毎回様々なゲストに登場してもらい、<フジロック・フェスティバル(以下、フジロック)>の魅力/思い出/体験談について語ってもらう「TALKING ABOUT FUJI ROCK」。今回は2日目のレッド・マーキーに出演する3人組、THE ALEXXの登場です。
2019年の<フジロック>にて、公式音源リリース前に初ライブを披露した彼ら。そんな彼らに、これまでの<フジロック>で印象に残っている景色や、彼らいわく「地獄だった」という初めて出演した<フジロック’19>の思い出まで、たっぷり語っていただきました。
Interview:THE ALEXX(tonton、筒井朋哉、杉浦英治)
tonton「初めてで、雨も土砂降りで(笑)。」
──今年の<フジロック>はコロナ禍で、特別な<フジロック>になりますね。
杉浦 変な感じですよね。去年、<フジロック>がなかったというのも特別でしたけどね。
──THE ALEXXの皆さんの<フジロック>歴はいかがでしょうか? 杉浦さんはSUGIURUMNとしてもかなり出演していますが。
杉浦 僕は結構出てますね。前夜祭のDJもずっとやっているから、ほぼ皆勤賞。1回だけイビザ(Ibiza:ヨーロッパ・スペインに位置するイビザ島。有名なクラブが多くある人気の観光地であり、クラブミュージックの聖地)でレジデントDJをやってて行かなかった年があったんですけど。それ以外は、ほとんど出てます。
──筒井さん、tontonさんは?
tonton 観客としてここ10年くらいずっと行っています!Day DreamingにはTomomi Ukumoriのソロで2回出演させていただきました。
筒井 僕は1回サポートの仕事でルーキー・ア・ゴーゴーに出たことはあるんですけど、それぐらいですね。
──杉浦さんは<フジロック>の印象深い記憶はどんなものがありますか?
杉浦 めちゃくちゃありますね。たしかレッド・マーキーに3回出てるんですけど、ジェイミー・エックス・エックス(Jamie xx)の次に俺がやって、その後が(石野)卓球さんだった年(2013年)があって。めっちゃよくないですか?
──いい並びですね。
杉浦 そのときのことはよく覚えていますね。ラヴ・アンド・ロケッツ(Love and Rockets)の「So Alive」のドラムをずっとループさせてジェイミーと代わったらジェイミーがすごく喜んでて。あとはポール・ヴァン・ダイク(Paul van Dyk)の後が俺だった時(2008年オレンジ・コートのオールナイトフジ)ですね。土砂降りで地面がぐちゃぐちゃで、ポール・ヴァン・ダイクがBPM150とか160ぐらいの絨毯爆撃みたいな曲をかけて誰も人がいなくなった後から始めたことを覚えてます。
──沢山の、特に深夜の景色が、たくさんスペシャルな瞬間として記憶に残っている。
杉浦 そうですね。グリーン・ステージで観たザ・エックス・エックス(The xx)もすごかったし、あとはクルアンビン(Khruangbin)もよかったね。
──クルアンビンは2019年のフィールド・オブ・ヘブンの出演ですね。
杉浦 あれがこの3人でみんなで観た初めての<フジロック>でのライブだった。MCもよかったんですよね。どこまで本気かわからないユーモアがあって。思い出がいっぱいありますね。
──THE ALEXXは2019年に岩盤スクエアで初ライブを行っていますが、あのライブはどうでしたか?
杉浦 あれは地獄でしたね。誰も知らないバンドが、誰も知らない曲を1時間半もやって、そこがバンドの初披露だという。
tonton 初めてで、雨も土砂降りで(笑)。
杉浦 修行でした。まあ、その立ち位置から始めたので、今はすごい楽ですね。でも、あのときも50人くらいが観てくれたんですよ。あそこに居てくれた人はほんとに偉いです。
──<フジロック>って、名前は知らなくてもいい音を鳴らしてたらその場で踊っちゃったりする感じはありますよね。あのムードは他のフェスにはなかなかない。
杉浦 そうですね。外だし、雰囲気もいいし、家に帰らなくてもいいからね。
杉浦「最初の目標が叶ったなっていう感慨があります。」
──今年THE ALEXXはレッド・マーキーへの出演となりますが、どんな思いがありますか?
杉浦 もともとTHE ALEXXを始める前から、レッド・マーキーの深夜で演奏できるバンドをやりたいって思ったんです。DJじゃなく、レッド・マーキーで演奏できるロックバンドをやりたいと思っていたから、いちばん届けたいところに届いた感じはします。だから、今回レッド・マーキーに出れることになって、最初の目標が叶ったなっていう感慨があります。
──杉浦さんとしては、DJとしての出演とバンドとしての出演は違うものですか?
杉浦 全然違いますよ。だって自分の曲をやるわけだから。
tonton 緊張感が違いそうですね。
杉浦 DJで緊張したことは一度もないですけど、バンドは緊張するなって思って。上手にやらなきゃとか、しっかり演奏しなきゃとか、自分以上によく見せてやろうと思った時に緊張するんだなって思う。
──たとえばジェイミー・エックス・エックスとザ・エックス・エックスや、トゥー・メニー・ディージェイズ(2 Many DJ’s)とソウルワックス(Soulwax)のように、DJとバンドを両方やっているタイプのアーティストもいますよね。全く別のことをやっているタイプもあるし、通じ合っているタイプもいる。そのあたりのスタンスはどうでしょう?
杉浦 最初は別のことをやっている感じだったんですけど、最近は、あんまり境界線がなくなってきたような感じがしますね。あまり線引きをしなくなってきた感じがします。曲を作っていても「これはバンドっぽい」とか「これはトラックっぽい」とか区別をしなくなってきたかもしれない。
筒井「一緒に旅をしてメンバー同士が溶け合っていった」
──アルバム『God Bless You』はTHE ALEXXとしてのアイデンティティを強く打ち出した一枚だと感じました。バンドサウンドもダンスミュージックも、どちらのスタイルもありつつ、他に類を見ないタイプの音楽になってきている。みなさんとしては、新作が出来上がってどんな感覚がありますか?
杉浦 みんながお互いのことをより信頼しているのが大きいと思いますね。最初は「この先どうなるんだろう?」ってみんな思っていただろうし、俺も正直わからなかったところがあって。でも、今は「面白いものを作ろう」という感じがどんどん出てきていて、前作よりみんなで作っている感じはありますね。
tonton 前は「杉浦さんの作った曲を歌う」っていう感じだったんですけど、実験的なものが集約されてきたというか、だんだん「こういうのをやってみたい」と思ったものを形にできるようになってきた感じがあります。
杉浦 そうだね。思いつきからはじめることが多くなってきたよね。
筒井 コロナのせいでリモートで作る時もあったし、がっつり演奏して作る時もあるし、制作の選択肢がいろいろあったというのもあるかな。
THE ALEXX – The Buzzer
──THE ALEXXがスタートした時は杉浦さんのソロプロジェクト的なイメージもあったんですが、そこから1年以上をかけて徐々にTHE ALEXXというバンドのアイデンティティが確立されてきたような気がします。
杉浦 共有する時間も多くなったし、仲間っぽくなっている感じはありますね。余計なこだわりがなくなって、より研ぎ澄まされてきた感じはします。
筒井 杉浦くんが言った通り、一緒に旅をしてメンバー同士が溶け合っていったのは僕も感じます。その途中に普通にあるケンカとか、今後も普通にあるだろういろいろなことも含めてね。僕はずっとロックバンドをやっていたので、1枚目の時は新しい作り方に慣れるのに時間がかかってたんですけれど。このアルバムはそれを超えて、もっと広い意味でバンドとして面白いもの、大きなものが作れたとは感じています。
──わかりました。では最後に、今回こういう状況の中で<フジロック>に来る方たちにメッセージをいただければと思います。
杉浦 こういう状況じゃなくても、<フジロック>に来るのは間違いなく最強のお客さんですからね。耳も肥えているし、知らないアーティストでも観てみようっていう人が多くて。それって、海外でDJをした時と近いんですよ。たとえばヨーロッパでやったときも、ほとんど知られてなくても「誰だこいつ?」みたいにはならなかった。そういうムードが<フジロック>にはあるからね。僕たちが最初にやった時も50人ぐらい観にきてくれたわけだし。なんだかわかんないけど、ちょっと観てみよう、聴いてみようっていう感じがあるから、僕らの時もちょっとでもいいから観にきてもらいたいですね。
──ちなみに<フジロック’21>は国内アーティストのみの出演となりますが、みなさんが楽しみにしているライブはありますか?
杉浦 まずは電気グルーヴですね。電気グルーヴは当然だとして、THE SPELLBOUNDは観たいです。2日目の夜のレッド・マーキーのTHE SPELLBOUNDとTHE ALEXXは新人バンド枠なので(笑)。
tonton 私はAJICOが観たいですね。
筒井 LITTLE CREATURESも出るんだね。僕はそれが楽しみです。
杉浦 あとは平沢進+会人(EJIN)も観たいし、THA BLUE HERBも、GEZANも、坂本慎太郎さんも、CORNELIUSも観たいし。でも、一番は電気グルーヴですね。
text&interview by 柴那典
photo by Maho Korogi
RELEASE INFORMATION
God Bless You
2021年8月6日配信リリース/8月27日 フィジカル販売開始
THE ALEXX
Rexy Song
1. Cold Love
2. 17
3. Wrathful
4. Art Hurt
5. Bug
6. When You Lost Trip
7. The Buzzer
8. Outsider
9. Ready To Play The Future
10. Something Great
詳細はこちら
THE ALAXX – Bug
Outsider / COLD LOVE
2021.08.13(Fri.)
REXY-8/1,650yen(tax incl.)
国内盤7インチレコード
収録曲
Side A. Outsider/Side B. COLD LOVE
Outsider MVCOLD LOVE MV