フジロック生みの親、日高正博氏インタビュー『完結篇:今年は“寝ないフジロック”がテーマ』

豊間根

ここからは二日目土曜日のラインナップについてお聞きします。このインタビューが公開されるのはタイムテーブルが発表される7月1日(金)です。そのタイムテーブルで、ヘッドライナーのベックの後にバンドがいるっていうことを初めてみんなが知ることになるんですが、まずそこを説明してください。

日高

はっきり言うと、ベックが新幹線で帰りたいってことなんだよ(笑)。全くベックらしいよな。普通ヘッドライナーは22時半過ぎに終わるんだけど、それじゃ新幹線の最終に間に合わないから、21時ぐらいには終わりたいって言ってきたんだよ。今まで聞いたことない話だけど。でもさ、実は俺も考えたことがあるんだよ。例えばさ、年齢層が高いお客さんを相手にするヘッドライナーの場合、お客さんが帰りの新幹線に間に合うようにとか。でもベックはお客さんじゃないんだよね(笑)。自分が新幹線に乗って帰りたいって(笑)。でもまあ、それはしょうがないだろうってことでね。本人の希望を叶えてあげようって考えたんだよ。

豊間根

だから土曜日はヘッドライナーが19時半から始まるんですよね。

日高

うん。それで、そのあとどうしようと。最初はバンドを入れる気はなかったんだよね。思い切ってDJ三人ぐらいぶっこんで何かやるかっていうのも考えたんだよ。でも色々考えて。アメリカのスイングジャズのビッグバンドを引き連れていたグレン・ミラーっていう俺の大好きな人がいたんだよ。本当に音楽的に色々な影響を与えた人だったんだけど。この人は1944年の12月に亡くなったんだよね。第二次世界大戦中に、イギリスからフランスにオーケストラを連れて慰問に行く途中で消息不明になったんだよね。グレン・ミラーの乗ったセスナ機がドーバ海峡で落とされたのか? ってね、まあ多分そうなんだけど、跡形もないんだから。そういう風にグレン・ミラーっていう人は亡くなったんだけど、やっぱりヒット曲だらけなんだよ。若い人でも聞いたことがあるって曲がいっぱいあるわけ。そうしたら、若いお客さんに40年代のスイングジャズのオーケストラを生で聴いてもらいたいなって、そっちの方に頭がいって、で、色々考えたわけ。それでたまたま俺の友達のウィリーが、十何年ぶりにジャンプ・ウィズ・ジョーイを復活させて<フジロック>に出演する訳よ。そのウィリー(ドラムス)のパートナー、ベースのジョーイも入って、キーボード、ギター、ホーンセクション3人のジャンプ・ウィズ・ジョーイのメンバー7人を中心に、日本からはトップクラスのジャズのミュージシャン達に入ってもらって「FRF 20th Special G&G Miller Orchestra」を結成することになったんだ。

豊間根

(資料を見ながら)これ、ホーンセクションだけで10人ってすごいですね(笑)

日高

シンガーを除くとコンダクターを入れて総勢15人のビッグバンド・ジャズのオーケストラになるよ。日本だとキャバレーのイメージなんだけどね。バンドは全員タキシード着てさ、楽譜を置くスタンドがあって。ミラーボールが回って、綺麗な照明があって。そこでジャズのオーケストラに演奏して欲しいっていうのがあって。

豊間根 最初バンドは考えていなかったのに、結果総勢15人のビッグバンドになるって日高さんらしい(笑)
日高

そこで曲を考える訳なんだよ。あーでもない、こーでもないって。ようはグレン・ミラーのヒット曲はいっぱいあるんだけど、それを全部演奏しても歌がないから、若い人たちが観てもいまいちピンとこないかもしれないなと思ったんだよ。そこでシンガーとして曽我部くんに声をかけた。俺が彼に言ったのはビートルズ。楽曲も指定して。この曲とこの曲をやってくれって(笑)。あと一曲は彼に選んでもらうってことで3曲歌ってもらうよ。他には、加藤登紀子さん。加藤登紀子さんは、前に一緒にお酒を飲んだときに清志郎くんの曲をやりたいって言っていた記憶があったんだよ。それが頭の中にあって、じゃあやってもらえないかなって声をかけたら、土曜日にそこでやりたいって言ってくれたんだよ。もう一曲はジョンの曲かな。あとはEGO-WRAPPIN’の中納(良恵)さんが出てくれる。中納さんに俺の方からお願いしたのが、笠置シヅ子をやって欲しいって。それで清志郎くんの代表曲を全員で歌ってもらえたらなと。だからシンガーを加えると総勢18人のビッグバンドになる。それを全部グレン・ミラー・サウンドでやるんだよ。一番最後の曲は、聴けばみんなわかると思うんだけど、“ムーンライト・セレナーデ”っていう本当に美しい曲で終わる。

本当にみんなに聴いて欲しいと思ってるよ。<フジロック>でしかあり得ない音楽なんで、お父さんやお母さんにも観に来て欲しいよね。それでお客さんから感想を聞きたい。話を聴いてもらってわかると思うんだけど、これを実現するのはものすごく難しいんだよ(笑)。まず演奏すること自体が難しいっていうことがある。それで2ヶ月ぐらい前かな、ジャンプ・ウィズ・ジョーイのウィリーとジョーイに日本に来てもらったんだ。それで今回演奏してもらう、俺の30年来の友達なんだけど、日本人のアレンジャー・コンダクター、ホーンセクションに引き合わせて。彼もバークレーに行っているし、ホーンセクションのリーダーもバークレーに行っているから音楽的な素養は十分なんだけど、非常に難しいんだよ。考えても考えてもきりがないぐらいで。リハーサルをやりながら決めていくしかないんだけど。ジャズのオーケストラで10人のホーンセクションだから、各パートごとにスコアも書かなきゃいけないし。でもみんな一流のミュージシャンだから絶対うまくいくと信じているよ。

豊間根

バンド名が「FRF 20th Special G&G Miller Orchestra」。グレン・ミラーのGはわかりましたが・・・?

日高

最初のGはグリーン・ステージのG。だからグリーン・ステージ、グレン・ミラーオーケストラだよ。長いけどな。ビッグ・バンド・ジャズのオーケストラだよ。
豊間根

土曜日はヘッドライナーの後にもうひとつハイライトがあるってことですね。とにかくすごく楽しみです。土曜日のPYRAMID GARDENでアレックス・パターソンが1時から3時って書いてありますけど……寝かさない気ですね(笑)?

日高 寝かさないよ。日曜日は寝ていいよ(笑)。「まあ寝るなよ」ってことだよ、明くる日まで。

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豊間根

最終日のヘッドライナーのレッチリについては以前のインタビュー(前・中・後編)で散々語ってもらいましたが他に何かありますか?

日高

どっかでアンソニーがお腹が痛いってキャンセルしたんだよな? 一応連絡とったんだけど、たいした事はなかったって。心配しなくて大丈夫ってことだったよ。

豊間根

この前、瓦版で電気グルーヴにインタビューして、日高さんのメッセージも伝えて。本当に「スペシャルゲストっていうスロットは光栄です」と言っていました。このクロージングアクトのアイデアについて、卓球さんが「その手があったか!」って言ってたんですね。

日高

去年の忘年会で、電気グルーヴのマネージメントの女性から、卓球くんが「なんかまた面白いカタチで出られないかな?」って言っていたっていう話を聞いて、ずっと頭の中に残ってたんだよね。で色々考えて。ここ何年間はさ、クロージングってやってないわけだよ。じゃあ、と思って。20回目のラストダンスをやらないかな、て。

豊間根

卓球さんには、電気グルーヴのパフォーマンスが終わった後に、岩盤スクエアでDJもやってもらいます。相当深い時間からになりますが。

日高

好きだな、あいつも(笑)。とにかく寝るなっていうことだよ(笑)。

豊間根

最後に、(忌野)清志郎さんとジョー・ストラマーにはいて欲しかったですね、20回目の<フジロック>に。

日高

まぁしょうがないよね。いたら一緒に酒が飲みたかったね、俺のキャンプサイトで。それが残念だよね。ジョーは一年目からだからね。ずっとキャンプだったよ、アイツは。実はふたりについては全く同じ光景があったんだよね。ある年、俺が朝の4時くらいにキャンプサイトに帰って来ると、ジョーがベロベロになってて。嫁さんに肩を担がれてて、歩けなくて。「ジョー、どうしたんだ? 大丈夫か?」って言ったら、そしたらジョーがさ、「マサ、俺はプロフェッショナルだから大丈夫なんだよ」って。もう意味がわからん(笑)。何がプロフェッショナルだよ?! って(笑)。でもね、ジョーはずっと俺を待っていたらしいんだよ。ただ待てど暮らせど帰ってこないから、ベロベロになっちゃったらしいんだ。っていうのが1回あって。で、清志郎くんもね、確か俺が言ったんだよ、「裏にキャンプサイトがあるからそこで飲もうね」って。で、やっぱりその日俺がキャンプサイトに戻ったのは明け方でさ。で、明くる日に聞いたら、清志郎くんがずっと待ってたんだって。俺のキャンプサイトは火をたいてるからさ、そこに座ってずっと待ってたんだって。だからふたりとも全く同じ光景が浮かぶんだよね。でもそこに俺はいなかったという(笑)。

豊間根

仕方ないですけど、今年彼らがいてくれたらって想像しちゃいますよね。

日高

昔、清志郎くんと酒飲んだときに、「出来る限りやらないか?」って言ってやった、前夜祭、グリーン、ヘブンとかに毎日名前を変えて出てもらったじゃない? 今年は20回目だから、「清志郎くん、今年は全ステージだ!」って(笑)。出来たかもしれない。本当にやってたかもしれないな(笑)。そこにジョーも飛び入りして、とかあったかもしれないな。

豊間根

すみません!勝手にしんみりしちゃいました。

日高

前にも言ったけど、20回目とか嫌だったんだよ、本当は。でも、みんなが言うから、「じゃあ、やってやる!」ってなったんだよ。

豊間根

今年は盛大に朝まで騒いで終わる?っていうことですね。

日高

うん。来年は静かに民謡大会でもやろうかな(笑)
豊間根 ハハハハ!ありがとうございました!

Interview by Satoshi Toyomane
Text by Yuka Yamane
Photo by 横山マサト

『SMASH go round 20th Anniversary』 FUJI ROCK FESTIVAL’16

2016.07.22(金)、23(土)、24(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場