各界のキーパーソンによって<フジロック>を語り尽くすコーナー「TALKING ABOUT FUJI ROCK」の特別篇として、前編・中編・後編と3回に渡ってお届けしたSMASH(スマッシュ)の代表・日高正博氏インタビュー。

<フジロック>開催前から第一回目・第二回目の裏側、「フジロック×苗場」エピソードまでそれぞれ<フジロック>に関するディープな背景を語っていただきました。そして今回お届けする完結篇では、解禁されたばかりの最終ラインナップ&タイムテーブルについて日高氏に直撃!

インタビュアーは、前3回同様、『富士祭電子瓦版』の立ち上げ人であり、<フジロック>オフィシャルショップ・岩盤 / GAN-BANの代表を務める豊間根聡氏。今年のもう一つのテーマ「寝ないフジロック」についてや、初日1発目に出演となったBOREDOMS、FRF 20th Special G&G Miller Orchestraまで、“なぜ・その日時に・そのアーティストをブッキングしたのか?”。<フジロック’16>に関する日高氏の構想について伺いました!

前編『フジロックができるまで』はこちら

中編『あのときフジロックで起きたこと』はこちら

後編『フジロック ついに約束の地、苗場へ』はこちら

INTERVIEW:SMASH 代表・日高正博氏

豊間根 瓦版では、今年<フジロック>20周年ということで、日高さんの超ロングインタビューを前編・中編・後編と3回に分けて掲載してきました。あの時はまだ2月でした。今日が6月21日ですから、いよいよあと1ヶ月というタイミングです。インタビューの完結篇として、今年の<フジロック>について語っていただきます。まずは全体について話していただけますか?

日高 うん、だからあとひと月だよね。よっぽどの事がない限り全部決まったよ。今年のブッキングで俺の中にあったのは、19年前の1997年、1回目の<フジロック>に出演したアーティストに出てもらいたいっていうこと。それがひとつ目。それと今年はお客さんを眠らせないってことだな(笑)。今までの<フジロック>では「夜は寝るもんだよ」って感じで、3日間あるから気持ち的にはお客さんを休ませなきゃ、って思ってやってきたんだけど、今年は寝ない<フジロック>でいきたいと思ってる。本当に東から西まで一晩中やろうかなと思ったんだよね。だから例えばカフェ・ド・パリで金曜日に「オールナイトフジ」を復活させたり、土曜日の深夜はピラミッド・ガーデンでアレックス・パターソンのDJを入れたり。まあとにかく、一晩中音楽満載っていうのが俺の中のふたつ目のテーマだったんだよ。それも含めて結構できたと思うよ。「寝るなよ!」だな(笑)。

あとは去年なくなったオレンジ・コートだよね。復活はしないけど、でもまぁ、あれだけの場所があるわけだから、そこでカフェないしレストランでも良いからお客さんがゆっくりできる場所を作りたいということで、オレンジ・カフェができる。小さなちょっとしたステージでトリビュートバンドを入れて、音楽もありってことで。これはうちの連中が選んだバンドで、知らない人も多いと思うけど楽しめるだろうと。あとは落語をやろうと思ってる(笑)、キッズランドで。というのは、子供でもわかるような落語をね。そうしたらもうわかるよね(笑)? やたら長い名前を言い続けるという落語。寿限無寿限無〜。そういう風に盛りだくさんだから、<フジロック>全体を楽しんでほしい。

豊間根 オレンジ・カフェは屋根付きのフードコートということですが、どのぐらい入れそうですか?

日高 数百人は入るんじゃないかな? 相当でかいと思うけどね。テントの中にテーブルと椅子を並べてね。

豊間根 わかりました。ここからは出演アーティストについて聞いていきたいんですが、まず金曜日のグリーンの一発目は毎年「ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA(以下、ルート17)」なんですが、今年はBOREDOMSですね。その辺の経緯を教えてください。

日高 まぁ「ルート17」に関しては、去年の段階でもっと後の出番にしようと思ってたんだよ。夕方ぐらいにしたいなって。でもそうするとさ、「ルート17」の代わりは? っていうのが大きな問題なんだよね。金曜日の朝一であれだけお客さんを集めるバンドは他に考えられなくて。だからうちの連中からは「えーっ!?」っていう声が出たよね。でもじゃあ「みんなで考えよう」って言っていて。そこでそのあとに、20周年っていう考え方が出てきたんだよ。で、さっき話したみたいに97年の1回目に出たバンドで、って考えていったらBOREDOMSっていう声がうちの連中から出てきた。俺も「BOREDOMSだったらぜひやってほしい」って思ったよね。97年がすごかったからね、BOREDOMSは。朝一でやったら絶対かっこいい。だから1年目と同じだよな。「それっ!あそこで暴れまくれ!」っていうことで。

97年の1発目はアメリカのバンドでサウザン・カルチャー・オン・ザ・スキッズだっただろ? 彼らは俺が勝手に選んだんだよ。みんな知らないだろうな? って思ったけど絶対喜んでくれると思って。自信を持って送り込んだバンドだった。そのぐらい最初のバンドって大事なんだよ。でもだんだんお客さんも慣れてくるから、一番最初からそんなに激しいバンドではなく、ゆっくり見られるようなバンドにポイントを置くようにしていた。でも今年は20回目でもあるからさ、もう一回最初に戻ろうと。

豊間根 「ルート17」はどういう編成でどのようにやるのかは、お客さんはよく知ってると思います。フィーチャリング・アーティストまでは発表されていますが、今年特に、というトピックスがあれば、喋れる範囲でお願いします。

日高 まぁ俺の中ではいつもそうだけど、仕掛けもあるんだよね。

豊間根 お楽しみとして残しておいたほうが良いのであれば、そこは。

日高 曲としてはね。みんなが知ってる曲を、みんなが知ってる世界的なヒット曲を誰かに歌ってもらうよ。それともうひとつは、やっぱり八代亜紀さんだよね。去年の終わりごろに八代さんがブルースをコンセプトにしたCDを出して、BB・キングや、ロバート・ジョンソンとかのカヴァーをやっていて、結構俺の好きな曲が多かった。ロバート・ジョンソンの“Sweet Home Chicago”をカヴァーしていて、彼女は熊本県出身だから“Sweet Home Kumamoto”って、熊本ヴァージョンで歌ってるんだよ。この辺の曲はぜひやってもらいたいと思ってる。もう一曲は八代さんのオリジナルを一曲。楽しみだよな。大体分かるよね、ヒット曲だよ。あとはね、今年、俺たちの世代にとっては大切なアーティストがいっぱい亡くなった。それで、出来る限りの事はしたいなと思ってる。(デヴィッド・)ボウイの曲はやりたいと思っている。あとはプリンスだね。それと、俺たちが生きた60年代のアメリカの反戦運動の英雄で、俺たちの偉大なチャンピオン、モハメド・アリに向けて何かできれば良いなと思っているよ。

豊間根 それは「ルート17」の中でやるんですか?

日高 いや、やらない。プリンスもそこではやらない。

豊間根 ボウイはルート17に中でやる?

日高 やる。まあ曲目は言わないけどね。

豊間根 さっき話があった<オールナイトフジ>が金曜日の夜10時から翌朝6時まで、一番奥地のカフェ・ド・パリで。

日高 そうだね。まぁ前に比べれば規模はちっちゃいけど、ビジュアルも入れてやるよ。お客さんに対するお願いは、「ちゃんと来て、ちゃんと無事に帰ってくれ」だよね。酔っ払って事故でも起きたら出来なくなっちゃうから。

MG_3422 フジロック生みの親、日高正博氏インタビュー『完結篇:今年は“寝ないフジロック”がテーマ』