
Photo by 清水創太郎
Text by 竹田賢治