毎回様々なゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力/思い出/体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回は2017年にルーキー・ア・ゴーゴー(以下、ルーキー)で初出演を果たし、2018年にはレッド・マーキーに出演。そして今年、約3年ぶりにCHAIが<フジロック>に帰ってきます。
昨年10月にはゴリラズ(Gorillaz)のニューアルバム『Song Machine: Season One – Strange Timez』に参加、そして先月5月21日にはアメリカのインディペンデント・レコード・レーベル サブ・ポップ(SUB POP)からニューアルバム『WINK』をリリース……とパワフルに活躍するCHAI。文字通り“ワールド・ワイド”な存在へと飛躍する彼女たちは、今年のレッド・マーキーでどんな景色を見せてくれるのでしょうか? ステージにかける意気込み、そしてCHAI自身が考える「フジロック・ドリーム」について、熱い言葉で語っていただきました。
Interview:CHAI
ユウキ「フジロックのステージは夢があると思った。特別なフェスだよね。」
──まず、4人がお客さんとして初めて<フジロック>に行ったのはいつでしたか?
マナ ルーキーに出演する前の年だから、2016年かな。その頃は4人とも名古屋に住んでたから、車を出して苗場まで行ったんだよね。でも純粋に遊びに行った、っていうより「フジロックに出たいから観に行った」って感じだったな。
──すごい動機ですね!
ユウキ 以前から<フジロック>にはすごく憧れがあったんだよね。それで「出るからにはまず観なきゃね!」って、気合入れて遊びに行った。ジ・インターネット(THE INTERNET)とかSuchmosとかを観て、すっごくテンションが上がったのを覚えてる。
──そこから1年後、本当にルーキーのステージへの切符を掴み、<フジロック>に出演したのはドラマチックですよね。ルーキーのステージで記憶に残っているエピソードはありますか?
ユナ キャンプサイトに帰るお客さんが足を止めて観てくれて、予想以上に人がたくさん入ったんだよね。ただ「(集客が)すごく難しいステージ」って聞いていたからこそ――。
カナ 手応えはめちゃくちゃあったよね。たくさんの人が自分たちを観てくれることにびっくりした。だってその頃はまだ知名度もなかったから。ルーキーに出た途端に、いつものライブに遊びに来るお客さんが100人くらい増えたし。
マナ だから次の年にレッド・マーキーへの出演が決まったのは当然だと思った!「これで出られなかったら文句言ったろ!」ってね(笑)。
ユウキ しかも、ルーキーでのパフォーマンスを観てくれたことをきっかけに知り合えたアーティストもいっぱいいたよね。never young beachやYogee New Waves、D.A.N.とかとはその年の<フジロック>で出会ったもん。そこからツアーに呼んでもらったり、コラボレーションが生まれていって。改めて<フジロック>って夢がある空間だと思った。特別なフェスだよね。
カナ「あの空間で音を鳴らせば全てがキラキラする。だからフジロックが好きなんだよね。」
──2018年は、前年のルーキー枠から来場者がアーティストを選出する投票企画「FRF’18 出演権獲得!目指すはメインステージ!」で出演権をゲットしたんですよね。実際にレッド・マーキーのステージに降り立った時の感触はいかがでしたか?
ユナ めっちゃ緊張した! 日曜の24時スタートで、帰る人もいる時間帯だったし、どうなるか想像ができなかった。でもフタを開けてみたらオーディエンスもお酒が入っててパーティーみたいに盛り上がって。奥までぎっしり人がいたんだよね。だからステージに立った瞬間に緊張も吹っ飛んで、めちゃくちゃ楽しかった。海外のフェスみたいな自由な雰囲気じゃなかった?
ユウキ お客さんが全員文字通り「はっちゃけてた」よね。<フジロック>の前にサウス・バイ・サウスウエスト(South by Southwest:アメリカ・テキサス州で開催される大規模なインタラクティブフェスティバル)に出演したり、全米ツアーを組んだりしていたぶん「あれっ、普段の国内でやるステージとはちょっと違うぞ?」って敏感に感じたのかも。
マナ <フジロック>のお客さんは何もかもさらけ出してて、開放的に音楽を楽しんでるイメージ。すごく良いよね。「私たちは他とは違うんだ」ってオーラがぷんぷんするし、本当に音楽が好きなんだなって思う。どんなに雨が降ろうが大勢の人がはっちゃけられる空間って、世界でも珍しくない?
ユナ 2019年のピッチフォーク・ミュージック・フェスティバル(Pitchfork Music Festival:アメリカ・シカゴで開催される音楽フェスティバル)に出演した時とか、ゴロゴロゴロ……って遠くで雷が鳴り始めた途端に、音が止まったもんね。
ユウキ モニターに「これから雷雨が来ますから避難してください」ってアナウンスが出てきたし。海外は日常の延長線上に音楽があるから、フェスで無理はしないんだなって思った。日本だと音楽に非日常感を求めている印象があるから、<フジロック>の開催中に大荒れの天気になっても盛り上がる。そういう意気込みがあるのがイイところ。好きなアーティストを大雨の中で聴いて、もっと好きになるとかね。
──お客さんだけじゃなくて、アーティストも非日常的な空間でパフォーマンスすることを楽しんでいる印象があります。
カナ ほとんど来日しないようなアーティストも、<フジロック>には出演するもんね。それくらい各々のアーティストにとって<フジロック>は特別な存在。大御所も若手も関係なく、臨む時のエネルギーが凄まじいな、って思う。
それに<フジロック>って大自然に囲まれていて、照明とかエリアの装飾も最高。「こんなに音楽って素晴らしいんだ!」って思わせる空間になってる。自分が興味を持たなかったり、知らなかったりしたアーティストでも、あの空間でライブするとすごく輝いて見える。もちろん出演者のラインナップが最高で、誰もが超準備をして全力投球してきて……っていう要素もあるけど、あの空間で音を鳴らせば全てがキラキラする。だから<フジロック>が好き!
──そんな“キラキラできるステージ”を経験してから、CHAIのライブパフォーマンスには変化が起きましたか?
ユウキ むしろルーキーとレッド・マーキーを経験したからこそ「自分たちは変わらなくていいんだ」って思った。場所や国、お客さんの楽しみ方に合わせてパフォーマンスに違いをつけない方がいいなって。特にレッド・マーキーでのお客さんの反応を見てから「私たちはこれでいいんだ」って自信がついたかな。
ユナ「マスクで顔半分が隠れてても、お客さんの目から感情が伝わってくる。」
──そして2ヶ月後、皆さんにとっては3年振りの<フジロック>が控えているわけで。今回は全ラインナップが国内アーティストという、<フジロック>史上前代未聞の年ですが、いちファンとして楽しみにしていることはありますか?
ユナ 日本のアーティストだけだからこそ、今年は特別感があるよね。STUTSさんがめちゃくちゃ観たい! 折坂悠太さんも良いなあ。
マナ 電気グルーヴは観たいね〜。ceroも大好き。坂本慎太郎さんも出るんだ、ヤバイね!GEZANはお客さんもパワーがあるし、とにかく強いイメージ! すごく気になってる。
カナ 別日だけどくるりは観たかったなあ。出演アーティストのラインナップを見ていて思うけど、メジャーアーティストだけで固めないのが<フジロック>のいいところだよね。
マナ 私もそう思う。アーティスト然りお客さん然り、音楽との“偶然の出会い”を作ってくれるのが<フジロック>の面白いところ。そういう空間づくりをしてくれるのは本当に嬉しいよね。10人くらいのキャパシティでもちゃんとステージを作って、お客さんに聴かせたいアーティストをピックアップするところとかも最高! 洋楽・邦楽、メジャーとマイナー、みたいな“音楽の壁”をなくしてくれる場所、それが<フジロック>だと思う。
ユウキ 2018年に出演した時は、会場でメディア出演とかがあってあんまり回れなかったから、今年は時間の許される限りお客さんとして楽しみたいよね。思い返すとフジロックをちゃんと回ったの、2016年に遊びに行った時が最後かも。
カナ あ、あと<フジロック>のご飯も大好き!フィールド・オブ・ヘブンに出店してる、SAKURAGUMIのピザをみんなで食べたことあるよね。今年も出店していたら食べたいな。
マナ あと川沿いに出店していたカレー(森のハイジカレー)も美味しかったよね。
──お客さんとしても<フジロック>を堪能する気満々ですね。昨年3月、CHAIが海外ツアーから帰国した直後、コロナによる緊急事態宣言に見舞われましたよね。ライブができない状況に対するストレスはありましたか?
ユウキ 2019年頃はあちこちでライブをしていて、なかなか創作する時間をつくれなくて。だから、曲を作れないことに対するストレスの方が溜まってたかも。
ユナ 2019年は1年の半分くらい海外にいたからね。
カナ コロナ禍で世の中がネガティブになったとは感じたけど、自分と向き合う時間が作れたのは確かだった。今後は「音楽がより必要とされる時代にきっとなる」って、ポジティブに考えてたかな。だからこそゴリラズとのコラボレーション然り、本当にたくさんのことにチャレンジできた年だった。5月にリリースしたアルバム『WINK』も、全曲を海外の制作スタッフとリモートで繋ぎながら作ったしね。
──ニューアルバム『WINK』を聴いた時、収録曲が<フジロック>でどう鳴るかが本当に楽しみになったんです。今年のレッド・マーキーは、どんなステージにしたいですか?
マナ とにかく新曲は全部やりたい! もう<フジロック>のお客さんにみせたくてしょうがない。特にレッド・マーキーは屋根があって響きやすいから、低音がキレイに響くと思う。
<フジロック>は日本国内でも特に好きなフェス。チーム内で「フジロックには絶対に出よう」って共有していたのもあって、オファーが来た時はすごく嬉しかった。コロナ禍でのフェスのあり方を模索してくれている気持ちがありがたかったな。
ユウキ そもそもフェスに出るのが久しぶりだから、全“フェス欲”を注ぐことになりそう。自分たちのファン以外のお客さんと会う機会が減っていたから、「そこにいる全員を巻き込むぞ」っていうハングリー精神を全投球することになると思う。2018年のCHAIとは全然違うステージをみせることになるだろうし、CHAIが培ってきた“ワールドワイド”な部分を全部ぶつけたい。
マナ「フジロックは散らかす場だから、爆発するしかないよね!」
──お客さんの中には2018年のレッド・マーキー以来、久々にCHAIを観るという音楽ファンもいるかもしれませんね。
ユナ そういう人たちを巻き込みながら、新生CHAIを130%くらいの勢いでぶつけるのが本当に楽しみ!
つい最近ツアーが始まって、やっとお客さんの前でライブをする機会に恵まれたんだけど、やっぱりお客さんがいる方が楽しい! マスクで顔半分が隠れてても、お客さんの目からビームみたいに感情が伝わってくるんだよね。早く「今のCHAIってこんなんだよ、ヤバくない?」ってお客さんたちにも伝えたいし、踊り狂ってくれるであろうお客さんたちと<フジロック>の空間を共有したい。
マナ <フジロック>ははっちゃけて散らかす場だと思ってるから、爆発するしかないよね! 私も叫びまくろうと思ってる。<フジロック>に限らず、実は8月までに楽しみなことが色々ある。みんなも楽しみにしていてほしいし、その期待をどんどん上回るつもり。絶対に、他のみんなが見せられないものを見せてやる! って気持ちでレッド・マーキーに挑むと思う。私たちも<フジロック>のお客さんからエネルギーをもらうしね。
text&interview by Nozomi Takagi
photo by なかむらしんたろう