平井「『本当に楽しかった!』と思うポイントは、毎年違う」
小川「しかも、新たに発見があるにもかかわらず、どんな人にもホーム感を味わわせてくれる場所」
――何度も行かれてみて、お2人が<フジロック>に感じる最大の魅力というと?
平井:私は、「人によって感じる魅力が違う」ということだと思います。私自身も何度も会場に行く中で、「雨でも素敵だな」「晴れていて素敵だな」「こんな人に会えたな」「苗場食堂の隣のおじさんが面白かったな」とか、行くたびに魅力を感じるところはたくさんあって。「本当に楽しかった!」と思うポイントは、毎年違うんです。でも、毎年「ああ、楽しかった」という気持ちだけは共通していて。3日間では会場で起こっていることすべてを体験できないからこそ、行くたびに発見があるというか。
小川:しかも、新たに発見があるにもかかわらず、どんな人にもホーム感を味わわせてくれる場所でもあると思うんです。毎年行くと、「お帰り」って言ってもらっているような空気感があるというか。新たな発見がありつつ、同時に懐かしさも感じるという、その両輪があるのは<フジロック>ならではだな、と思います。私は去年、3日目のトリのレッチリのライブを観たんですけど、実はちょうど10年前の06年でもヘッドライナーのレッチリを見ていたんですよ。そんな体験をさせてくれるのも、同じ場所で、同じ空間で、変化をしながらも続いてきたフェスだからなのかな、と実感しました。
平井:歴史があるからこそ、ですね。
――それだけに、自分の10年間にも思いを馳せることになった、と。
小川:そうですね。貴重な体験をさせていただきました。レッチリは10年前にはすでに世界的な地位を確立していたバンドとして登場したので、それはそれで勢いがあってかっこよかったんですが、去年はみなさんもう50代で。また違うかっこよさを感じました。
――演奏自体も、ある意味大人っぽさを感じさせるものに変化していました。
小川:ひとつひとつの音や歌詞を大事に演奏しているような雰囲気で。でも、同時にフリーもまだまだヤンチャな部分があったりもして、昔の風味を残しつつ、円熟味を増したような雰囲気でした。
平井:ああ、素敵に年齢を重ねていたんですね。
小川:そうなんです。ギタリストは変わってはいましたけど、主要メンバーは変わらず仲がよさそうなままで、「変わらずそこにいてくださってありがとうございます」という気持ちになったのを覚えています(笑)。
――ちなみに、去年レッチリのメンバーはフジでのBABYMETALのライブをステージ袖で観ていて、その後自身のワールド・ツアーにオープニング・アクトとして抜擢しています。
小川:ああ、そういうことも生まれる場所なんですね!
――今年も<フジロック>に行けたとしたら、お2人はどんなアーティストのライブを観てみたいですか? 平井さんは……小沢健二さんですよね(笑)。
平井:(笑)。小沢さんが出演する2ステージは欠かせないです。あと、ゴリラズも気になっていて、どんなパフォーマンスをされるのか楽しみです。以前、村上春樹さんが「ランニング中にゴリラズの曲を聴くのがすごく合う」とおっしゃられていて、それを聴いて私もゴリラズを聴いたことがあったんですよ。そうしたら、確かにいいなぁと思ったんです。
小川:私はやっぱり、今はビートルズ脳になっているので、テンプルズのライブを観てみたいです。私はビートルズのアルバムの中で一番好きなのが『リボルバー』なんですよ。ちょっとサイケなあの時期がとても好きで。テンプルズにも、そういった昔のサイケの雰囲気が感じられますよね。あとは、アウスゲイルを3年くらい前に聴いたときにすごくいいなぁと思ったので、外で観てみたいです。「明るいボン・イヴェール」という雰囲気がありますよね。
――<フジロック>は昨年20周年を迎えて、今年は新たなスタートの年でもあります。お2人はこれからの<フジロック>に、どんなフェスであってほしいと思っていますか?
平井:敷居が高くない、色々な人が楽しめるフェスであり続けてくれたらいいな、と思います。私は13年に初めて行ったとき、初めてにもかかわらず、小川さんが言われていたように「おかえり」と言われているような感覚になったのを覚えているんです。まるで音楽が好きな人にとっての実家みたいに、誰でもウェルカムな雰囲気があって、若い世代の方や、フジロックキッズたちが大きくなっても、ずっと新しくファンになってくれる方がいるんじゃないかな、という気がして。そのすごくオープンな雰囲気を、ずっとなくさないで、長く日本で愛されるフェスティバルであり続けてほしいな、と思います。
――小川さんはいかがでしょう?
小川:同時にこれからは、フェス文化に馴染んだ方も高齢になっていくと思うので、おじいちゃん/おばあちゃんになっても、楽しめたらいいな、とも思いますよね。3年ほど前に、イギリスの<レディング・フェスティバル>に行ったときに、70代ぐらいの白髪のご夫婦が2人で椅子に座って、ワイン片手にライブを観ていたんですよ。
平井:ああ、とても素敵ですね。
小川:そのときに、「私も歳を重ねたら、こんな風になれたらいいな」と思ったんです。だから、<フジロック>にそういう空間がずっと広がっていたらいいな、と思います。親子3世代~4世代でも行けるような空間でいていただければ、とても嬉しいですね。
――今日はありがとうございました! これからは<フジロック>の会場で、お2人が会うこともあるかもしれませんね。
平井:そのときはハイタッチですよね(笑)。
小川:ぜひ!
平井:アナウンサー同士って、特に他局出身の方だと、かしこまってしまうところがあるんです。でも、フジロックの会場で会えたなら……。
平井&小川:(笑顔でハイタッチをする)
平井:ぜひこんな形で挨拶をしたいですね!
text&interview by Jin Sugiyama
photo by 横山マサト
INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL’17
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
OPEN 09:00/START 11:00/CLOSE 23:00(予定)